原題:La Vie promise

わたしを探して。

2002年9月4日フランス初公開

2002年/フランス/カラー/スコープ/ドルビーSRD・DTSステレオ/93分/ 配給:ギャガ・コミュニケーションズ、アニープラネト

2004年11月26日よりビデオレンタル開始 2004年7月3日より、新宿武蔵野館にてロードショー

公開初日 2004/07/03

配給会社名 0025/0406

解説


この映画は深く心に傷を負った女性がある事件をきっかけに自分を取り戻していく人生リセットの物語である。主人公のシルヴィアは、半ば人生を放棄して流されるままに娼婦として生きている。シルヴィアには14歳の娘ロランスがいるのだが、彼女は親の責任すら放棄して施設に預けっぱなしにしている。ロランスは母親の愛情に飢えているから、なんとかして母親の近くにいたいと願っている。それが悲劇を生んでしまった。ロランスは母親に暴力を振るう男を刃物で刺してしまったのだ。シルヴィアはロランスを連れて逃げるしかなかった。こうして母娘の果てしない逃避行が始まった。
映画は一転してロードムービーになっていく。シルヴィアは、かつて自分が少女時代を過ごした土地を目指す。そこは、かつて彼女が結婚生活を送り、ロランスの弟も産んだ土地だった。シルヴィアとロランスは道中互いに理解できなくて葛藤を繰り返し、離れ離れになったこともあった。しかし刑務所を仮釈放されたピヨトルという中年男が母娘を再び結び付けてくれる。

 シルヴィアを演じているのは、フランスを代表する演技派女優イザベル・ユペール。『8人の女たち』では男性に縁がないオールドミスの変身を鮮やかに演じきった。『ピアニスト』ではマゾヒストのピアニストを生々しく表現して衝撃を与えた。『主婦マリーがしたこと』での圧倒的な演技も忘れることができない。その名女優ユペールがシルヴィアの生き方に共感して全力を傾けたのが『いつか、きっと』なのだ。
 ユペールがこれほど女っぽさを強調した映画も珍しい。娼婦としてはトウがたった年齢のシルヴィアは、化粧と服装で精いっぱい若作りをして男をたぶらかそうとする。その哀れさを演技できる女優はユペールぐらいしか見当たらない。だがシルヴィアは旅をするうちに本来の自分を取り戻し、忘れていた過去を直視する勇気を得ることができた。その変遷を表現できたのもユペールの演技力によるところが大きい。

 イザベル・ユペールはシルヴィアを“孤独なカウガール”と表現している。シルヴィアはロックシンガーのジャニス・ジョップリンのTシャツを着ているが、麻薬で身を滅ぼしたジョップリンに代表されるようなロックの歌詞によく使われる「反抗、逃避、旅」といったキーワードをシルヴィアはそのまま実践しているように見える。
シルヴィアは家庭の平和にどっぷりとつかり、安住していられない女性だ。夫と子供を置いて家を出てしまった過去が次第に明らかになるが、不安神経症にさいなまれ薬を手放せないシルヴィアを他人事のように思えない女性もいるに違いない。そんな彼女が自分を取り戻していく姿は、人間不信を一歩一歩克服していくリハビリを見ているようで感動的だ。

 オリヴィエ・ダアン監督は『クリムゾン・リバー2』の公開で、注目されている監督の一人だが、『いつか、きっと』では南仏の風景を詩的に描いた映像と音楽のコラボレーションで才能の片鱗を見せている。この映画の魅力のひとつは、シルヴィアらが旅していく田園風景の美しさ、とりわけ咲き乱れる野の花、青空、通り過ぎる微風といった自然の描写。この映画は決して楽天的な内容ではない。むしろ生き方の難しさ、人生の厳しい一面を描いているが、どこかに開放感と明るさが感じられるのは、この自然描写に負うところが多い。

ストーリー


 ニースで娼婦をしているシルヴィアは、生きる希望を失い、自堕落なその日暮しの生活を送っていた。シルヴィアには14歳の娘ロランスがいる。シルヴィアはロランスを愛しているが、自分のだらしない生き方を見られるのを耐えがたく思い、なるべく遠ざけていた。
 だがロランスは母親の愛に飢えていた。ある夜、ロランスはシルヴィアのアパートの部屋に忍び込んだ。そこへシルヴィアが男2人と帰ってくる。ロランスが物陰に隠れているのをだれも気づかない。そのうちシルヴィアと男たちは口論になる。男たちは娼婦の元締め組織の人間らしく、シルヴィアに乱暴を働き始めた。ロランスはとっさに止めようと飛び出すが、はずみで男の1人を刃物で刺してしまう。もう1人の男は逃げてしまった。
 シルヴィアに残された選択はたったひとつ、ロランスを連れて大急ぎで逃げることだった。刑務所にぶち込まれるか、もっとひどい目に合わされるのは目にみえていたからだ。とりあえず行き先を決める必要があったが、行くあてはなかった。シルヴィアは、かつての夫ピヨトルを思い出した。彼はシルヴィアと別れた後、シルヴィアとの間にできた息子と田舎で暮らしているはずだ。ロランスはその事実を知らされていない。
 だが、シルヴィアはピヨトルの住所を知らず、記憶はあいまいだった。いらつきを隠せないシルヴィアは、ついロランスにつらく当たってしまう。母親の気持ちを理解できないままロランスは飛び出してしまう。離れ離れになった母と娘。シルヴィアは放浪の途中、車で旅をしている謎の中年男ジョシュアに出会う。彼は暗い過去を持つ男らしく、シルヴィアに心を開かない。シルヴィアがジョシュアの車を降りた後、ジョシュアは若者に付きまとわれていたロランスを救う。ジョシュアを通じて母と娘の絆がつながり、再会を果たすことができた。
 シルヴィアは次第に記憶を取り戻し、ピヨトルと住んでいた場所にあった川にたどり着く。川は彼女の少女時代の記憶をよみがえらせた。やがてピヨトルの居場所を突き止めたシルヴィアは息子のもとへ静かに歩み寄った。

スタッフ

監督:オリヴィエ・ダアン
製作:エリック・ネーヴェ
脚本:アニエス・フュスティエ=ダアン
撮影:アレックス・ラマルク
美術:マルコ・バルドシャン
衣装:ジジ・ルパージュ
配給:ギャガ・コミュニケーションズ、アニープラネット

キャスト

イザベル・ユペール
パスカル・グレゴリー
モード・フォルジェ
アンドレ・マルコン
ファビエンヌ・バーブ

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