原題:Dark Water

『仄暗い水の底から』がハリウッドリメイク!

2005年7月8日全米公開

2005年/アメリカ/カラー/ 配給:東宝東和

2006年05月26日よりDVDリリース 2005年2005年11月12日(土)日比谷スカラ座他全国にてロードショー

公開初日 2005/11/12

配給会社名 0002

解説


雨に煙ったニューヨークのはずれのルーズベルト島。あたかも独自の生命をもつかのように佇む古びたアパートに足を踏み入れた途端、6歳の娘セシリアは異変を感じ取る。そしてエレベーターの中で、母親のダリアも・・・。しかし、この湿気のたちこめる9階の部屋に、母と娘は何かに導かれるように移り住むことになる。その日から、背筋も凍る戦慄のドラマが幕を開けるとは知らずに−。ヒロインのダリアは、離婚調停中で、娘の親権獲得に必死になっているシングルマザー。しかも彼女には、幼い頃に母親との関係に傷ついた経験があり、その脅迫観念に苛まれている。天井の染みから滴り落ちる黒い水。誰もいないはずの10階の部屋から聞こえてく物音。コインランドリー室での異変。その不気味な現象の数々が、娘とのふたりきりの新生活のプレッシャーに押しつぶされそうなダリアの悪夢を浸食してゆく。

世界が注目するウォルター・サレスの記念すべきハリウッド進出第一作。
 監督は、ゴールデン・グローブ賞など数々の受賞を果たした『セントラル・ステーション』や、チェ・ゲバラの若き日を描いた『モーターサークル・ダイアリーズ』の成功によって、今や世界から熱い注目を浴びるブラジル人監督ウォルター・サレス。「いつかホラーというジャンルに挑戦してみたいと思っていた」という鬼才は、初めてのハリウッド・メジャー作品となる本作で、生命を育むはずの水が黒い渦となって、母と娘に襲い掛かる底知れない恐怖を映像化し、観客を震撼させる。さらに、情感を操ることにかけて名手と言われるサレス監督は、迫り来る恐怖と母娘3代に渡る因縁のドラマを拮抗させ、見る者の心を激しく揺さぶる。インド系アメリカ人のM.ナイト・シャマランによる『シックス・センス』、チリ生まれのスペイン人アレハンドロ・アメナーバルが手掛けた『アザーズ』に連なる、ハリウッド・ホラーに新たな感性を吹き込む傑作がここに誕生した。

恐怖の果てに辿り着く、涙とカタルシス
 さらに、『ダーク・ウォーター』をジャンル映画で終わらせないために、サレス監督は、シングルマザーであるダリアだけでなく、キャラクターの全てに普遍的な都会の孤独や疎外感、やるせなさを背負わせることに心を砕いた。そして、リアルな背景づくりを施した上で、日常に潜む恐怖を構築していったのだ。しかも“姿の見えない力”がもたらす外的な恐怖だけでなく、彼が重きを置いたのは、ダリアの内面からわき出す恐怖を捕らえること。過去に受けた心の傷は癒されないトラウマとなり、ダリアを責め苛み続ける。愛する娘の側にいながら、どこか満たされないと感じてしまう罪悪感。ありったけの愛情を、娘に注いでいるのに、充分とは思えない焦燥感。この心の葛藤が痛いほど映し出されるからこそ、観客はダリアに共感し、固唾を呑んで彼女を見守ることになる。トラウマに足をすくわれ、現実を悪夢との境目に翻弄されながら、襲いかかる恐怖と自らの心の闇と戦いながら、懸命に娘を守ろうとするダリア。その心のエモーショナルな変還に立ち合った観客には、未曾有の恐怖体験の後に涙とカタルシスが訪れる。このサレス監督の手腕によってもたらされた深い余韻によって、『ダーク・ウォーター』はホラー映画のジャンルを易々と超えて、深い人間ドラマの域を獲得する。

母の無償の愛を生きるオスカー女優ジェニファー・コネリーと、脇を固める豪華なオスカーノミニー陣
 自らの心の傷と対峙しながら、娘を守るために愛をかけて闘うヒロインを演じたのは、アカデミー女優のジェニファー・コネリー。『ビューティフル・マインド』や『砂と霧の家で』みせた、しっとりとした魅力に加え、自らも2児の母である彼女は、母の優しさ、強さを体現し、恐怖の物語に涙のドラマを注ぎ込む。愛娘セシリアを演じるのは、新星アリエル・ゲイド。母親の混乱に小さな胸を痛めながら、目に見えぬ力の存在を敏感に察知するセシリア役を好演したゲイドは、ポスト、ダコタ・ファニングの呼び声が高い。ダリアの夫カイルには、『M:I−2』で注目を集めたダグレイ・スコット。その他、監督と脚本の評判に惹かれて集まった、豪華な名優たちが脇を固めているのも本作の魅力だ。『シカゴ』でアカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされたジョン・C・ライリーが不動産業者を、『父の祈りを』、『ブラス!』のピート・ポスルスウェイトが管理人役をそれぞれに演じて芸達者ぶりを披露。そして、『海の上のピアニスト』のティム・ロスが飄々とした演技で、人のいい弁護士役を好演しているのも見逃せない。ダリアのトラウマの原因となった、記憶の中の母親役を演じて、出番が少ないものの忘れがたい印象を残すのは、『クロコダイルの涙』のエリナ・レーヴェンソン。

