2004年/日本/35mm/カラー/112分/ 配給:ビターズエンド

2006年01月27日よりDVDリリース 2005年9月10(土)より、渋谷シネ・アミューズほか、全国順次ロードショー

公開初日 2005/09/10

配給会社名 0071

解説


誰かを想うこと。
それはキラキラと輝いているとき。

三沢と慎之介が営む盆栽屋「苔moss」に、彼氏と別れて宿無しになったはる子が転がり込んできた!慎之介は幼なじみであるはる子に想いを寄せているのだが、ハッキリと伝えられずにナンパばかりを繰り返している。はる子はその想いに気づいているのだが、知らないフリをして居心地のいい関係に甘んじている。三沢はそんな慎之介を不甲斐なく思っているのだが、それでも複雑な愛情を抱いている。恋愛に対するスタンスがまったく違う男女。勝手に浮かれたり、傷ついたり、嫉妬したり—-。誰かを想っている時間は本当に美しい!

風間志織が紡ぎだす
「恋愛が併せもつ喜びと切なさ」。

風間志織の前作『火星のカノン』では、不倫と同性愛が描かれていた。前作では主役でなかった聖こと中村麻美と真鍋こと渋川清彦、彼らの役どころを掘り下げた作品が本作『せかいのおわり』である。
日常に潜む些細な出来事や、あふれ出すほどの感情を、普遍的に綴ることに秀でている風間志織。大人になりきれない男女のちょっぴりだらしない暮らしぶりを、温かいまなざしを持って映し出している。何気なく過ごす毎日の中で、何気なく紡ぎだされる言葉の面白さ。風間志織というフィルターを通せば、どんなに素っ気ない瞬間も輝き始める。
“せかいのおわり”とは決して訪れることのないであろう時間だけれども、ふとした瞬間に舞い降りてくるある種の“絶望”や“哀しみ”の時間。好きな人と一緒にいる幸福と、想いが届かないことの寂しさとが絶妙なバランスで描かれている。恋愛、はたまた毎日が併せもつ喜怒哀楽という感情の素晴らしさ、美しさを見つけることのできる作品だ。

“せかい”を共有する個性派のキャスト&スタッフが作り上げた“せかいのおわり”。

彼氏を作るのは上手なのに、恋愛は苦手なはる子を演じるのは、『ファザーファッカー』で衝撃的なデビューを飾り、昨年『血と骨』(崔洋一監督)での好演も評価された中村麻美。ちょっぴりワガママだけど、自分の居場所を一生懸命探す等身大のオンナのコ像を体現している。はる子を想うからこそホンネを言えずにいる慎之介に扮するのは、TVドラマ「ケイゾク」でKEE役を演じ強烈な印象を残した後、『青い春』(豊田利晃監督)などでの個性的な演技に定評のある渋川清彦。大切な時間を壊したくないという思いと、気持ちを伝えたいという思いとの狭間にいるビミョーな感情を見事に演じきっている。そんなふたりを見守るオトナの男・三沢役に、「阿佐ヶ谷スパイダース」主宰、作・演出・出演と多彩ぶりを発揮し、舞台のみならず『tokyo.sora』(石川寛監督)『リアリズムの宿』(山下敦弘監督)など、そのフィールドを拡げ続けている長塚圭史。3人のバランスを取りながら慎之介とはる子をやさしく見つめる切ない役柄で、新たな一面を披露している。また、小日向文世、高木ブー、田辺誠一といった個性派たちが、風間ワールドの中で絶妙なスパイスとなって物語を彩っている。
スタッフには、前作『火星のカノン』で風間志織の“宇宙”を表現した脚本の及川章太郎、撮影の石井勲が引き続き参加し、今回も見事に“せかい”を支えている。更に、1986年にロックの殿堂入りをしたCHUCK BERRYが歌うナンバー「I’m Through With Love」も聴き逃せない。

ストーリー


 「店長さ、あの、昨日ね、あのコと喋ってたよな?」
「うん、少しね、少しね、うん……えー問題です。あのコの名前は何でしょう?」
店長と呼ばれているのは三沢雪彦(28)。このすっトボケた男・慎之介(24)とともに盆栽ショップ「苔moss」を
営んでいる。
「何?じゃあ店長は、今までね、ヤッた人の名前とか全部言えんの?」
「言えるよ全員。女も男も」
その時、タイミングよく玄関のチャイムが鳴った。慎之介が逃げるように玄関に向かうと、そこには大荷物を抱えた慎之介の幼なじみ・はる子(22)が立っていた。
「キム君ち、追い出されちゃった……」

近所の公園ではる子の失恋話を聞いてやる慎之介。
「こんな風に落ち込みまくってる時はいつも必ずギュッてしてくれて、すごく安心出来たんだよね……」
「うん?おれが代わりにしてやるよ」
「……遠慮しとく」
無碍に断られて、何だか気まずい慎之介。ごまかすようにはる子をラーメン屋に引っ張っていく。
その夜からはる子と慎之介、三沢の共同生活が始まることになる。

はる子の職業は美容師。とはいえまだまだ駆け出しのアシスタント。先輩の美紀との折合いもよくない。
ある日はる子は、お客の顔にうっかりシャワーをかけてしまう。しかも客のリアクションに思わず笑ってしまった…。
閉店後、美紀にたっぷりと絞られる。
「……でもあの人、怒ってなかったし。……大体普通、子供だってちゃんと目、閉じますよ」
「仕事で言い訳するな。ちゃんと緊張感持ってれば笑ったりしないって」
そこに店長が、
「……でもさ、確かに妙に笑えるお客さん、いるからねー」
変に相槌を打ってしまったから、美紀の怒りのボルテージはマックスへ!店長が止めるのも聞かず、はる子は店を辞めてしまう。

