原題:Dogville

2003年カンヌ国際映画祭

2003年/フランス/カラー/177分/ 配給:ギャガ・コミュニケーションズ

2004年07月23日よりビデオリリース 2004年07月23日よりDVD発売開始 2004年2月21日(土)より、シネマライズ、シャンテシネ他全国順次ロードショー

公開初日 2004/02/21

配給会社名 0025

解説



話題性豊かで贅沢なキャスティング、アブソトラクトなセットのみで撮影されているという奇妙で信じがたい噂。世界中のジャーナリストの期待はいやがうえにも最高潮に達していた。『奇跡の海』(96)で審査員グランプリ、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(00)でパルムドール(大賞)を受賞したラース・フォン・トリアーの最新作は今年のカンヌでも群を抜いて一番の注目作となった。
公式上映は超満員、異常な熱気のなか上映が始まると、これまで見たことのない映画に期待は驚愕へと変わる。黒い床に白線が引かれただけで壁も扉も屋根もない、あまりに刺激的でミニマルなセット。
この”何もない空間”ですべてが展開する。しかも、章ごとの字幕が出来事を予め示し、ナレーター(ジョン・ハート)がたえず状況を語り続け観客をアジテートする。この斬新すぎるスタイルに加え衝撃的なストーリーライン、さらには皮肉たっぷりのアメリカ像に賛否が激突、批評家たちの論争はヒートアップした。
「行ったことがない国、アメリカで起こる映画を作るというアイデアに魅力を感じていた」と語るラースに最初のインスピレーションを与えたのは、ゴダールが多大な影響を受けたと言われる、劇作家ブレヒトの「三文オペラ」の劇中歌「海賊ジェニー」だった。こき使われる宿の女中が住む田舎町に、ある日百人の海賊がやってきて住人を皆殺しにし、彼女を花嫁にして一緒に船で去っていくという歌で、本作のプロットに大きな影響を与えている。また、アメリカに行ったことのない人間がアメリカを描けるのかという不当な非難が『ダンサー・イン・ザ・ダーク』撮影後、巻き起こったが、トリアーはそれに猛然と抗議。『ドッグビル』に始まるアメリカ三部作の構想を打ち立ててそれをとことん続けることにしたのだった。彼の知るアメリカのコラージュとしては・・・。カフカの「アメリカ」、ハードボイルド小説、トーマス・エディソン(主人公の名)、トム・ソーヤの冒険、大統領、民主主義、ギャング、デヴィッド・ボウイの「ヤング・アメリカン」、ジョン・フォードの「怒りの葡萄」、大恐慌時代、これらトリアーの頭に「真上から地図を見たようなセットでこの映画を描いたら?!」という本作の骨組みともいえる独創的な演出方針が浮かび、映画の基本イメージが一気に固まることとなった。
今回主役に抜擢されたのは『めぐりあう時間たち』(02)でオスカーに輝いたばかりのニコール・キッドマン。彼女はかねてからトリアーの映画に出演することを熱望していた。本作の撮影にあたってはトリアーと何時間にもわたって議論を重ね、深い信頼関係を結んだという。共演にはローレン・バコール(『オリエント急行殺人事件』(74))、ジェームズ・カーン(『ゴッドファーザー』(72))、ベン・ギャザラ(『バッファロー’66』(98))といった”ハリウッドの伝説”を支えたそうそうたる名優たちが集まった。さらにはクロエ・セヴィニー(『ブラウン・バニー』(03))、ジェレミー・デイヴィス(『プライベート・ライアン』(98))、ポール・ベタニー(『ギャングスター・ナンバー1』(00))、パトリシア・クラークソン(『エデンより彼方に』(02))ら新鋭実力派も参加。そして北欧の名優ハリエット・アンデルソン(『不良少女モニカ』(52))やステラン・スカルスゲールド(『奇跡の海』)も加わり、前代未聞の豪華キャストとなった。
スタッフには、ラース作品には欠かすことのできないヴィベケ・ウィンデロフがプロデューサーを担当、そして音楽のペール・ストライト、衣装のマノン・ラスムッセンなど、ラース作品の常連組が再結集した。さらに、『28日後・・・』(02)で脚光をあびたアンソニー・ドッド・マントルが撮影監督を担当、最強のドリームチームを結成した。

