「富江」の伊藤潤二&及川中監督が贈る ネオ・ファンタスティック・ホラー

2004/日本/カラー/DV/75分 配給:アルゴ・ピクチャーズ

2004年11月17日よりDVD発売開始 2004年11月17日よりビデオレンタル開始 2004年7月31日より、吉祥寺・バウスシアターにて夏休み・ホラーナイトショー

© 2004 うめく排水管製作委員会

公開初日 2004/07/31

配給会社名 0090

解説



『富江』シリーズをはじめ『うずまき』『死びとの恋わずらい』など、いずれも映画化されて話題を呼んだ漫画作品を次々と送り出してきた恐怖漫画界のエース伊藤潤二。その伊藤潤二の作品群の中で最もシュールで異色な漫画の一つと言われるのが『うめく排水管』です。映像化が最も難しいと思われるこの作品を敢えて手がけるのは、稀代のアーティスト・伊藤潤二の作品世界にあらためて注目し、その魅力を新鮮な切り口で映像化したかったからです。
『うめく排水管』は、小品ながら、不思議で怖くて美しい「伊藤潤二の世界」
を忠実に描き出す異色作なのです。

監督は、映画化第一作の『富江』(菅野美穂主演)を手がけてスマッシュヒットを記録した及川中(あたる)。及川監督は、『うめく排水管』を「シュールな恐怖を描きながら、どこかオフビートなコメディの匂いもする、最も伊藤潤二さんらしい漫画」と評価し、その映像化を願っていた。
「ただの怖さという視点だけでは、伊藤潤ニワールドは語れない。『うめく排水管』のように、目常的な世界が突然シュールに歪んでいく悲喜劇こそ、伊藤さんの作家性の特徴だと思う。今回は、ティム・バートンの『シザーハンズ』のようなファンタジックな恐怖諦を描きたかった」(及川監督)

『うめく排水管』は、「排水管の中に忍び込んだ男が、次々と人を排水口の奥に引きずりこんでいく」恐怖を描く一方で、郊外の一軒家に暮らす美人姉妹の姉・令奈に付きまとい、ついには排水管の中に忍び込む「滑井」という純粋すぎてストーカーにしかなれなかった醜い青年の悲劇にも着目します。その世界は、及川監督の語るように『シザー・ハンズ』そのものであり、『キングコング』『ザ・フライ』『ハルク』などのハリウッド製恐怖ファンタジーに共通する「異形の存在の怒り」を描くことで、『うめく排水管』は単なるホラーを超えた奇妙で奥深い作品になっています。

主演の美人姉妹を演じるのは『仮面ライダー555』のヒロイン「スマートレディ」役で注目された栗原瞳と、ミスマガジン2003グランプリの「いわまゆ」こと岩佐真悠子。姉妹を「排水管の中に引きずり込もうとする」滑井役には、格闘技界も注目する異才・フジヤマがあたり、『座頭市』など北野武作品の常連でもあるベテラン鈴木一功が姉妹の父親役を演じているグラビア界のトップアイドルに躍り出た岩佐真悠子。姉妹を「排水管の中に引きずり込もうとする」滑井役には、格闘技界も注目する異才・フジヤマがあたり、『座頭市』など北野武作品の常連でもあるベテラン鈴木一功が姉妹の父親役を演じている。

ストーリー



この頃、大都市では不気味なウィルスが蔓延している…。

郊外にあるその家の排水はひどく詰まっていた。排水管修理に訪れた丸徳ポンプの桑田(渋谷正次)は、この家の主婦にエキセントリックな声で怒鳴られた。
彼女は、鬼のような形相で、彼の「靴下が汚い」と怒っているのだ。
やがて、詰まった排水管の中から出てきたのは、汚水と一緒にドロドロにからんだ大量の髪だった…。

この「度を超した」潔癖症の母親(播田美保)と三人で暮らしているのが、令奈と真理の美人姉妹。父と母は数年前に離婚していた。
姉の令奈(栗原瞳)が大学から帰宅すると、家の前で突然別れて暮らす父親(鈴木一功)が現れる。父親は生活に窮している様子だが、令奈は「母親に叱られるから」と困惑する。そんな令奈を遠くから8ミリカメラで写している奇妙な青年がいた。
彼の名は「滑井」。滑井(フジヤマ)は、オタクのイメージを最悪な形で肉体化したような「太ってて、脂ぎってて、体臭がひどく臭い」青年。彼はいつも令奈を遠くから見つめ、8ミリカメラで撮影しているのだった。
令奈も、滑井の姿に気づいていたが、不思議と不快なそぶりは見せなかった。
それどころか令奈は、滑井と何か話したがっている様子なのだ…。

