フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白
原題:THE FOG OF WAR
第76回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞 第29回ロサンゼルス批評家協会賞ドキュメンタリー映画賞受賞 第86回ナショナル・ボード・オブ・レヴュー ドキュメンタリー映画賞受賞 第56回カンヌ国際映画祭正式出品作品
2003年/アメリカ映画/カラー/107分/日本語字幕:森泉淳/字幕監修:松岡完、馬場広信 配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2007年07月25日よりDVDリリース 2005年02月23日よりビデオレンタル開始 2005年02月23日よりDVDリリース 2004年9月11日(土)よりヴァージンシネマズ六本木ヒルズにて都内独占ロードショー
公開初日 2004/09/11
配給会社名 0042
解説
◆元米国防長官、衝撃の告白!
ハーバード大学院卒、フォード自動車会社社長、ケネディとジョンソン政権下で国防長官、そして世界銀行総裁を務めアメリカン・ドリームを実現したスーパー・エリート、ロバート・S・マクナマラが、その栄光と影について赤裸々に語る!
『フォッグ・オブ・ウォー/マクナマラ元米国防長官の告白』は、マクナマラのインタビューを中心に「戦争の世紀」と呼ばれた20世紀を総決算する衝撃のドキュメンタリーである。
マクナマラの華麗なキャリアは、実は東京大空襲、キューバ・ミサイル危機、ベトナム戦争と、20世紀に起きた多くの戦争に支えられていた。マクナマラは自分の体験を”フォッグ・オブ・ウォー=戦争の霧”だと語る。1度戦争の危機が起こると、賢明な政治家であっても霧に包まれたように混乱してゆくというのだ。「アメリカは全能ではない」「人類は殺戮や紛争についてもっと真剣に考えなければならない。21世紀にも、同じことを繰り返したいのか?」今年88歳のマクナマラは、「11の教訓」とともに新世紀へのメッセージを発してゆく。
◆今語られる、深い”戦争の霧” ─ 現代への貴重な警鐘
日本人は、東京をはじめとする日本無差別絨毯爆撃の裏事情が語られる場面に、米国の都市との比較を視覚化した映像とあわせて、ひとかどならぬ衝撃を受けるだろう。
カメラを前に、マクナマラは自分の過ちを認めつつ、ときに質問の論点をずらし、お茶を濁す返答をする。その姿は好ましくも責任逃れにも見える。ドキュメンタリーならではのリアリティを『フォッグ・オブ・ウォー/マクナマラ元米国防長官の告白』は描き出してゆく。
そして、米同時多発テロ(9.11)、イラク戦争、今なお続くイラク派兵……アメリカはまた同じ過ちを犯していないか? 日本はどうか?
世界はもう1度、マクナマラの「教訓」に学ぶべきではないのか? 『フォッグ・オブ・ウォー/マクナマラ元米国防長官の告白』は、「戦争の世紀」を繰り返さないために、今こそ観られなければならない映画と言えよう。
◆アカデミー賞に輝く”非戦”のメッセージ
監督は、アメリカ・ドキュメンタリー界の巨匠エロール・モリス。マクナマラのインタビュー・フィルムに加え、貴重なアーカイブ映像や録音テープを使用し、臨場感あふれる世界を創出した。
今年『フォッグ・オブ・ウォー/マクナマラ元米国防長官の告白』は、前回は『ボーリング・フォー・コロンバイン』が獲得したアカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー賞に輝いた。その受賞スピーチで、モリス監督は戦争を「ウサギの穴」にたとえ、「今アメリカは40年前のベトナム戦争のときのように、ウサギの穴に落ちつつある」と語り、場内から喝采を浴びた。
全編を彩る音楽は『めぐりあう時間たち』の名作曲家、フィリップ・グラスのオリジナル・スコア。緊張感と癒しが共存する旋律は、21世紀の平和への祈りにあふれている。
『ボーリング・フォー・コロンバイン』以来、映画界にはドキュメンタリー・ブームが起きている。今年もマイケル・ムーアの最新作『華氏911』などが公開を控える(当時)中、『フォッグ・オブ・ウォー/マクナマラ元米国防長官の告白』は、”非戦”のメッセージを力強く込めた、特筆すべき必見の問題作なのである。
ストーリー
ロバート・S・マクナマラ。20世紀アメリカ屈指のエリートとして、政界、経済界を牛耳った「切れ者」だ。
