それは1日で終わる仕事のはずだった。

2004年/日本/ビスタサイズ/154分/カラー/R-15 配給:KSS

2005年03月25日よりビデオリリース 2005年1月22日、シブヤ・シネマ・ソサエティにてレイトショー 2005年03月25日よりDVDリリース

公開初日 2005/01/22

配給会社名 0027

解説


何者かに妻を殺され、生きる望みを失ったひとりの刑事。迷宮入り閻違いなしの、若い女を狙った連続猟奇殺人事件。自殺か他殺かも不明な下半身不随の男の死体。表と裏の顔を使い分ける美しきバーの女。どれが真実なのか。何が現実なのか。誰が犯人なのか。虚構と現実が入り乱れる中、数々の謎が結びついたときに刑事が苫小牧で視たものとは一体何だったのか…?『海賊版=BOOTLEG FILM』(99)『殺し』(00)『歩く、人』(01)で、日本人監督として初の3年連続カンヌ国際映画祭出品という快挙を成し遂げた小林政広。自分で資金を集めて完成させた処女作『CLOSING TIME』以来一貫して社会の枠からはみ出た男たちに深い愛情を注ぎながら、濃密な人間関係を描き出していくその硬質な映像世界は、各国の映画ファンを常に熱狂させてきた。そんな彼の、長編映画6作目となる新たな傑作が誕生した。不可思議な運命に巻き込まれた一人の刑事を描くゆがんだサスペンス、それがこの『フリック』である。
撮影は2003年の12月、日を追うごとに厳しくなる寒さに耐えつつ、北海道の苫小牧市で地元の温かい協力を得て行われた。全編を苫小牧で撮影するという例は過去になく、「主人公の殺伐とした心を表現するのにぴったりだった」
と監督が語るように、町の持つ独特の寂蓼感と異様さが、三池崇監督の『荒ぶる魂たち』で独り立ちした伊藤潔のカメラによって見事にフィルムに焼き付けられている。
キャストには苫小牧の風景に勝るとも劣らない存在感を見せる魅力的な顔が揃った。主演に『クイール』『ホテルビーナス』の香川照之。愛する女性を奪われ、自らの存在意義さえ見失った刑事・村田を圧倒的な迫力で演じきる。
苦悩に顔を歪めながら、絡み合った真実の糸を解いていくその姿は日本映画界を代表する名優であることを改めて思い起こさせる。シリーズもの以外では初の単独主演となる本作によってその地位はさらに確固たるものとなった。
村田の同僚刑事・滑川に『ハッシュ!』『約三十の嘘』の田辺誠一。あくまで軽く、与えられた役割だけをこなそうとする男を瓢々と演じ、新境地を開拓。また謎めいたバーの女に『笑う蛙』『歩く、人』の大塚寧々。清楚な美貌の陰に、計り知れない闇を抱え込んだ本作の鍵となる役柄を見事に体現。今回はスチール・カメラマンも担当し、多彩な才能を発揮する。さらにテーマ曲も歌うフォーク界のカリスマ、高田渡や『息子』の田中隆三、廣木隆一監督作『ラマン』の安藤希といった個性的な役者が脇を固め、この独創的な世界の創造に一役買う。
バラバラになった真実を、パズルのように組み合わせていく過程で浮かび上がる新たな真実。入り組んだ人間関係に潜む底はかとない恐怖。アンゲロプロスとデヴィッド・リンチが北の大地で出会ったような、ユニークな映像感覚。『フリック』は、いまだかつて誰も経験したことのない衝撃を観る者に与えることだろう。

ストーリー


 最愛の妻を殺害され、自暴自棄になった刑事、村田(香川照之)。半年もの間自宅に引きこもり酒におぼれる彼の元に、同僚の滑川(田辺誠一)が訪れる。突然の招かれざる客を煙たがる村田に対し、滑川は軽い調子である任務を告げる。それは渋谷のラブホテルで殺された女子大生、楠田美知子(安藤希)の身元確認のため、彼女の遺族を滑川と一緒に苫小牧から東京へ連れてくること。犯人はまだ捕まっていないが、最近多発する連続殺人犯と同一人物の仕業らしい。気乗りしない村田であったが、滑川に説得されるまま苫小牧へ飛ぶ。
目的地に到着したふたりは早速、被害者の兄のもとへ向かう。足の不自由なこの男は妹の変わり果てた写真を目にして錯乱するが、どうも腋に落ちない村田は、美知子の事件直前の行動を兄に尋ね始める。いきなりの越権行為を責める滑川を尻目に、彼女のアルバイトの連絡先を聞き出す村田。
その晩、地元の市警である佐伯(田中隆三)と及川(松田賢二)によってささやかな歓迎会が催された。佐伯は滑川の警察学校時代の先輩であり、和気藷々と宴は進むが、村田はどことなく居心地の悪さを感じる。
翌朝、湖のほとりで美知子の兄の死体が発見された。状況証拠だけで自殺と決め込む佐伯らに苛立ちを覚えた村田は単独で捜査を開始、手始めに美知子が働いていたという開店前のバーへと向かう。しかし美知子は店員ではなく、客として頻繁にその店に通っていたのだとカウンターに立つ謎めいた女性、伸子(大塚寧々)から告げられる村田。さらに美知子の友人でアルバイトとしてバーで働く愛(安藤希・二役)からは、美知子は援助交際をしており、客との待ち合わせのため店を利用していたと知らされる。もし美知子の携帯が見つかったら、町全体がひっくり返るのではないかと語る愛。事件の糸口を見出すどころか、逆に出口のない迷路へと迷い込んだような懼れを抱いた村田は、嫌がる滑川を引きつれその夜再びバーヘと足を運ぶ。愛の姿が見えないことを不思議に思った村田がそのことを伸子に尋ねると、彼女は静かに答えた。「いませんよ、そんな人」……。
徐々に混乱していく村田。夢のように曖昧な意識の中で、妻が殺害されたときの記憶がよみがえる。猜疑心に苛まれ、妄想と現実の区別がつかなくなった村田の疑念の矛先は滑川にまで及ぶ。妻には男がいた。別れ話も切り出されていた。犯人は自分が射殺したはずだ。しかしそれらは実際の出来事だったのだろうか…。

スタッフ

原案・脚本・監督:小林政広

プロデューサー:川上泰弘/小林政広
ラインプロデューサー:波多野ゆかり
アシスタントプロデューサー:安孫子政人
音楽:佐久間順平
撮影:伊藤潔
照明:木村匡博
録音:吉田憲義
音響効果:柴崎憲治
編集:金子尚樹
助監督:瀬戸慎吾
制作主任:川瀬準也
スチール:大塚寧々/小林政広
テーマ曲:「ブラザー軒」高田渡

製作・配給:ケイエスエス

キャスト

村田一夫:香川照之

滑川郁夫:田辺誠一
石井伸子:大塚寧々

只野:高田渡(特別出演)
佐伯:田中隆三
楠田美知子/愛(二役):安藤希
及川:松田賢二

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