原題:Utopia

2003年/スペイン・フランス/101分/35mm/カラー/シネマスコープ/ドルビーSRD 配給:シネマ・パリジャン、アーティストフィルム

2005年05月13日よりビデオリリース 2005年05月27日よりDVDリリース 2004年10月30日よりシネセゾン渋谷にてロードショー公開

公開初日 2004/10/30

配給会社名 0043/0023

解説


《未来を予見する男》
夢で予知された未来は、変えることができるのだろうか?
予知という天賦の才能を授かりながらも、その能力がもたらす悪夢に苛まれる男の過酷な運命を描いた傑作サイコ・サスペンスが、ついに日本登場する。未来と現在のヴィジョンを渾然一体とさせた独特の映像感覚は『シックス・センス』の衝撃を凌駕し、また、そのドラマティックな物語展開は『シャイニング』の恐怖にも匹敵するなど、本国スペインで騒然たる話題を巻き起こした本作『ユートピア』は、私たちの感受性を強烈に刺激せずにはおかない新感覚の映像体験を味わわせてくれるはずだ。
出演は、未来を予知する能力を持ちながらも、人々が死んでゆくのを止められない悪夢に苦悩する青年アドリアンに、『カルメン』のホセ役で日本でも多くの女性を魅了したアルゼンチン出身の若手俳優レオナルド・スバラグリア。憂愁の眼差しを漂わせながら、逆らえない運命に懸命に立ち向かうひたむきさは、女性ファンならずとも観る者の心をとらえて離さないはずだ。
孤児となったアドリアンの父親代わりとなって、彼と同じ能力を持つ人々のグループ《ユートピア》にアドリアンを迎え入れるサムエルに、『カラスの飼育』『オフィシャル・ストーリー』の名優ヘクトル・アルテリオ、《ユートピア》の仲間で、神出鬼没のホルヘに、『アナとオットー』のオットー役でナイワ・ニムリと共演し、ペドロ・アルモドバルの新作『バッド・エデュケーション』(原題)ではガエル・ガルシア・ベルナルとともに主演の座を射止めたフェレ・マルティネスという、スペイン語映画圏を代表する実力派が顔を揃えている。

《夢に現われる女》
アドリアンの夢に、たびたび現われるひとりの女性……。
死にゆく子供を抱きしめているその女性は、南米の貧しい子供たちのために教壇に立っていたときに、現地の武装ゲリラに襲われて拉致されたスペインのブルジョワのひとり娘、アンヘラだった。現在も、そのカルト的ゲリラ集団と行動をともにすることを余儀なくされているアンヘラに、『オープン・ユア・アイズ』『アナとオットー』のナイワ・ニムリ。過激なアクションにも体当たりで挑んだ彼女は、ミュージシャンとしても活躍しており、本作の音楽を担当するとともに主題歌を歌うなど、マルチな才能を発揮している。

《謎のカルト集団》
アンヘラが、麻薬密売によって活動資金稼ぎを目論むゲリラたちと、スペインに帰国していたことを知ったアドリアンは、サムエルから「お前の予知能力を、悪夢に変えてはならない」との忠告を受け、アンヘラを救出することを決意する。このカルト的ゲリラ集団《ジャガー》のリーダーに、『パリ原色図鑑』『ル・ブレ』などコメディ映画で人気を博するジョゼ・ガルシアが、いつになく凄みたっぷりの熱演を見せているのも注目だ。

《過去に捕われる男》
アンヘラのゆくえを探すもうひとりの男。拉致被害者の奪還とマインドコントロールを解く仕事を生業にしているフランス人刑事のエルヴェである。彼は、かつてアドリアンが予知した自爆事件によって、妻子を失い、自らも視力をなくしたつらい過去から逃れられずにいた。
こうして、アドリアン、アンヘラ、そしてエルヴェの3人は、マドリッドで、そしてサラマンカで運命の出逢いをする。果たして、悪夢によって予知された未来は、変えることができるのだろうか?
エルヴェには、『ニキータ』『王は踊る』など国際的に活躍するフランスの実力派男優チェッキー・カリョ。
秘かにエルヴェを愛するパートナーのユリエに、『ネイムレス/無名恐怖』で勇気あるヒロインを好演したエマ・ビララサウが、大人のコンビをスクリーン上に息づかせている。