ストーリー


『ドッグヴィル』は9章のエピソードとプロローグから成る物語である。
◆PROLOGUE
村とそこに住む人々の紹介
ロッキー山脈の麓、孤立した村「ドッグヴィル」。村人はわずか23人。建物はどれも貧相で粗末な小屋のようだった。一番まとまなのはトム(ポール・ベタニー)の家で元医者の父親と二人暮らし。チャック(ステラン・スカルスゲールド)は気難しい男でりんご農園を経営し、妻ヴェラ(パトリシア・クラークソン)と7人の子供、そして番犬モーゼスをなんとか養っている。村の西側で雑貨店を経営しているのはジンジャー夫人(ローレン・バコール)。この種の店が村に1軒しかないのをいいことに彼女は商品に高い値をつけている。トムが思いをよせるガラス工場の娘リズ(クロエ・セヴィニー)はいつかこの寒々しい村をでることを夢見ている。その兄ビル(ジェレミー・デイヴィス)はトムのチェス友達だったが、気が弱く猜疑心の強い男だった。その他盲目であることを隠し続けている老人ジャック(ベン・ギャザラ)や音の出ないオルガンを引き続ける教会の管理人マーサ(ジョヴハン。ファロン)など、この物語の奇妙な登場人物たちは、これから次々と姿をあらわすことになる。
◆CHAPTER1
トムが銃声を聞き、グレースと会う
いつものようにトムがビルとチェスをしていると、ジョージタウンの方向から一発の銃声が聞こえた。人の気配がする暗闇に目をこらすと、一人の美しい女性(ニコール・キッドマン)がたたずんでいた。助けを懇願する彼女を廃坑にかくまうと、やがて黒塗りの車に乗ったギャングたちが彼女を追ってやってきた。トムはうまくとりつくろい彼らをやり過ごすことに成功した。翌日トムは村人たちに彼女をかくまうことを提案し、条件つきの同意を得る。その条件とは2週間で彼女が村人全員に気に入られること、というものだった。
◆CHAPTER2
グレースはトムの計画に従い肉体労働を始める
グレースはトムの計画に従い、無償で肉体労働を提供することにした。閉鎖的な村人たちは始めこそ彼女の申し出をなかなか受け入れようとしなかったが、それでも熱心に足を運ぶ彼女に対して徐々に心を開いていった。頑固者のチャックを除いて。
◆CHAPTER3
グレースが挑発的な試みに喜びを見出す
彼女自身、村の人たちが好きになり、より親密な接触を試みるようになった。彼女はもうまるで村人の一員のように見えた。2週間はあっという間に過ぎ、いよいよ、彼女をこれからもかくまい続けるかどうかの話し合いが村人全員でなされる時がきた。結果は・・・全員一致で彼女をこれからも村におくということだった。あのチャックさえも同意したのだ。
◆CHAPTER4
ドッグヴィルの幸せな日々
彼女はヴェラの子供たちの世話をしたり、マーサとオルガンを弾き幸せな日々を過ごした。村人たちもわずかだが彼女の労働に対して報酬を支払うようになっていた。そんなある日、めったに来ない警察が村を訪れ1枚の紙切れを壁に貼っていった。それはグレースを探す手配書だった。それを見た村人たちの間に静かな波紋がひろがる。
◆CHAPTER5
とにかく独立記念日
7月4日、独立記念日が来た。いつも陽気な村ドッグヴィルもこの日ばかりは幾分はなやいだ雰囲気に見える。村人たちの彼女に対する親愛の情はますます深くなっているようだ。だが、2枚目の手配書が届くと事態は一変する。彼女が強盗に関与している、という内容だったからだ。グレースに魅かれはじめていたトムは「ギャングの圧力だ」と必死に訴えるが村人たちは聞き入れない。彼女は居つづける代償として、2倍の労働を村人たちに提供することを約束せざる得ない状況に追い込まれていく。
◆CHAPTER6
ドッグヴィルが牙をむく
村人のグレースに対する態度はもはや奴隷に対する態度だった。チャックはついに、ギャングの追っ手が村に来たことをネタにグレースをレイプする。グレースに抵抗する力はすでに残っていなかった。
◆CHAPTER7
ついに嫌気がさしたグレースはドッグヴィルを去り再び新たな日を迎える
チャックのことを聞いたトムは村からグレースを逃がそうと決意する。村を出て行くことを決めたグレースはトムとともにトラック運転手ベン(ゼルイコ・イヴァネク)に協力を頼む。報酬を受け取ることを条件にグレース逃亡の手助けを約束したベンは、トラックの荷台にグレースをかくまい、ドッグヴィルをあとにする。安心して眠りにつくグレース。しかし、ベンの裏切りにより、目をさましてみると、グレースは再びドッグヴィルに戻っていた。そして村人たちは、グレースに逃亡防止のため重い鎖のついた首輪をはめさせるのだった。
◆CHAPTER8
集会で真実が語られトムが退席する(だが後で戻る)
トムは村人たちの許しを得るために彼らの前でグレースに話をさせようと決意し、集会を開く。しかし村人たちの反応はあまりにも冷ややかだった。連日のように重労働を課せられ、男たちに弄ばれるグレース。ついにはトムまでもグレースとの関係を望むが、プラトニックな関係にこだわる彼女に拒まれてしまう。プライドを大きく傷つけられたトムはギャングに通報することを決意する。
◆CHAPTER9
ドッグヴィルに待ち望んだ来訪者たちが現れ、映画は終わる
ある日、キャニオン・ロードからグレースに聞き覚えのある車の音が聞こえてきた。そして、ついにドッグヴィルに「審判の日」がやってくるのだった・・・。

スタッフ

監督:ラース・フォン・トリアー
製作:ヴィベク・ウィンドレフ
製作総指揮:ペーター・オールベック・イェンセン
脚本:ラース・フォン・トリアー
撮影:アントニー・ドッド・マントル

キャスト

ニコール・キッドマン
ポール・ベタニー
クロエ・セヴィニー
ローレン・バコール
ベン・ギャザラ
ジェームズ・カーン
ステラン・スカルスガルド
パトリシア・クラークソン
ジェレミー・デイヴィス
ジャン・マルク・バール
フィリップ・ベイカー・ホール

LINK

□公式サイト
□IMDb
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http://www.dogville.dk/
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