2004年/日本/ 配給:松竹

2008年01月30日よりDVDリリース 2005年04月28日よりDVDリリース 2005年04月28日よりビデオリリース 2004年10月30日より丸の内ピカデリー2系ほか全国ロードショー公開

公開初日 2004/10/30

配給会社名 0003

解説


 2002年、日本中がある1本の映画に熱く沸いた。日本アカデミー賞14部門を始め、キネマ旬報ベスト・テン8部門、毎日映画コンクール6部門、ブルーリボン賞2部門、報知映画賞3部門、日刊スポーツ映画大賞4部門など、その年の映画賞を総なめし、日本映画史の中で永遠に語り継がれる傑作と絶賛された『たそがれ清兵衛』だ。原作は、時代小説界の第一人者で、数々のベストセラーを世に送り出してきた作家、藤沢周平。市井に生きる人々の葛藤と哀歓、そして郷愁をさそう美しい自然描写。一分の隙もないほど完成された独特の世界観から映像化が難しいとされてきた彼の小説に、『男はつらいよ』『学校』シリーズで知られる日本映画界の名匠・山田洋次監督が挑んだこの作品は、山田監督にとって初めての本格的時代劇だった。幕末に生きた名もない下級武士とその家族の絆を通し、人への思いやり、本当の勇気や誇りなど現代の日本人に失われてしまった“心”を描き、日本中を胸に沁み入る深い感動で包んだ。
 あれから2年、再び山田洋次監督が藤沢周平の原作を得て、“かつてない新たなる時代劇”への挑戦を続ける。今回取り上げるのは、剣豪小説でありながら既存のものとは全く違う世界を作り上げた「隠し剣」シリーズの中の「隠し剣鬼ノ爪」と、密やかな男女の愛を描いた「雪明かり」。二つの短編に流れる、藤沢周平の精神を守り、大胆に脚本化した新作『隠し剣 鬼の爪』は、時代が激しく移り変わろうとしていた幕末の庄内“海坂藩”を舞台に、“鬼の爪”という秘剣を伝授され、予期せぬ激烈な運命に巻き込まれていく下級武士・片桐宗蔵の武士としての生き様と、奉公にきた娘きえとの身分を越えたせつなく優しい愛を描く。
 主人公の片桐宗蔵には、エキセントリックな役柄から時代劇まで、全く違う顔で演じ分け、海外の監督からも注目されている個性派俳優、永瀬正敏。きえにはTVドラマ、CM、映画と幅広く活躍し、舞台「おはつ」の座長公演も話題の松たか子。共演に、吉岡秀隆、小澤征悦、田畑智子、高島礼子、田中邦衛、倍賞千恵子、田中泯、小林稔侍、緒形拳。実力派キャストが揃う。
 スタッフには、脚本・朝間義隆、撮影・長沼六男、美術・出川三男、照明・中岡源権、衣裳・黒澤和子、音楽・冨田勲ら、『たそがれ清兵衛』で映画賞を独占した豪華メンバーが再び集結する。

ストーリー


 時は幕末。江戸から遥か遠い東北の小藩である海坂藩にも、新しい時代が近づく足音が、かすかに聞こえ始めていた。
 片桐宗蔵(永瀬正敏)は、きえ(松たか子)との思いがけない再会に胸を痛めていた。今は身の回りの世話をしてくれる老婆粂と二人暮らしの宗蔵だが、3年前は母・吟と妹・志乃(田畑智子)、そして行儀見習いの女中奉公に来ていた百姓の娘きえに囲まれ、わずか三十石という平侍の貧しい暮らしながらも、笑いの絶えない楽しい毎日を送っていた。やがて母は、いつまでたっても嫁をもらわない宗蔵を心配したまま、病で亡くなってしまった。志乃は宗蔵の親友で同じ藩士の島田左門(吉岡秀隆)に嫁ぎ、子供にも恵まれて幸せに暮らしている。宗蔵は、伊勢屋という大きな油問屋への縁談がまとまったきえもまた、幸せだと信じていた。町で買い物をしていたきえの、しんしんと降る雪の中に消え入りそうな、痩せて寂しげな後ろ姿を見送るまでは。
 それから数ヵ月後、宗蔵は江戸からやって来た教官の指導の下、他の藩士たちと共に慣れない大砲の扱いを学んでいた。そんな時、左門と志乃からきえが病で伏せっていると聞いた宗蔵は、いても立ってもいられずに伊勢屋へ駆けつける。渋々案内するおかみに従って薄暗い物置部屋を開けると、きえはやつれ果てて横たわっていた。宗蔵は若主人に離縁状を用意しろと言い置いて、きえを連れて帰るのだった。
 きえは日に日に快復し、きえの妹も見舞いに訪れ、宗蔵の家はまた昔のように華やいだ笑いが溢れるようになっていた。ところが、そんなある日、藩を揺るがす大事件が起きる。海坂藩江戸屋敷で謀反が発覚したのだ。幕府表に知られるのを恐れた藩は、関係者をこっそりと処分、首謀者の一人である狭間弥市郎(小澤征悦)に関しては、山奥の座敷牢に閉じ込める“郷入り”という極刑に処すため、奥羽山脈の麓の村に護送する。
 宗蔵と狭間とは、かつて藩の剣術指南役だった戸田寛斎(田中泯)の門下生で親しい友人だった。腕は狭間のほうが上だったが、戸田はなぜか秘剣“鬼の爪”を宗蔵に伝授した。宗蔵は家老の堀将監(緒形拳)に呼び出され、狭間と通じていたのではと疑われ、門下生で狭間と親しかった者の名前を問い詰められる。しかし、宗蔵は密告は侍にあるまじき行いだと固く口を閉ざすのだった。
 宗蔵ときえのことが心無い噂になっていた。きえを実家に帰すことを決意した宗蔵は、子供の頃から見るのが夢だったという海にきえを連れて行く。きえは、この楽しい一時が宗蔵の精いっぱいの想いなのだと気づき、胸を詰まらせる。
 やがて弥市郎が牢を破って脱走、人質を盾にして百姓家に立てこもる。宗蔵は大目付の尾形(小林稔侍)から弥市郎を斬るように命じられる。宗蔵は、間近に見え隠れする新しい世の中と、侍の世界の間で、己の運命を懸命に見定めようとしていた……。

スタッフ

監督:山田洋次
プロデューサー:深沢宏、山本一郎
原作:藤沢周平「隠し剣鬼ノ爪」「雪明かり」
脚本:山田洋次、浅間義隆

キャスト

永瀬正敏
松たか子
吉岡秀隆
小澤征悦
田畑智子
高島礼子
田中邦衛
倍賞千恵子
田中泯
小林稔侍
緒形拳

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