原題:elephant

いつもと同じ1日だと思ってた。

2003年/アメリカ/1時間21分/カラー/スタンダード/SRD 配給:東京テアトル、エレファント・ピクチャー

2004年12月03日よりDVD発売開始 2004年3月27日よりシネセゾン渋谷にてロードショー

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公開初日 2004/03/27

配給会社名 0049/0244

解説


 2003年のカンヌ国際映画祭で史上初のパルム・ドールと監督賞のW受賞を果たしたガス・ヴァン・サント監督の最高傑作『エレファント』がついに日本公開される。
『マイ・プライヴェート・アイダホ』『ドラッグストア・カウボーイ』『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』まで、ヴァン・サント監督は、少年が世界の中で居場所を見つけようとすることがどういうことなのか、彼らと同じ視線に立って探し求めてきた。今は亡きリバー・フェニックスや、キアヌ・リーヴス、ベン・アフレック、マット・デイモンといった若い俳優たちの信頼を集める監督だからこそ、少年たちをありのままに受け入れ、大人には見えない、煌く<何か>を、スクリーンに映し出すことができるのだ。
そしてついにマスター・ピースが誕生した。秋の日の澄み切った空、たゆたうように登場人物を追って流れるカメラワーク。メランコリックで。純粋で残酷な少年達。素人の高校生かたリアリティを引き出すみごとな演出によって、ピュアな感受性をみずみずしく、フィルムの焼き付けた『エレファント』。その透明感溢れる詩的な映像表現は、「現代映画史上の傑作。メッセージがあり、清楚な気品があり、繊細な陶器のように軽やか」(仏リベラシオン紙)とカンヌで絶賛された。今回のパルムドールは、アメリカ人監督としては、タランティーノ監督(『パルプ・フィクション』1994)以来、9年ぶりの快挙である。
「あの事件」のナイーブな少年達を、誠実に描いたこの映画を観終わった時に受ける、静かだが決して消し去ることのできない強い衝撃は、時を経るほどにあまりに美しい映像とともに、深く心に刻印されることだろう。

 監督の地元であるポートランドは、本屋とコーヒーショップが数多く軒を連ね、陰惨な事件など想像するのさえ難しいヒッピーの多い文化色溢れる北西部の中規模都市だ。
実際の高校生3000人を対象にオーディションした監督は、出演者たちに自分の役を、自らの人生と重ねあわせるように勧めた。書かれたセリフはなく、役名も本名を使い、自分の話や体験を盛り込んで即興でセリフを作っていった。実際に劇中でアレックスが奏でる「エリーゼのために」などは、偶然彼が弾いていたピアノを採り入れたもので、映画に不穏なリアリティを与えている。カンヌ入りした少年たちには受賞後、報道陣が殺到した。特にジョン役のジョン・ロビンソンは、アーシア・アルジェント監督(新作『HEART IS DECEITFUL ABOUT ALL THINGS』)からオファーされたほか、「L’UOMO VOGUE」のカヴァーを飾った。あどけなさと逞しさが同居する「ポスト・リバー・フェニックス」的なブロンドの美しい少年で、今後ブレイクすることは必至だ。

 1999年4月20日(ヒトラーの誕生日)、全米を揺るがせたコロラド州コロンバイン航行での銃乱射事件は、『ボウリング・フォー・コロンバイン』を初め、多くのアーティストやジャーナリストが取り上げ、この事件の持つ意味を理解しようとしてきた。
少年を見つめつづけてきたヴァン・サント監督も、事件の直後からこの事件をテーマに映画を撮りたいと思っていたが、周囲の理解が得られず製作は難航した。女優・監督として知られ、自ら製作も行うダイアン・キートンがプロデュ−サーに名乗りをあげたことで、本作は実現に向けて進み始めた。
この映画が他と一線を画しているのは、あえて声高に問題点を指摘せず、少年たちの苛立ちの矛先などに、無理に答えを導き出そうとしていないことだ。ただ誰もが知るクライマックスに到達するまでの登場人物たちのいつもと変わらぬ一日を淡々と描写し、時間軸を何度も交差させながら、ひたすら子供たち(とくに弱者)を見つめることに徹している。そして監督は「なぜ?」という素朴な疑問を、観客に、少年たちに、そして自分自身に問い続けるのだ。

