原題:J.M. Barrie's Neverland

ピーター、そこは夢がかなう場所なんだ。 信じれば、必ずいける。

2004年10月22日全米初公開

2004年/イギリス・アメリカ/カラー/ 配給:東芝エンタテインメント

2005年07月22日よりDVDリリース 2005年07月22日よりビデオリリース 2005年1月15日より日比谷みゆき座にてロードショー公開

公開初日 2005/01/15

配給会社名 0008

解説



「ピーター・パン」の物語は悲しみを乗り越えるために生まれた
たくさんの透き通った涙を夢と希望に変えて。

 自分の影法師を探しに、ダーリング家の子供部屋に舞い降りてきたピーター・パン。ネバーランド決してどこにも存在しない国−−−−に住むこの永遠の少年と、彼が活躍する胸躍る冒険の物語は、誕生から100年の時を経たいまも、世界中の人々に愛され続けている。だが、あなたは知っているだろうか?ピーター・パンには、モデルとなった少年がいたことを。そして、その物語が編み出されていった背景に、もうひとつの愛のドラマが存在したことを−−−−。
 1904年12月27日にロンドンで初めて「ピーター・パン』が舞台で上演されてから100年目にあたる今年、その事実をもとに宝石のように美しい映画が作られた。子供のように夢見る心を持ち続ける劇作家バリと、彼によって夢を信じる心を取り戻していく“ピーター”という名の少年との出会い。透き通るように純粋なふたつの魂のふれあいを描いた、美しい愛と感動のドラマがここに生まれた。

 舞台は、1903年のロンドン。緑のまぶしいケンジントン公園へ日課の散歩に出かけたバリは、若く美しい未亡人シルヴィアと彼女の息子であるディヴィズ家の4人兄弟と出会う。なかでもバリが関心を寄せたのは、父の死と同時に夢や希望を持つことをあきらめた三男ピーターの存在だった。たったひとりで心の傷と格闘するピーターに、空想の世界で遊ぶことの楽しさと、物を書くことの喜びを教えるバリ。彼と母シルヴィアの深い愛情に包まれながら、ピーターは、少しずつ子供らしい純粋さを取り戻していくのだが……。
 早く大人になることで、父の死の悲しみを乗り越えようとするピーターと、そんな彼に幼い日の自分自身を重ねあわせながら、二度とない子供時代の素晴らしさを伝えようとするバリ。ふたつの繊細な魂の触れ合いから、「ピーター・パン」の芝居が誕生していく過程をたどる物語は、メイキングものの面白さもはらみながら展開。そして、病に冒されたシルヴィアをめぐり、ピーターが不安や恐怖と葛藤を繰り広げるエピソードは、思い切り切なさを誘う。そんなピーターに、愛する人を心の中のネバーランドに旅立たせることを教えるバリ。夢を信じることの大切さをテーマにした「ピーター・パン」の物語が、喪失の悲しみの中から生まれたという事実が、見る者の胸に深い感慨を呼び起こす。

 子供のように無垢な心を持ち、ビーターたち兄弟に惜しみない愛情を注ぐバリの役柄に、はまりきった演技を見せるのは、ジョニー・デップ。『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』でファン層を一気に広げ、アカデミー賞候補になった彼は、今回、独自のイノセントな持ち味を役柄に反映させるいっぽう、スコットランド風のアクセントを習得し、気品と優しさに満ちたバリの肖像を創造。はやくもオスカー候補最有力の声が高まっている。そのデップと共に、ドラマの感動の担い手になるピーターには、『トゥー・ブラザーズ』で注目を集めたフレディ・ハイモアが扮し、繊細でけなげな存在感を光らせる。本作のあと、ティム・バートン監督によるロアルド・ダールの子ども向け小説「チョコレート工場の秘密」の映画化で再びデップと共演するなど、売れっ子の道をまっしぐらに歩んでいる彼は、ポスト・ハーレイ・ジョエル・オスメントの筆頭に位置する天才子役。ドラマの終盤、愛する人を失ったピーターが、内に秘めていた悲しみをバリの腕の中で爆発させる場面の演技には、誰もが涙をそそられずにはいられないだろう。
 その他のキャストにも豪華な顔ぶれがそろった。4人兄弟の強く優しい母であり、バリと恋愛感情を超越したプラトニックな愛の絆で結ばれるシルヴィアには、『いつか晴れた日に』『タイタニック』『アイリス』の3作でアカデミー賞にノミネートされたケイト・ウィンスレット。その母デュ・モーリエ夫人には、『ダーリング』のオスカー女優ジュリー・クリスティ。バリの新作の行方を案じる伝説の演劇プロデューサー、チャールズ・フローマンには、『クレイマー、クレイマー』『レインマン』で2度のアカデミー主演男優賞に輝くダスティン・ホフマン。さらに、バリと心が通わないことで悩む夫人のメアリーには、『フォーン・ブース』『マイ・ボディガード』のラダ・ミッチェルが扮し、大人同士の葛藤のドラマを見応えあるものにしている。

監督は、ハル・ベリーがアカデミー賞に輝いた『チョコレート』で、一躍ヒューマンドラマの巨匠の仲間入りを果たしたマーク・フォースター。バリや子供たちの心に広がる空想世界の映像を随所にちりばめながら、人間同士の絆が育まれていく過程を慈しむようなまなざしで味わい深く描きあげていく演出に、今回もとびきりの腕の冴えを発揮。2004年度のヴェネチア映画祭では、見事ラテルナ・マジカ賞に輝いた。そのフォースターと、前3作で組んでいるロベルト・シェイファーが撮影を担当。20世紀初頭の緑美しい英国の風景を再現する、格調高い映像を作り上げている。
 話題を呼ぶ本作は、「ピーター・パン」の誕生100周年を記念するにふさわしい作品となった。