店を辞めて暇になったはる子は、盆栽を配達する慎之介について回っている。河原に軽トラを停めて荷台で一休みをしていると、はる子が子供の頃の想い出を喋りだした。
「世界中が大洪水になって、全部沈んじゃうの。だけどベッドがイカダみたいになって、自分がプカプカ浮いてる
の。—-でも怖くはないんだよね。海の上で好きな人に出会っちゃうから。他にはもう誰もいなくてね、ずっと二人だけで……何か気持ち良くて、いっつも同じ想像してた」
軽トラの荷台で、どんどん想像が膨らむふたり。見上げた空は抜けるような青空だ。

次にはる子が就いた職はカラオケ屋の看板持ち。ウワギの着ぐるみつきで。やる気なくしてダレているとパチンコ屋の看板を持ったヒロムちゃんが歩み寄ってきた。
「遠くばっかし見てても、近くばっかし見ても駄目よ。ちょうどいいとこ見てないと」
ついでに疲れない立ち方までレクチャーしてくれた。

それにしてもオンナの勘はスゴイ!三沢ははる子に見透かされて困惑している。
「店長、慎ちゃんのこと好きなんでしょ?」
「鋭いね。……でももう昔の話」
でも、三沢が彼女(彼氏!?)を作らない理由はそこにあるようだ。はる子は三沢がちょっぴりかわいそう。
「ちゃんと彼女作んなよ。中途半端なナンパとか、マジでやめな」
イタいところを突かれた慎之介は、眠ったはる子の顔にイタズラ書きをする。
翌朝、起きた慎之介の頭には十円ハゲとバカの文字……。
その頃、はる子はウサギになって停んでいた。運命的な出会いが訪れるなんて思いもせず。

放心状態でTVを眺めている慎之介。ブラウン管からは“せかいのおわり”みたいなニュース。あの晩から丸二日。はる子が帰ってこない。
慎之介も三沢もはる子のことを気にしていたそんな時、慎之介の携帯にはる子からの着信。ラーメン屋で待ち合わせて、慎之介は思い切って想いを伝えた。
「俺なこういうことだと思うの。お前、生まれつき卵の黄身だけ食えない奴って、俺以外に知らないだろ?俺もな生まれつき白身だけ食えない奴、お前しか知らないの。だから運命ってさ、あのお互いにこうやってさ必要とし合ってるって思わねえ?」
「う一ん……このまんまが一番良いと思うんだ」
はる子は彼氏ができたことを慎之介に伝え、慎之介は呆気なくフラレた。
その日、はる子は大荷物とともに去って行った。

「よし、ウチ行こ。俺の宇宙を見してやる。水槽っていうのはね、いわゆるひとつの銀河系なの」
慎之介がナンパ相手の恵利香と歩いていると、はる子とその彼氏・中本にハチ合わせしてしまった。中本は美容室ではる子にシャワーをかけられた男だった。
慎之介が恵利香と家で“銀河系”を見ていると、はる子が突然舞い戻ってきた。何と、別れていた中本の奥さんが戻ってきたらしい。
復讐してやる、と再び出かけるはる子。恵利香を放って慌てて追いかける慎之介。
深夜の街をしばらく歩いているうちに、その炎も小さくなっていく。道端に捨てられたソファに腰を下ろす。慎之介は缶ジュースを買いに行ったきり戻ってこない。
言いようのない不安がはる子を襲う。
「……誰もいなくなっちゃったのかと思った……世界中で、私独りだけになっちゃったかと思った……ギュッて、して」
戻ってきた慎之介の前には涙目で俯くはる子がいた。

次の日、出張帰りの三沢の目の前を、またもや大荷物のはる子が通り過ぎていった。
目を覚ました慎之介の目に『慎ちゃん、ありがとう。やっぱ無理。ごめん』という書き置きが飛び込んできた。
フラフラとリビングに行くと、熱帯魚が全滅している。放ったらかされた恵利香が、怒って水槽にアイスをぶちまけたせいだった。
頭の中が真っ白になって突然暴れだす慎之介。そこへ三沢が帰ってきた。当り散らす慎之介に、三沢はキスをした。
呆然とする慎之介をリビングに残し、三沢は平然と部屋へ戻る。
「平和主義者としてのチュー。そして博愛主義者としてのチューでもある」

はる子がいなくなって一週間が過ぎた。何となく慎之介がはる子の実家を訪ねてみるとはる子は案の定そこにいた。ちょっぴりぎこちなく挨拶を交わしてふたりで散歩に出かける。下らない世間話。その日も抜けるような青空だった。
「……もし本当に世界の終わりが来ちゃってさ、まだ二人とも独りぼっちだったらさ……その時はこうして、一緒にいようよ」

スタッフ

監督:風間志織
脚本: 及川章太郎 
テーマ曲: 「I’m Through With Love」Performed by CHUCK BERRY 
製作: 寿々福堂+マックス・エー+ビターズ・エンド+ポニーキャニオン

キャスト

中村麻美
渋川清彦
長塚圭史
安藤希
小林且弥
小日向文世
久野真季子
長宗我部陽子
つみきみほ
高木ブー
田辺誠一

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