ストーリー


初秋の紅葉が色づく心地よい一日の、オレゴン州ポートランド郊外にある高校。校庭では、アメフト部やチアガールが朝練をしている。
一台の車が住宅地を迷走する。路肩に縦列駐車した車にミラーをひっかけ、車体の横腹を削りながら、縁石に乗り上げる。酒に酔った父親にあきれた高校生ジョン—髪をブリーチし、鮮やかな黄色いシャツを着た少年—は運転を交替する。通い慣れたワット高校に到着すると、悪びれない父親にその場から動かないように命じて、兄に迎えにきてくれるよう電話する。だが背後からは、陰湿そうな校長先生が聞き耳を立て、その事情を知らぬまま、遅刻常習者の彼に居残りを言い渡す。
写真好きのイーライは、公園を散歩中のパンクロックカップルに写真をとらせてもらっていた。ヌードを撮るかとけしかける男の誘いには乗らず、美大へ応募するためのポートフォリオ作りに励んでいた。
アメフトの練習を終えた、女子に人気のネイサンはガールフレンドのキャリーと待ち合わせる。食堂では女子の仲良し三人組が噂話とダイエット、監視好きな母親への文句に花を咲かせながらランチ。そして食べたばかりの昼食をトイレで吐き出す。
クラスルームでは同性・異性愛会が開かれ、人を見てゲイかどうか判断できるかどうかという議論に熱が入る。
他のみんなと一緒の部屋では着替えも出来ず、シャワーも浴びられない自意識過剰の文科系の少女ミシェル。体育の授業で短パンをはかなかったことで先生からちくちく文句を言われる。
教室に入ったジョンが思わず涙を浮かべると、母性本能をくすぐられたかのように、クラスメートの女の子が彼の頬にキスをする。
物理の授業では熱心に質問する生徒と、後ろの席のアレックスに濡れたティッシュ玉を投げつけるいじめっ子がいる。
いじめはいつものことだ。アレックスの趣味はピアノを弾くことと、絵を描く事。
そんな残酷だが平穏な学校生活がいつものように過ぎようとする中、アレックスと親友のエリックはネットで入手した荷物を待っていた。アレックスは「エリーゼのために」を弾き、コンピューターゲームで敵を容赦なく撃ち殺すエリック。彼らは両親が出て行ったのを見計らって、ウェブサイトから届いた宅急便を開き、二人一緒にシャワーを浴びると、彼らが選んだ特別な日に、これまで経験のなかったキスを試してみる。
恋人たちは手に手をとって歩き、犬が外の芝生で戯れ、同性・異性愛会は白熱する。
ミシェルは苦手な体育の後、図書館でのボランティア活動へ急ぎ、イーライは廊下で遭ったジョンにシャッターを切る。そして外へ出たジョンは重装備を抱えて校舎に入っていくアレックスとエリックにすれ違う。
平和な一日、なるはずが・・・。

スタッフ

監督・脚本:ガス・ヴァン・サント
プロデューサー:ダニー・ウルフ
製作総指揮:ダイアン・キートン
      ビル・ロビンソン
撮影監督:ハリス・サヴィデス(ASC)
音響デザイナー:レスリー・シャッツ
キャスティング・ディレクター:マリー・フィン
               ダニ—・ストルツ
配給:東京テアトル、エレファント・ピクチャー

キャスト

アレックス・フロスト
エリック・デューレン
ジョン・ロビンソン
イライアス・マッコネル
ジョーダン・テイラー
キャリー・フィンクリー
ニコル・ジョージ
ブリタニー・マウンテン

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