ストーリー



1903年のロンドン。華やかに着飾った人々で埋め尽くされたデューク・オブ・ヨーク劇場の片隅で、劇作家のジェームズ・バリ(ジョニー・デッブ)は、居心地の悪い気分を味わっていた。今日は、彼の新作『リトル・メアリー』の初日。だが、客席の反応は芳しくなく、友人のアーサー・コナン・ドイル卿(イアン・ハート)や・興行主のチャールズ・フローマン(ダスティン・ホフマン)からも、あてこすりを言われる始末だ。
案の定、翌朝の新聞に載った劇評は最悪。失意のジェームズは、愛犬のボーソスを連れ、近くの公園へ日課の散歩に出かけた。そこで彼は、デイヴィズ家の4人の兄弟とその母親と運命の出会いを果たす。4人兄弟のうち、長男のジョージ(ニック・ラウド)、次男のジャック(ジョー・プロスペロ)、末っ子のマイケル(ルーク・スピル)は、母のシルヴィア(ケイト・ウィンスレット)に連れられてやって来たその公園で、無邪気に騎士ごっこに興じていた。が、人一倍繊細な三男のピーター(フレディ・ハイモア)は、空想の世界へ飛び込むことを拒絶し、ひとりだけ兄弟の遊びの輪から外れていた。それを見たジェームズは、愛犬をサーカスの熊に見立ててダンスを踊り、少年たちの拍手喝采を浴びる。別れ際、一家との再会を約束したジェームズは、心弾む気分で自宅へ戻った。
 さっそく夕食の席で、妻のメアリー(ラダ・ミッチェル)に公園での出来事を話すジェームズ。それを聞いたメアリーは、夫をガンで亡くしたシルヴィアが、社交界の名士である母のデュ・モーリエ夫人(ジュリー・クリスティ)の援助で暮らしている事を教える。野心家のメアリーは、この出会いがデュ・モーリエ夫人に近づくチャンスになると考えジェームズに一家を夕食に招待するようにすすめた。
 数日後、夕食会は実現したが、それはメアリーの望んでいたものにはならなかった。ジェームズと子供たちの冒険ごっこの話題に、デュ・モーリエ夫人は「大の大人が子供と本気で遊ぶなんて」と顔をしかめるばかり。彼女にコケにされたと感じたメアリーも、不機嫌の虫がおさまらなかった。しかし,メアリーの不満の理由は、本当は別のところにあった。ジェームズがシルヴィア親子と親しくなって以来、彼女は強い疎外感にさいなまれていたのだが、純粋に子供たちとの交友を楽しんでいたジェームズには、そんな妻の気持が理解できなかった。
 夫婦仲が険悪になっていくのをよそに、1日の大半を少年たちと過ごすようになったジェームズは、いつしかピーターに、幼い日の自分を垣間見るようになっていた。父を亡くしたことから、はやく大人にならなければいけないと、自分をせきたてるように生きているピーター。その姿は、兄を亡くして悲嘆に暮れる母を慰めるため、少年の自分をネバーランドという永遠のファンタジーの世界へ追いやってしまった、ジェームズ自身の過去の姿と重なり合った。そして、そんな彼の思いは、公演が打ち切られた『リトル・メアリー』の穴埋め用に書き始めた新作劇の中に結実していく。少年たちが劇場へ遊びにやって来た日、書くことに興味を覚え始めたピーターに革表紙のノートをプレゼントしたジェームズは、「今度の劇の登場人物に、君の名前をつけてもいい?」と承諾を求める。感激で頬を紅く染めたピーターは、恥ずかしげにうなずいた。
 こうして、『ピーター・パン』の上演準備が始まった。プロデューサーのチャールズや俳優たちは、大人にならない少年、妖精、乳母の犬といった奇想天外な登場人物の設定に、とまどいを隠せない。いっぽう、コナン・ドイル卿から、ディヴィズ家との交際について世間によからぬ噂が広まっていると聞かされたジェームズは、一家を醜聞から守るため、夏のあいだ、彼らをブラックレイクにある自分の別荘で過ごさせることにする。ジェームズにとっては、ロンドンと別荘を往復する忙しい日々が始まったが、のどかな自然の中で子供たちと遊び、それを劇に反映させていく生活は、これまでの人生で味わったことのない充実感を彼に与えた。だが、その至福の日々は、思いがけない出来事によって終わりを告げる時がやってくる−−−−。

スタッフ

監督:マーク・フォースター
製作:リチャード・グラッドスタイン
   ネリー・ベルフラワー
脚本:デイヴィッド・マギー
原作戯曲:アラン・ニー
撮影監督:ロベルト・シェイファー
プロダクション・デザイン:ジェマ・ジャクソン
衣装:アレクサンドラ・バーン
音楽:ヤン・A・P・カチュマレク

キャスト

ジョニー・デップ
ケイト・ウィンスレット
ダスティン・ホフマン
フレディ・ハイモア
ニック・ラウド
ジョー・プロスペロ
ルーク・スピル
ジュリー・クリスティ
ラダ・ミッチェル

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