原題:Des plumes dans ka tete

私の心の小さな青空

2003年カンヌ国際映画祭「監督週間」正式出品 2003年東京国際映画祭コンペティション部門正式参加 2003年エジンバラ国際映画祭・トロント国際映画祭・プサン国際映画祭

2003年/ベルギー=フランス/110分/カラー/ドルビーSRD/ビスタ(1.85)/ 配給:オフィスサンマルサン

2006年05月27日よりDVDリリース 2004年5月15日よりユーロスペースにてロードショー

公開初日 2004/05/15

配給会社名 0243

解説


最愛の息子を失い心を閉ざした若い母親が、やがてその死を受け入れ、自分を取り戻していく。

 子を失った若い母親が、その死を受け入れるまでの「喪の作業」を、1年という歳月の中で丹念に心を込めて綴る。自分を取り戻すまでの彼女の心の移ろいと、その時の流れが、様々なイメージに満ちた美しい映像で描き出されていく。同時に、この世に移り変わらないものは何一つないという、監督の東洋的な哲学が表明される。そして終幕に春が来て、あらゆる生命が萌え立つ中での静かなハッピーエンドがさわやかな感動を呼ぶ。新人監督とは思えない緩急自在の滑らかなテンポと、台詞にたよらない映像の豊かな表現力、そして自然なユーモア。底知れぬ才能を感じさせる新星の登場である。

オーガニックな小宇宙。移り変わる万物のシンフォニー

 水中に置かれたカメラに向かい、突如カワセミが水面を破って現れ、魚を捕食しようと大きくくちばしを開く衝撃的なファーストカットに始まり、幼い息子の死を自然の摂理の中に置くように、随所に挿入される水鳥や小動物の生と死のドラマの断片に、監督の慈愛に満ちた心情がみなぎる。この映画に登場する思春期の少年フランソワと同様に、バード・ウォッチャーでもあるドゥティエールは、バード・ウォッチングの特性を「観察者に徹し、決して自然に手を加えない存在でいること」と語る。その自然観と哲学が、人間中心主義とは一線を画す、人間もまた自然の一部であるという視点から描かれた感動作を生みだした。自然界と人間の営みがひとつになり、オーガニックなシンフォニーを奏でるのだ。

 トマ・ドゥティエールは1966年に、ベルギーの南半分を占めフランス語が母語となるワロン地方に生まれた。90年に短篇「私はあなたの隣人です」を発表し、各地の映画祭で受賞。以来、短篇映画の分野でフィクションやドキュメンタリーを監督し、本作で念願の長篇劇映画デビューを果たした。この映画に登場する沼地は、彼が実際にバード・ウォッチングを楽しむ場所であり、ドラマはこの「ホーム・グラウンド」から紡ぎだされたのだ。

 主演のソフィー・ミュズールは、ベルギーの舞台女優で、映画はこれが初出演となる。監督のドゥティエールとは実生活でのパートナーであり、これまでも舞台やドキュメンタリーの製作に参加してきた。ドゥティエールが次回作として準備する「大洪水」は、ふたりの共同脚本による(ただしソフィーは出演しないとのこと)。
夫のジャンピエールを演じたフランシス・ルノーは、『ピガール』(94)、『堕ちてゆく女』(95)などに主演したフランスの演技派俳優である。

ストーリー

渡り鳥がやって来て 少年は姿を消した
ベルギーの新人監督が描く「心の再生」のドラマ。

 ベルギーの小さな町に住むブランシュは、夫ジャンピエールと5才になる息子アルチュールとの愛情に満ちた平穏な日々を送っていた。そこにアルチュールの死という悲劇が訪れる。ブランシュは、葬儀が終わっても息子の死を受け入れることができない。彼女は次第に心を病んでいき、いつしか、彼女にしか見えないアルチュールの幻影と時を過ごすようになる。

スタッフ

監督・脚本:トマ・ドゥティエール
撮影:ヴィルジニー・サンマルタン
音楽:シルヴァン・ショヴォー
編集:マリーエレーヌ・ドゾ
配給:オフィスサンマルサン

キャスト

ソフィー・ミュズール
フランシス・ルノー
ユリッス・ドゥスワーフ
アレクシス・デンドンケル

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