原題:Hejar/Büyük adam küçük ask

小さな愛のかたち

アカデミー賞外国語映画賞トルコ代表 カイロ国際映画祭最優秀脚本賞 カイロ国際映画祭銀賞 ケルン国際映画祭最優秀脚本賞 エルサレム映画祭名誉賞 アンタルヤ映画祭  最優秀作品賞・最優秀脚本賞・最優秀助演女優賞・最優秀助演男優賞・主演女優特別審査員賞 アンカラ国際映画祭最優秀男優賞・最優秀助演賞・最優秀新人女優賞 イスタンブール国際映画祭観客賞

2001年10月19日トルコ初公開

2001年/トルコ/カラー/ビスタ/ドルビーSR/120分/ 配給:アニープラネット

2005年04月20日よりDVDリリース 2005年04月08日よりビデオリリース 2005年04月08日よりDVDリリース 2004年6月12日より東京都写真美術館ホールにてロードショー

公開初日 2004/06/12

配給会社名 0406

解説


一線を退き、孤独な生活を送る元判事ルファトが住むアパートが武装した警官に襲撃され、隣人一家が皆殺しにされた。たった一人生き残ったクルド人少女ヘジャルは行き場もなくルファトの部屋の前にたたずむ。両親も殺されたいたいけな少女を襲う過酷な運命。ルファトもどうしていいものかわからない。クルド語しか話さないヘジャルとルファトの間に立って橋渡しをしてくれたのは、家政婦のサキネ。彼女は身分を隠し、トルコ人として暮らしてきた。サキネとヘジャルにクルド語で話すのを禁じるルファト。ここにトルコにおけるクルド人の微妙な問題点が浮き彫りにされる。やがて心を少しずつ開くようになるヘジャルとルファト。まるで祖父と孫のような温かい交流が生まれるのだが…。ラストでヘジャルを見送るルファトの寂寥感には熱くこみ上げてくるものがある。

 脚本、プロデューサーも兼ねたハンダン・イペクチ監督は、女性監督。クルド人問題を封じ込めていたトルコで、この映画によって風穴を開けた。アジアフォーカス・福岡映画祭2003、第16回東京国際女性映画祭でこの映画が上映され、それに伴って来日し、多数のインタビューをこなした。1960年代には数百本の映画を製作していたトルコ映画界も現在は年に10−15本程度の映画を製作しているだけ。長編劇映画の監督は「軍隊にいる父」(94年)に続き本作が2本目という新人監督だが、本作でアンカラ国際映画祭で最優秀主演男優賞、最優秀助演女優賞、イスタンブール国際映画祭で観客賞を受賞するなど高い評価を受けた。

「少女ヘジャル」はトルコ文化庁の許可を得て撮影されたが、トルコ国内で公開5ヵ月後に上映禁止となった。警官がクルド人に対して残虐すぎるという理由だったという。その後監督が裁判に持ち込み、6ヶ月かかって勝訴。映画は再び上映を許可された。その後、監督個人が告訴されたが、昨年9月福岡に来る直前に却下されたという。

 クルド人の居住地はイラン、イラク、トルコ、シリア、アルメニア、アゼルバイジャンの6カ国にまたがり、分断されている。しかし国境を越えて隣国と自由に往来している姿は、カンヌ国際映画祭カメラドール賞のバフマン・ゴバディ監督の『酔っぱらった馬の時間』や岩波ホールで上映された『わが故郷の歌』でもよくわかる。トルコには1900万人近くのクルド人がいるといわれている。トルコ東部の山間ではクルド人民族主義者のゲリラと政府軍の間で10年以上にわたり戦闘が繰り広げられてきた。この映画の時代背景は1998年で、クルド人問題が最も激しい時期だった立った。トルコではクルド人の存在そのものが拒否され、クルド語も話せなかった時期があった。しかし現在ではクルドの民俗音楽のCDが発売されたり、一部の学校でクルド語教育が行われるようになった。また近年、クルド語の芝居も上演された。

ストーリー


 ヘジャルは5歳のクルド人少女。村が襲撃され、両親は殺されて孤児になったヘジャル(ディラン・エルチェティン)は同じ村出身のエブドゥ(I・ハック・シェン)に連れられてイスタンブールの親戚に預けられる。突然武装警官隊がやってきて銃撃戦の末に親戚一家は皆殺しにされる。そこはクルド人分離独立派の拠点だった。ヘジャルは戸棚に隠れて難を逃れ、アパートの隣家に入り込んだ。そこには75歳の元判事ルファト(シュクラン・ギュンギョル)が妻に死に別れ一人暮らしをしていた。

 ルファトはヘジャルを警察に渡そうとするが、様子があまりにも不憫なので、とりあえず家に置くことにする。ルファトはヘジャルがクルド人でクルド語しか話さないので戸惑いを隠せない。さらに家政婦として長年付き合ってきたサキネ(フュスン・デミレル)もクルド人だったことがわかって驚きを隠せない。ヘジャルはサキネに母親に会いたいとクルド語で訴えた。ルファトは2人に自分の前ではクルド語で話すなというが、ヘジャルも頑固でクルド語しか使わない。2人は反発しあい、けんかを繰り返す。

 ルファトの隣に住む未亡人のミュゼェイェン(ユルドゥス・ケンテル)は、ルファトに好意を寄せていて「お互いの自由を保ちながらいい関係を」と手紙をよこす。しかしルファトにはいい迷惑だ。

 そんなある日、ルファトはヘジャルのポケットに入っていたメモを頼りにエブドゥを訪ねていく。そこには故郷を追われたクルド人たちが狭く汚い場所に固まって暮らしていた。ヘジャルを返すことをためらったルファトはそのまま帰ってくる。それ以来、ルファトはヘジャルに心を開き、着るものも買い与えた。サキネにクルド語を習い、コミュニケーションをとった。ヘジャルも次第になつき始め、トルコ語を覚え始めた。ルファトはヘジャルと暮らそうと決意したが、そこへラジオでヘジャルを預けた親戚が亡くなったことを知ったエブドゥが会いに来る。

スタッフ

製作・監督・脚本:ハンダン・イペクチ
撮影:エルダル・カーラマン
美術:M・ジャ・ウルケンジレル/ナタリー・イェレス
音楽:セルダル・ヤルチン/マズルム・チメン
配給:アニープラネット

キャスト

ディラン・エルチェティン
シュクラン・ギュンギョル
フェスン・デミレル
I・ハック・シェン
ユルドゥス・ケンテル

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