清楚な印象の令奈に対して、快活な今時の女子高生・真理(岩佐真悠子)は、いつも男友達を家に招いてはしゃいでいる。そのBFたち(豊永伸一郎・カン・ユフン・長野タケル)は母親のお眼鏡にかなった「エリート学生」たちだったが、じつは、かつて真理の姉・令奈をレイプしようとした「悪党」たちなのだった。その時、令奈の危機を救ったのが、なんと「滑井」だったのだ。いつもは、醜い自分の姿を人目に晒さぬように隠れるように生活している滑井は、レイプされかかっていた令奈の前で、突然「キングコングのように変身」して男たちを撃退し、令奈の危機を救ったのだった。
令奈は、一度、ちゃんとお礼が言いたかったのだ。だが、滑井は、令奈を「ストーカーのように」遠くから見つめるだけで、決してそれ以上近づいて来ようとはしなかった…。

そんな二人に、悲劇は、突然に襲ってきた。
いつものように帰宅した令奈を8ミリカメラで「隠し撮り」していた滑井は、ついに令奈に「つかまって」しまう。令奈は今日こそ「ちゃんと滑井と話がしたかったのだ」。だが、目の前に令奈を見て狼狽した滑井は必死に逃げようとして、二人はもみ合いになった。そこに、妹の真理と「例の」BFたちが通りかかったのだ。真理のBFたちは、滑井の顔を見て「令奈をレイプしそこなった時」のことを思い出していた。そして、無抵抗の滑井をさんざんに叩きのめしたのだった。悲痛にうめく滑井を為す術もなく見つめる令奈。真理は「姉につきまとうストーカーを退治した」と満足そうだった。

次の夜。滑井はケーキの箱を持って令奈の家を訪れた。そこには、母親の清子しか在宅しておらず、清子は、包帯だらけの滑井を「化け物」とののしって、生卵を投げつけて撃退した。
滑井の心はどん底だった。そして、さらに、滑井を待ち伏せる若者たち(真理のBFたち)がいた。彼らは下水道の中で滑井に容赦なく暴力を振るい、骨を砕いて二度と立ち上がれぬようにしたのだった。
滑井は、最後のカを振り絞って、排水溝の汚水の中に身を投じるのだった…。

一方、令奈の家の中でも悲劇が起こった。深夜に家の中に侵入しようとした父親を、泥棒と間違えた清子が撲殺してしまったのだ。正当防衛が認められて、母親は罪を問われずに済んだが、それ以来、狂気の様相を呈していくのだった。
清子の「潔癖症」は完全な病気の領域に入り、スーパーで買ってきた食料ですら殺菌消毒しないと気が済まなくなっていた。当然のごとく手を洗う回数は半端ではなく、その顔や手の皮膚は洗いすぎでボロボロになって、そこから鮮血が滴るのだった。
令奈は、狂った清子の様子と「あれ」以来、滑井の姿を見かけなくなったことで、胸を痛めていた。真理は、そんな令奈を訝しく思っている。「何故、あんな気味の悪い奴のことを気にかけるの?」と。

そして、また、この家の排水管が詰まり始める。だが、今度の詰まり方は半端ではなかった。まるで排水管の中に巨大な何かが詰まっているように、汚水がまったく流れなくなっていた。
「排水管詰まり」を直そうと、まず、真理のBFたちがやって来る。ところが、なんと、彼らの体は、ことごとく排水口の中に引きずり込まれていくのだった!

排水管の中で、いったい何が起こっているというのだろうか!?

スタッフ

脚本・監督:及川中
原作:伊藤潤二(朝日ソノラマ刊) 
製作:ローランズ・フィルム、フライング・ハイ、セプト・ナイン
配給:アルゴ・ピクチャーズ

キャスト

栗原瞳
岩佐真悠子
フジヤマ
播田美保 
鈴木一功

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