サレス監督の人気を象徴する、凄腕スタッフが結集
 また、サレス監督の下に集まったスタッフも敏腕揃い。撮影には、『オール・アバウト・マイ・マザー』など、アルモドバル作品の常連として知られるアフォンソ・ベアト。編集は『シティ・オブ・ゴット』でアカデミー賞にノミネートされ、『モーターサイクル・ダイアリーズ』でもサレス監督と組んでいるダニエル・レゼンデ、美術は『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』、『アメリカン・スプレンダ−』など個性的なヒット作を手掛けてきたテレーズ・デプレス。音楽は、デビィッド・リンチなどの作品で知られるカリスマ作曲家アンジェロ・バダラメンティが参加。そして、制作を担ったのは、フォックス・フィルム・エンタテイメント時代に。『タイタニック』、『スター・ウォーズ/エピソード1』、『スピード』など、数々のヒット作を手掛けてきたビル・メカニック。
 そして原作は『リング』シリーズをハリウッドでも映画化させる起爆剤となった、日本が誇る鈴木光司。さらにヒロイン、ダリアのキャラクターを掘り起こし、新たなドラマを書き起こしたのは、ロマン・ポランスキー監督作『死と処女〈おとめ〉』などの脚本を手掛け、自らも作家であるラファエル・イグレシアス。

ストーリー

 1974年のシアトル、雨の放課後。学校の入り口で、お迎えの母親を待ち続ける5歳のダリア。母との苦い思い出がトラウマとなっている彼女の脳裏には、でんでん太鼓のようなオモチャの音色とともに、この辛い過去の記憶が今でも頻繁に蘇ってくる。
 2005年のニューヨーク。離婚調停中のダリルと夫カイルは、彼らの娘セシリアの親権を争っている。そのため、ダリアは一刻も早く、娘の養育に適したアパートや仕事をみつけなければならないというプレッシャーを抱えていた。
 またしても空は雨模様。ダリアとセシリアの親子は、トラムに乗ってルーズベルト島に向かう。マンハッタンのアパートは家賃が高すぎて、シングルマザーのダリアには手が届かない代物だったからだ。不動産業者のマレーに連れられて内見したのは、屋上に給水等が聳える、古びたアパートだった。建物に入った途端、セシリアは「気味が悪い」とダリアに訴える。エレベーターに乗り込むと、何故か床に水がたまっている。今度はダリアが“何か”を感じ取る。金縛りにあったように、動けなくなったダリアに過去の記憶が蘇った次の瞬間、ドアがガチャンと音を立てて開いた。彼女は気を取り直して、マレーの後に続いた。
 調子はいいが、誠実とはいえそうもないマレーが案内したのは、9階にある一室だった。暗くて湿っぽい部屋の窓から見えるものは、古びた集合住宅の陰鬱な風景だけ。ほどなく、ダリアはセシリアがこつ然と消えていることに気づき、半乱狂になって探し始める。しばらくして、セシリアが見つかったのは、管理人のヴェックが施錠していたと主張する屋上だった。ダリアの心配をよそに、セシリアは屋上でハローキティのバックを見つけたといって喜んでいる。バックの中には真新しいバービー人形などが入っていた。ダリアから「きっと誰かが取りにくるから、返しなさい」と言われ、しぶしぶ管理人に預けるセシリア。「一週間、誰も取りに来なかったら、バックは君のものだ」とマレーに言われたセシリアは、一転して、このアパートに決めようとダリアにせがむ。
 結局、前金を払って、引越しを決めた母娘。荷解きも片付いて、ほっとしたその時、ダリアは天井に黒い染みがあることに気づく。もっともセシリアは、この部屋に入った瞬間にすでに気づいていたのだが。さらに、空き部屋だという上の部屋からは、何やら物音も聞こえてくる。日が経つにつれ、天井の染みからは、黒い水が滴り落ちるようになる。水道の水には髪の毛が混ざることもあった。管理人のヴィックやマレーにたびたび修理を依頼するが、いっこうに埒があかない。
 親権を奪われるのではないかという不安とプレッシャーが高じて、ダリアは偏頭痛に悩まされるようになる。日に日に鎮痛剤の服用が増えてゆく。また悪夢に襲われるようになった彼女の周りでは、不気味なことが次々と起こり始める。地下のコインランドリーでは、まるで黒い水がダリアを襲うかのような事件が起きる。そして小学校の教師からは、「セシリアが想像上の友達と喋っている」と聞かされる。数日後、セシリアが病院に運ばれたと言う連絡が入り、ダリアは慌てふためいて学校に駆けつける。しかし、彼女はこの時、迫り来る恐怖の正体にまだ気づいてはいなかった。

スタッフ

監督:ウォルター・サレス
脚本:ラファエル・イグレシアス
音楽:アンジェロ・バダラメンティ
撮影:アフォンソ・べアト
編集:ダニエル・レゼンデ
プロダクション・デザイン:テレーズ・デプレス
原作:鈴木光司 (「仄暗い水の底から」 角川ホラー文庫刊)

キャスト

ジェニファー・コネリー
ジョン・C・ライリー
ティム・ロス
ピート・ポスルスウェイト

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