《マドリッド〜サラマンカ》
マドリッドとサラマンカの街の対照も絶妙だ。
スペインの首都であり、人口300万人の大都市マドリッドは、闘牛やプラド美術館を楽しむ観光客が大挙押しかけ、他の巨大都市がそうであるのと同様に、アドリアンのように他人との関わりあいを拒絶して群集に紛れて生きるには絶好のコスモポリタンだ。一方のサラマンカは、旧市街がユネスコの世界遺産に登録されているいにしえの町。ボローニャ、パリと並ぶ歴史を誇るサラマンカ大学のある学術都市であることからも、予知能力を持った人々が集まる《ユートピア》のような研究団体が存在してもおかしくない信憑性のある佇まいを残している。そして、マドリッドからバスで約3時間の距離感が、サスペンスフルなサイコドラマに一時の穏やかな時間を醸し出しているのも見逃せない。

《キーワード=ユートピア》
監督は、『イフ・オンリー』で人生をやり直そうと男のファンタジーをビタースゥイートに見つめ、国際的に高い評価を得たマリア・リポル。アメリカで演出を学んだ経験を持つリポルは、『モンスター』のパティ・ジェンキンス、『恍惚』のアンヌ・フォンテーヌなど、野心的な映画作りが際立つ女性監督の台頭の中で、『トーク・トゥー・ハー』のペドロ・アルモドバル、『アザーズ』のアレハンドロ・アメナーバルに続く、スペイン映画界が生み出した新しい才能として注目される新鋭である。
脚本は、00年にフェレ・マルティネスが主演した『惨劇の週末』(ビデオ公開)で注目された新鋭コンビ、クーロ・ロヨとフアン・ビセンテ・ポスエロ、ディテールにこだわるマリア・リポルの要求に徹底して応えた撮影監督は『靴に恋して』のダビッド・カレテロ、編集は『アザーズ』『10億分の1の男』のナチョ・ルイス・カピージャス、美術監督は本作が長編デビューとなるセルヒオ・エルナンデスといった若手の有望株が結集、それぞれが独自の視点から《ユートピア》に相応しい映像感覚を創り出し、斬新なひとつの世界観を持った作品へと結実させるのに成功している。また、ゲリラのアジト襲撃シーンにオーヴァーラップするジャズのスタンダード「ネアネス・オブ・ユー」も緊迫のアクションシーンを劇的に盛りあげている。

劇中、「私のユートピアはどこにあるの?」と尋ねるアンヘラに向かって、アドリアンは「きっとあるさ」と微笑みつつ、自分の頭と胸を指差す。
果たして、あなたの心に《ユートピア》は見つかるだろうか?