「私は生涯を通じ、戦争の一部だった」
「私も85歳だ。人生を振り返り、いくつかの結論を出してもいいころだろう」
「人は何度でも同じ過ちを犯す。3度ミスをすれば4度目には避けられるかもしれないが、核の時代にはその論理は通用しない」
マクナマラは自分の体験を、11の教訓=レッスンとともに語り始める……。
教訓1:敵の身になって考えよ
教訓2:理性は助けにならない
教訓3:自己を超えた何かのために
教訓4:効率を最大限に高めよ
教訓5:戦争にも目的と手段の”釣り合い”が必要だ
教訓6:データを集めろ
教訓7:目に見えた事実が正しいとは限らない
教訓8:理由づけを再検証せよ
教訓9:人は善をなさんとして悪をなす
教訓10:”決して”とは決して言うな
教訓11:人間の本質は変えられない
1962年10月、マクナマラ国防長官はキューバ・ミサイル危機に直面する。閣内の雰囲気は「ソ連との全面核戦争は不可避」に傾いていた。そのとき、ソ連問題顧問の一言で、ケネディ大統領はソ連の提案受け入れを決断。核戦争は回避された。
30年後、マクナマラはキューバ首相から「当時ソ連に核攻撃を進言した」と知らされる。
「核戦争を回避できたのは、ただ運が良かっただけのことだ。同じ危機が今もあるのだ」
「人類は殺戮や紛争についてもっと真剣に考えなければならない。21世紀にも、同じことを繰り返したいのか?」
マクナマラが2歳のとき、第一次世界大戦が終わった。世界大恐慌の真っただ中、大学に進学。経営管理の研究で頭角を現し、当時最年少でハーバード大学経営学大学院助教授になる。結婚、第一子誕生……その未来は順風満帆に見えた。
そこに、第二次世界大戦が始まった。マクナマラは経営管理の理論を戦争に応用。攻撃効率を高めるため、統計を取り、分析する。だが、彼の報告書を元に、日本に無差別絨毯爆撃が行われた。指揮官は後に広島・長崎に原爆を落としたカーティス・E・ルメイ少将。
「勝ったから許されるのか? 私もルメイも戦争犯罪を行ったんだ」
戦後マクナマラはフォード自動車会社に入社。会社の業績を上げ、社長にまで昇りつめた。
そのころ、最年少の米国大統領が誕生した。ジョン・F・ケネディ。入閣を求められ、マクナマラは国防長官に就任する。それは素晴らしくも、悪夢の日々の始まりだった。
ケネディ大統領はベトナム戦争への対応に苦慮する。攻撃拡大を主張する軍部を抑え、大統領とマクナマラは、ベトナムから米軍を完全撤兵する決断を下す。しかし1963年11月ケネディ大統領暗殺……葬儀を回想する老マクナマラの目が、涙で潤んだ。
昇格したジョンソン新大統領は、逆に戦争拡大を決意する。大統領選を有利に戦うため、大統領はマクナマラに、拡大の事実を国民に隠す命を与える。トンキン湾事件を機に、北爆、地上軍派遣と、アメリカはベトナム戦争の泥沼に脚を踏み入れてゆく。
31年後、マクナマラはベトナムを訪れ、トンキン湾事件の真実を知り、唖然とする。
「ベトナム戦争は避けられたのではないのか?」
「キューバ・ミサイル危機のとき、アメリカ政府はソ連の立場に立って状況を見ることができたのに、ベトナム戦争ではそれができなかった」
1967年11月、マクナマラは国防長官を辞任した。
「ベトナム戦争の責任は大統領にある」
「自分の職務は大統領が決定した政策の実行を助けることだ」
「だんだんと、ケネディが生きていたら結果は違っていたのではないか、と考えるようになってきた」
「私は自分の成したことに誇りを持っているが、犯した過ちを悔いている」
「戦争がなくなると信じられるほど、私は単純な人間ではない」
ラスト、インタビュアーは尋ねる。「辞任後、なぜベトナム戦争反対を唱えなかったのですか?」
マクナマラの答えは……。
スタッフ
監督:エロール・モリス
製作:エロール・モリス、マイケル・ウィリアムズ、ジュリー・アールバーグ
共同製作:ロバート・フェルナンデス
エグゼクティブ・プロデューサー:
ジョン・ケイメン、ジャック・レッチナー、フランク・シャーマ、ロバート・メイ
撮影:ピーター・ドナヒュー、ロバート・チャペル
編集:カレン・シュミーア、ダグ・エイブル、カイルド・キング
プロダクション・デザイン:テッド・バファルコス、スティーヴ・ハーディ
音楽:フィリップ・グラス
キャスト
ロバート・S・マクナマラ
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