原題:Joy of Madness

13歳の少女の素直なまなざしが映した 驚きのアフガニスタン・ドキュメンタリー!

文部科学省選定(青年向、成人向) 第4回東京フィルメックス審査員特別賞受賞 第60回ベネチア映画祭公式出品作品

2003年/カラー/73分/35mm/1:1.66 配給:東京テアトル

2004年6月19日から7月16日まで銀座テアトルシネマにてモーニングショー

公開初日 2004/06/19

公開終了日 2004/07/16

配給会社名 0049

解説


 世界の映画の最年少記録を更新したハナ・マフマノソバフが描く「映画」を知らないアフガニスタンの人々と「映画」に奔走する女性監督のみずみずしいスケッチ。
 イランを代表する監督モフセン・マフマノソバフを父にもつ有名な映画一家の末娘ハナ・マフマルバフ。1988年9月3日テヘラン生まれ、現在15歳。今、国際的に知られる最年少の映画監督である。

 2002年秋、アフガニスタンのカブーノレで、ハナが13歳の時に監督・撮影した『ハナのアフガンノート』は、当初は姉サミラの監督作品『午後の五時』(04年日本公開予定/第56回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞作品)のメイキングとして企画された。ところが、カメラを回すうちに、ハナは戦後の混乱の中に暮らす人間の営みに心を奪われていき、最終的には、アフガニスタンで「映画」をつくることに奔走する隣国イランの若い女性(サミラ)と、「映画」を知らない人々が繰り広げる、楽しく愉快で、同時に深い洞察を示唆するみずみずしいドキュメンタリー作品となった。わけても、ハナのカメラが映し取ったカブールの人々の“恐れ”と“希望”は、おびただしいニュース映像でも、伺い知ることのできないリアリティをもって観る者に迫ってくる。
本作が記録するのは、サミラの映画『午後の五時1のキャスティングの過程である。1996年に首都カブールを制圧し、アフガニスタンの実効政府となったタリバンは、映画をつくることも観ることも禁止した。そして、タリバンの出現以前も、アフガニスタンの映画産業は活発といえず、さらに1979年のソ連軍のアフガニスタン侵攻後は20年以上にもわたって戦争がつづき、映画に触れる機会が持てる人は多くなかったのである。そのため、カブールに暮らす市井の人々に出演を交渉するという作業は、早々から暗礁にのりあげるのだ。
その結果、『ハナのアフガンノート1は、映画に対する社会の恐れを映し、また人間同士の間に生じる恐れも映し出す。
“映画”を知らない人々は映画を恐れる。敵か味方か、身内かそうでないかで生きて来た“他者”という存在を知らない人々は他者を恐れる。そして“外の世界”を知らない人々は外の世界を恐れているのである。ハナの素直な好奇心が捉えたこ“恐れ”こそ、長い間の戦争とタリバン政権が、アフガニスタンの人々に与えた影響を最も明快に映しだしているといえるだろう。さらにハナは、歴史の中で育まれたアフガニスタン女性の考え方や因習にも、飾らない視線で「なぜ?」と問いかけていく。
“恐れ”と同時に、一方でこの映画が映すものは、カブールの人たちのユーモアや逞しさだ。外ではブルカを着ていても家の中ではきはきと自分の意見を述べる女性、映画に出ると一度は言っておきながら前言を翻す老人など、監督サミラの溢れんばかりの情熱をまるで狂言回しのようにしてしまうアフガニスタンの人々。貧困の中に暮らしていても自転車のカゴに花を飾る男が象徴する、人生への希望。映画の原題の“Lezate divanegi(狂気の楽しみの意)”、それは映画監督サミラの熱狂をあらわすとともに、渾沌の中に生きるアフガニスタンの人々をもあらわしているのだろう。
本作は、デジタルビデオ撮影の作品だが、その後イランで35㎜フィルム版が作られ、2003年ベネチア国際映画祭の批評家週間に公式出品された。これによって、サミラ・マフマルバフが17歳で撮った『うんご』の国際映画祭(カンヌ)出品最年少記録が、ハナ・マフマルバフの14歳での出品に塗り替えられたのである。

ストーリー


22歳のイランの映画監督、サミラ・マフマルバフは、『午後の五時』の出演者を探すため、一家でカブールにやってきた。曲者ぞろいのアフガン人たちに振り回されるが、映画にとりつかれた一家は果敢に立ち向かう。

スタッフ

監督・撮影:ハナ・マフマルバフ
編集・音響:マスタネ・モハジュル
音楽:モハマド・レザ・ダルヴィシ
製作:マフマルバフ・フィルムハウス
配給:東京テアトル
宣伝:ムヴィオラ

キャスト

アゲレ・レザイ
アゲレ・ファラマンド
シマ・アセフ
ハジ・ラムディン
ラジ・モヘビ
アジゾラ・ウァキル
カーウェ・モインファ
サミラ・マフマルバフ
マルズィエ・メシュキニ
モフセン・マフマルバフ

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