ストーリー


マドリッドに暮らす青年アドリアン(レオナルド・スバラグリア)は日ごと、悪夢に苛まれていた。予知能力が生み出す凄惨な映像が現われては、彼につきまとって離れないのだった。たまりかねたアドリアンは、父親代わりのサムエル(エクトル・アルテリオ)のアドヴァイスに従って、警察に出向く。そして、夢で見た爆破予告を告げるが、フランス人刑事のエルヴェ(チェッキー・カリョ)は、アドリアンの話をまともに聞こうとはしない。そんなとき、エルヴェのデスクの上に飾られた一枚の写真を目にしたアドリアンの表情が一変する。夢で見た、爆破に巻き込まれて命を落とす母子は、何とエルヴェの妻子だったのだ。ちょうど、オフィスの窓から眼下に広がる駐車場を眺めているエルヴェに、そこに行き交った彼の妻子が手を振ったとき、駐車場に止めていた一台の車が爆破する……。
それから6年後、あらゆる人との出逢いを避けるように生きてきたアドリアンの前に、かつての仲間であるホルヘ(フェレ・マルティネス)が現われ、サムエルが心臓発作で倒れたことを告げる。いまだに悪夢に苦悩するアドリアンは、意を決してサムエルの住むサラマンカに向かう。かつて孤児だったアドリアンは、予知が原因で世間に馴染めずにいたが、少年時代にサムエルによって予知能力のある人々が集まるグループ《ユートピア》に迎え入れられ、その能力を伸ばしていた。けれど、大勢の人間が死んでいくのを、ただ見つめるだけしかできない自分の無力感に絶望しているアドリアンに、久しぶりに再会したサムエルはこう諭すのだった。「お前の予知能力を悪夢に変えてはいかん」
アドリアンは予知夢で見た、南米で死にゆく子供を抱いたひとりの女性の姿を、脳裏から消すことができなかった。サムエルは、その女性アンヘラを探し出せと言う。スペインのブルジョワのひとり娘アンヘラ(ナイワ・ニムリ)は、南米でボランティア活動をしていた際に拉致され、現在は、ボリビア国境で暗躍するカルト教団でゲリラ組織《ジャガー》の一員として、彼らと行動をともにしていたのだった。
その頃、6年前の爆破事件によって視力を失ったエルヴェは、アンヘラの実母から娘を救出するよう、依頼を受けていた。エルヴェは今、パートナーのユリエ(エマ・ビララサウ)とともに、拉致被害者の奪還と、彼らのマインドコントロールを解く仕事をしていたのだった。
やがてアドリアンは、アンヘラが資金稼ぎの麻ゲリラ集団とともに、資金稼ぎの麻薬密売のため、スペインに戻ってきたことを知る。自室の壁にアンヘラの写真を張りめぐらせ、アンヘラの夢を見ながら、マドリッドで接触を試みるアドリアンは、ホルヘの制止を振り払って、ゲリラのアジトに潜入する。そして、帰宅したばかりのアンヘラに、ただ「君を助けたい、ここから逃げろ」というだけのアドリアンを、にわかに信じることのできないアンヘラは、彼に銃口を向けるしかすべはない。そこに、ゲリラのリーダー(ジョゼ・ガルシア)が現われ、アドリアンに一撃を食らわせる。意識朦朧の中で、アドリアンはこう呟いた。「カオナポ……」。それは、アンヘラの腕の中で息絶えた子供の名前だった。
こうして、ゲリラに処刑されることになったアドリアンだが、いつしか彼の言葉に心動かされるようになったアンヘラは、ゲリラの隙を衝いて、彼を射殺したと偽り、アドリアンの命を救うのだった。折りしも、南米の自然を破壊すると、ダムの建築技師をカルト的な宗教儀式の中で惨殺するのに立ち会ったアンヘラは、彼らの行動に不審を抱き、ゲリラ集団からの離脱を決意する。行き場を失った彼女が向かった先はアドリアンのもとだった。
アドリアンはそんな彼女に子供の頃、両親の事故死を予知夢で見て以来、ずっと悪夢に悩まされていることや自分が身を置く《ユートピア》のことを、切々と打ち明ける。いつしか、心が通い始めるふたり……。しかし安らぎのときは、すぐに終わりを告げる。
アンヘラとアドリアンの居場所を突き止めたエルヴェが動き出したのだ。ふたりは激しいチェイスの末に、エルヴェたち警察からの追跡を逃れるが、アドリアンはエルヴェとの6年ぶりの再会に、愕然としていた。
一方、思いがけないアンヘラの裏切りに、「どこに行っても必ず見つける」と言い放つゲリラのリーダーは、アジトを警察に踏み込まれ、激しい銃撃戦の果てに、部下をすべて失い、命からがらひとり生き延びる。
こうして、アドリアンはアンヘラとともに、サムエルの待つサラマンカに向かうのだった。そして、エルヴェとゲリラのリーダーもまた、ふたりのゆくえを執拗に追いかける。そして、衝撃的なラストへと運命の火ぶたは切られる……!!

スタッフ

監督:マリオ・レプール
製作:フランシスコ・ラモス
脚本:クーロ・ロヨ/フアン・ビセンテ・ポスエロ
撮影:ダビッド・カレテロ
美術:セルヒオ・エルナンデス
音楽:パトリック・ゴラゲール、ナイワ・ニムリ

キャスト

レオナルド・スバラグリア
ナイワ・ニムリ
チェッキー・カリョ
ジョゼ・ガルシア
エマ・ビララサウ
フェレ・マルティネス
フアン・カルロス・ベジード
エクトル・アルテリオ
ロドリゴ・ガルシア

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