2004年/日本/16mm/カラー/40分/ 配給:リトルモア、スローラーナー

2004年6月5日よりユーロスペースにてレイトショー

公開初日 2004/06/05

配給会社名 0093/0048

解説


見つめる、つづく、生きてゆく

監督のホンマタカシは、現代の東京を代表する写真家として、広告、雑誌等で活躍し、1998年にはカラー写真集「東京郊外 TOKYO SUBURBIA」(光琳社刊)で木村伊兵衛賞を受賞した。その名の通り、東京の郊外の町並みや住宅、少年少女を撮影したそれらの写真は、どれもみな同じようにクリアーでフラットだ。叙情とか感傷が皆無なそれらの<風景>は、いまおそらく最も“リアル”な<風景>として、若い世代を中心に強い支持を集めている。

そのホンマタカシが今回監督としてカメラを向けたのが、伝説的な写真家、中平卓馬だった。

中平卓馬は60、70年代、各方面で新しい波が起こり始めていた頃、先鋭的な言葉と写真によって、既存の写真表現を否定した。頭が良くて、鋭い言葉を最大の武器に、時代を挑発し、同時にリードし続けた、すごい写真家だった。
1977年9月11日。
パーティーで酔いつぶれた中平卓馬は、昏睡状態になった。
その後意識を回復したそのとき、過去の記憶をいっさい失っていた。

それから。
ふたたび写真を撮り始めた中平卓馬は、1983年に写真集「新たなる凝視」を刊行する。そして昨年、横浜美術館にて、初の本格的な個展「原点復帰−横浜」をおこなった。

過去を失ったことにより揺らいでゆく「いま」。
中平卓馬の「現在」。
一見穏やかに見えながらも、一日一日をかろうじて繋いでゆくようなその生活を、ホンマタカシは静かに静かに、見つめてゆく。

中平卓馬。何かと闘いつづけている、その全存在で。

映画は冒頭、中平卓馬が自身の日記を音読するシーンからはじまる。画面にはその日記が全面に映しだされる。ほとんど聞き取ることが不可能なほど細く低くしわがれたその声は、不確かな今日をひとつひとつ確かめる呪文のように、続く。そしてその文字は、切れ切れの生をかろうじて繋いでゆくように、きりきりと尖っている。

けれどそこに映っているのは、一見、おそろしいほど穏やかに毎日を繰り返す、中平卓馬の「日常」であった。起きる。食事をする。日記を書く。写真を撮る。——今日が終わり、明日が始まり、また今日になる。そのエンドレスな日々を、ホンマタカシは飽くことなく、むしろ、日々驚き愛おしむように、そのカメラを向けてゆく。

沖縄で、水を得た魚のように話し動く中平卓馬。
森山大道が語る、あの頃の中平卓馬。
自分の写真を丁寧に丁寧に説明してゆく中平卓馬。
自転車を漕ぐ中平卓馬‥‥。

ゆらゆらと動き、切れ切れの声で話し、柔らかに笑いかける。
細くて小さいけれど、何かと闘いつづけている、その全存在で。

これはドキュメンタリーではない。
あるひとりの写真家を見つめた<ポートレイトムービー>である。

ストーリー

伝説の写真家、中平卓馬

70年代初頭、先鋭的な言葉と写真で、既存の写真表現を否定し、撮影行為そのものを問い続け、時代を挑発し続けた伝説の写真家、中平卓馬。
中平卓馬は、雑誌「現代の眼」編集者時代に写真家へと転向し、その後1968年に森山大道、高梨豊、多木浩二、岡田隆彦らとともに、写真同人誌『プロヴォ−ク』(挑発する、の意)を立ち上げた。その中でアレ、ブレ、ボケを特徴とした、新しい写真表現を提唱し、同時代の表現者たちの中でも異質の輝きを放っていた。しかしその活動は、写真評論『まずたしからしさの世界をすてろ』の刊行を最後に4刊目で解散となる。その後、自らの表現をもすでに制度であるとし、いっさいを否定した中平は、それまでの作品のネガとプリントのほとんどを海辺で焼却する。

「われわれが生きるたったひとつの生は、<世界>と<私>との間にぴんとはりめぐらされた一本の線をけっしてゆるめることなく、そのテンションそのものを生きること」

世界は決定的にあるがままの世界であること、そしてその<世界>と<私>との関係を疑い、乗り越え、新たなる自己を確立し、そこではじめて生まれる言葉が、世界を語ることのできる唯一の方法だとした中平卓馬。
写真評論『なぜ植物図鑑か』、篠山紀信との共薯『決闘写真論』を経た、1977年9月11日未明、多量のアルコールにより昏睡状態に陥る。

しばらくして意識を回復した中平は、その記憶のほとんどを喪失していた。

その後、療養を兼ねた家族との沖縄旅行を機に、ふたたび写真を撮りはじめた中平は、83年、写真集『新たなる凝視』を刊行する。そして昨年横浜美術館にて初の本格的な写真展「原点復帰−横浜」が開催された。その視線はまさに、もう一度<世界>との関係を探りはじめた、ひとりの写真家の闘いそのものであった。

スタッフ

監督・撮影:ホンマタカシ
製作:孫家邦、佐々木直也、塩坂芳樹、澤田陽子
プロデューサー:西村隆
スタッフ:潮田一、菊井貴繁、菊池信之、福井康人、黒田益朗、
     西武雄、鈴木隆光、中原晶哉、竹内裕二、橋本剛志、野川かさね
協力:森山大道、宮内勝、中川道夫、高良勉、宮原康正、
   中原みど里、『怒りをうたえ』上映委員会
製作:リトルモア
製作協力:オシリス

キャスト

LINK

□公式サイト
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す