映像化不可能といわれた衝撃の原作を完全映画化 凶器が狂気にかわるとき…

第17回東京国際映画祭“日本映画・ある視点”上映作品::http://www.tiff-jp.net/

2004年/日本/124mn/ 配給:メディアボックス

2005年11月25日よりDVDリリース 2005年3月19日よりシネマメディアージュ他、全国順次ロードショー

公開初日 2005/03/19

配給会社名 0099

解説


僕らは真犯人を探しているのだろうか。
それとも…哀しい愛の亡霊を探しているのだろうか——。

 1999年、第13回メフィスト賞を受賞し、講談社ノベルスより刊行された殊能将之の小説「ハサミ男」。超現代的なサイキック・マテリアルを、独特な文章スタイルで描写した野心作だ。読者の誰をも読後快感に叩き込み、大きな話題となって、同年ミステリー・ベスト10の一角に食い込む。そしてその精緻なレトリックによるサイコメトリックの表現は専門家からも絶賛を浴びた。だが、それゆえ、映画化は絶対に不可能といわれつづけた、禁断のサイコ・スリラーなのである。

 美少女を狙い、その喉に研ぎ上げられたハサミを突き刺す連続猟奇殺人鬼。マスコミは、犯人に“ハサミ男”という通称を与えた。“ハサミ男”の次なるターゲットは樽宮由紀子という目黒区鷹番に住む女子高校生。犯行のため彼女の自宅を下見した帰り、“ハサミ男”の手口で殺された樽宮由紀子を発見する。もちろん“ハサミ男”自身は、この殺人を犯していない……。自殺未遂を繰り返すハサミ男の強烈なキャラクター、美しくも無残な死体、そして読むものの心を捉えて放さない鋭利で精緻な文章、そして驚愕の真相。

 あらゆる面で映画化困難とされながらも、映像各社からのオファーが殺到。原作者が許可を与えたのは、彼が心酔する『人魚伝説』の池田敏春だった。ロマンポルノの頂点を極めた『天使のはらわた・赤い淫画』。伝奇ロマン活劇の代表作『人魚伝説』。日本初の本格スプラッター『死霊の罠』。様々なジャンル映画で常に映画史に残る作品を発表しつづける監督・池田敏春。そしてやはり、この禁断のサイコ・スリラーを監督しうるのは、鬼才・池田敏春のほかにない。独特の文章スタイルによるレトリックな表現を、見事に、予想を超えた映画のレトリックヘと翻案し、目を見はる映像スタイルを確立。全身全霊をかけた池田演出は、更に奥深くミステリアスな、現代人の心理の闇へと分け入る事に成功した。数多い邦洋のサイコものとは大胆に一線を画し、ジャンルに未踏の地平を切り開く、冷徹なる新感覚スリラーがここに誕生したのだ。

 脚本は池田敏春と香川まさひとの共作だが、その誕生過程で、寡作の巨匠・長谷川和彦や山口セツ、名匠・故相米慎二の協力を得ている事も見逃せない。まさに満を持した、池田敏春監督5年ぶり、待望の劇場映画最新作なのである。

 主演は、昨年から今年にかけて『丹下左膳・百万両の壺』(津田豊滋監督)、『北の零年』(行定勲監督)、『レイクサイド マーダーケース』(青山真治監督)、本作をはさみ『妖怪大戦争』(三池崇史監督)、『イッツ・オンリー・トーク』(廣木隆一監督)と主演作が連続する日本映画界の超カリスマ、豊川悦司。そして映画女優としての進境著しい『CASSHERN』(紀里谷和明監督)、『青い車』(奥原浩志監督)の麻生久美子。この二人がやるせなきサイコメトリック・キラーの新境地に挑んだ。対するサイコアナリストには阿部寛。脇を斎藤歩や石丸謙二郎ら演技派が固める第一級の布陣だ。

 そして、カメラによって周到に用意されたサイキックな映像をあおる本多俊之の戦標のサウンドは、映画が終了しても決してあなたの耳を去る事はないだろう。

なぜなら一“ハサミ男”が本当に切り開くのは、あなたの心の奥に他ならないのだから一。

ストーリー

凶器が狂気に変わるとき…。

 ある地方都市。半年もの間に2人の女子高生が殺される。被害者の喉には、深くハサミが突きたてられていた。連日報道されるTVのワイドショー。マスコミはこの特殊なサイコキラーを“ハサミ男”と呼んだ。

 今また、第三の死体が知夏(麻生久美子)と安永(豊川悦司)の前に転がっている。ジョギング中の男・日高(斉藤歩)に見られてしまった。“違う、これは私たちの凶行ではない”。ふたりは自らに捜査が及ぶ前に、この謎の“ハサミ男”を突き止めねばならない立場に追い込まれる。

 所轄の目黒西署は色めきたった。世間を騒がせる殺人鬼の第三の凶行が管内で発生したのだ。暴走気味ながらも正義感の強い若手刑事・磯部(樋口浩二)は義憤にかられ、はやる気持ちを抑えきれない。そんな彼が、本庁からやって来たキャリア組のサイコアナリスト、堀之内(阿部寛)の目に留まり、捜査の中枢に抜擢される。

 自殺癖があり未遂をくりかえす知夏と、何故かそれを優しく見守るだけの安永のふたりも、なかなか“ハサミ男”に到達できない。警察も三つの事件の共通点さえ掴みかねている。しかし、謎をかかえたまま、両者の距離は次第に狭まってゆくのだった。

 そして、複雑に絡み合いながらその真相を現わさなかった事件は、ある些細な出来事をきっかけに白日のもとにさらされる—–。

スタッフ

監督:池田敏春
原作:殊能将之
音楽:本多俊之

キャスト

豊川悦司
麻生久美子
斎藤歩
樋口浩二
石丸謙二郎
阪田瑞穂
小野みゆき
二木てるみ
寺田農
阿部寛

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