清風明月　Sword In The Moon

初めて韓国で撮影された本格的韓国武術映画大作『清風明月』がこれまでに製作された『MUSA一武士一』『アウトライブー飛天舞一』『AThousant　Lakes(英題)』といった韓国武術映画と大きく異なっているのは、韓国国内で撮影されたことだ。それまでの韓国武術映画は中国国内で撮影された。なぜ中国で撮影されたかというと、武術映画にふさわしい風光明媚な場所が多く点在するからだ。しかしキム・イソク監督は、朝鮮王朝時代を再現するには、韓国で撮影しなければ意味がないと考えていた。このため半年をかけて韓国国内をロケハンし、南漢山城や無等山などの絶景、景福宮などの歴史的建物や庭園などのロケ地を選び出した。その写真をもとにプロの絵コンテ作家5人が1年以上をかけ、1400カットの絵コンテを完成させた。

ごまかしのない本物のアクション
もうひとつの違いは、中国で撮影された韓国武術映画は、香港映画のお家芸であるワイヤーアクションをふんだんに使っていたが、『清風明月』は、よりリアルな映像にこだわり、ワイヤーアクションやCG合成によるアクションを極力避けた。このため、俳優は厳しい剣の修行を重ね、馬術の練習にも取り組んだ。アクションは中国アクション映画の重鎮が担当している。『スウォーズマン/女神伝説の章』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地黎明』などの武術監督ドニー・イエンと、韓国映画『花嫁はギャングスター』で韓国デビューを果たした香港出身のユエン・ジュンだ。彼らとともに韓国入りした中国武術スタントチームには、女性スタントの花形ヨー・ホンリュンも含まれている。彼女は『グリーンデスティニー』ではミシェル・ヨー、『HERO』ではチャン・ツィイーのスタントを務めた。武術監督の狙いは、観客が体を切る刃を実感できるようなアクションと剣によってかもし出される緊張感を創り出すことだった。『清風明月』では役者が宙を飛んだり、水面を走るようなシーンはほとんどない。その代わり本物の刀術の迫力に満ちている。主演のチェ・ミンスとチョ・ジェヒョンは真剣を使って闘いを演じた。

「お前が死ねば俺も死ぬ!」男の熱い友情とラブロマンス『清風明月』は男同士の友情に焦点が当てられている。主人公のギュヨプ(チョ・ジェヒョン)とジファン(チェ・
ミンス)は武官養成所の「清風明月」で武術を鍛え、生死を共にすることを誓うほどの親友だった。しかし
ギュヨプは武力政変の混乱の中で師とジファンに刃を向けなければならなかった。ジファンは友の裏切りに衝撃を受け、復讐を誓う。共に平和な世を夢見た二人の男が、自分の命より大事に思っていた相手に剣を振るう場面で、この悲劇はクライマックスを迎える。そして恩讐を乗り越えた二人が再び手を取り合うとき、歴史が揺れ動く！
ジファンの命を救い、復讐の闘いに身を投じる娘ション(キム・ボギョン)とジファンの秘められた恋も観客の心を熱くすることだろう。お互いの愛情を押し殺し、大義のため闘いの渦中に入っていく二人の男女。
その切ないラブストーリーもこの映画の大きな見所となる。

韓国を代表する名優チェ・ミンスとチョ・ジェヒョンが火花散らす競演チェ・ミンスは長澤雅彦監督の日韓合作映画『SEOULソウル』や『リベラ・メ』『イエスタディ』などに主演した日本でもよく知られた俳優。チョ・ジェヒョンは『魚と寝る女』『受取人不明』『悪い男』などキム・ギドク監督の作品に出演し名声を上げてきた。二人にとって武術映画は初体験であり、剣術を基本から学ばなければならなかった。しかし努力が実ってスタントなしで激しい剣捌きができるまでに上達した。その迫力は
圧倒的で、日本の時代劇ファンにも十分に堪能してもらえるだろう。

紅一点のキム・ボギョンは大ヒット作『友へ/チング』で幸運なデビューを果たした。『清風明月』では懸命な看護で傷ついたジファンの命を救い、復讐の剣を振るう。体が非常に柔らかく、ドニー・イエンは「チャン・ツィイーよりアクションの才能がある」と認めているほどだ。

歴史再現のため作られた精密な武具、衣装、豪華なセット朝鮮王朝の豪華絢燗な行列に向かい、ジファンが絶望的な戦いを挑むラストシーンは、この映画最大の見所だ。行列が通る舟橋は、25艘の船をつなげて作られ、1450人のエキストラが行列を形作った。このラストシーンの撮影には10億ウォンの費用と2年間の年月がかけられた。鎧、かぶと、刀、槍、斧、鞭、鎖、弓矢などの武具は中国の小道具製作会社が作ったが、その数は2000点近い。衣装はデザインだけで半年が費やされ、監督とプロデューサーが出席した2回の展示会で選び出された。外衣だけでなく下着にまでこだわって選定され、着物の留め方、織物の素材まで細かく検討された。