原題:Strayed

もう戻らないあの夏の日。彼は確かにそこにいた。

2003年8月20日フランス初公開

2003年/フランス/カラー/95分/ 配給:ギャガ・コミュニケーションズ

2004年07月14日よりビデオレンタル開始 2004年07月14日よりDVD発売開始 2004年1月24日より、シネスイッチ銀座にてロードショー公開

公開初日 2004/01/24

配給会社名 0025

解説



1940年、ドイツ軍攻め入るフランス、パリ。夫を亡くした教師オディールは、戦火を逃れるため、2人の子供と共に南へと向かう。空襲の最中、突然現れた不思議な青年イヴァンに命を救われた母子は、彼に導かれ静寂の森を深く進む。たどり着いたのは、時間の止まった屋敷だった。閉ざされた生活を送る中、オディールとイヴァンの心の渇きは次第に危うい感情へと変化していく…。
主演エマニュエル・ベアールは、美しいが、精神的に不安定な未亡人の複雑な内面をみごとに表現し、世界の映画人から、キャリア最高の名演と評された。イヴァン役には、本作でカンヌの話題を独占した、フランス待望の大型新人ギャスパー・ウリエルを起用。アンドレ・テシネ監督の最高傑作といえる本作は、人間というもののエゴや欲望を、瑞々しい風景の中にするどく浮かび上がらせた。
本作は2003年カンヌ映画祭コンペ部門正式出品作に選出された。テシネ監督がカンヌのコンペに作品を送り込むのは実に6度目。また主演のベアールも過去に5度、赤絨毯を踏んでいる映画祭の常連。だが、今回もっともホットな話題を集めたのは、イヴァン役に抜擢された新星ギャスパー・ウリエルだった。初の主演作でいきなりカンヌ映画祭デビューを果たした彼は、その、人を魅きつける特異な存在感と新人離れした繊細な表現カで、一夜にしてカンヌで最も注目を集める存在となった。さっそく『アメリ』(01)のジャン=ピエール・ジュネ監督から次回作の主役をオファーされるなど、早くもウリエルをめぐって熱い争奪戦が始まっている。
今年のカンヌは、巨匠アンドレ・テシネの新作に沸いた。女性の美しさと人間の本質を描くことに長けた彼の作品の中で、本作は間違いなく最高傑作といえるだろう。テシネはこれまでに、カンヌ国際映画祭監督賞に輝いた『ランデヴー』(85)や『野性の葦』(94)といったヨーロッパ映画界でも最高水準の傑作を送り出してきた。カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュといったトップ女優たちが絶大な信頼を置く、女優映画の名匠としてもよく知られている。そのテシネが今回主役に選んだのは、『美しき諍い女』(91)、『8人の女たち』(02)などで高い人気と実力を誇る、フランスを代表する女優のひとり、エマニュエル・ベアール。テシネ監督との12年ぶりのコラボレーションの実現は、フランス映画界の話題をさらった。原作は人気作家ジル・ペローが実体験をもとに描いた小説『Le Garcon aux yeux gris(灰色の目の少年)』。これをセザール賞脚本賞に輝いた『野性の葦』(94)でもテシネ監督とコンビを組んだ名脚本家ジル・トーランが脚色した。本作の大きな魅力である息を呑むような映像美は、テシネ作品初参加となった『ジャック・ドゥミの少年期』(91)の女性撮影監督アニエス・ゴダール。音楽はこれが12本目のテシネ作品となるフィリップ・サルド。『テス』(79)で米アカデミー賞にノミネートされた他、セザール賞ノミネートのべ10回を誇り、うちテシネ監督の『バロッコ』(76)で受賞しているフランス映画音楽界の第一人者である。衣装デザインは『リディキュール』(95)などでセザール賞を三度受賞しているクリスティアン・ガスク。テシネ作品は初期の『ブロンテ姉妹』(79)、『ランデヴー』(85)など6本を手がけており、今回が16年ぶりの参加となる。製作は『太陽と月に背いて』(95)のジャン・ピエール・ラムゼイ・レヴィ。

ストーリー



1940年6月、ナチス・ドイツ軍攻め入るフランス、パリ。人々は戦火を逃れるため、南を目指していた。夫を亡くした教師オディール(エマニュエル・ベアール)も、13歳の息子フィリップ(グレゴワール・ルプランス・ランゲ)と7歳の娘カティ(クレメンス・メイエ)とともに車を進ませる。4日間走り続けた後、襲われた突然の爆撃に、車が炎上、周辺の人々が次々と倒れていく中、彼らの命を救ったのは美しくも不思議な魅力を持つ青年イヴァン(ギャスパー・ウリエル)だった。彼を警戒しながらも、たくましい生命力に導かれるように、森の奥深くへと進むオディールたち。森で一晩を過ごし、翌日たどり着いたのは、時間が止まったような無人の屋敷だった。屋敷の主である、ユダヤ人音楽家は、ナチスの手を逃れるため、避難した後だった。軽い身のこなしで高い窓から屋敷に侵入したイヴァンは、なぜか電話線を切り、ラジオを隠す。サバイバルの知恵を身につけているイヴァンに、13歳の息子フィリップはたちまち敬意を抱き、4歳年上の彼を兄のように慕い始める。一方、過去を語りたがらず、生きるためには犯罪まがいの行為もためらわないイヴァンに、オディールは警戒心を解かない。
のどかな静けさに包まれた、陽光溢れる楽園のような陸の孤島での生活をはじめた4人。イヴァンは毎日出かけては、食料となる鶏やうさぎを得て戻る。それぞれが家の中で役割を持ち始めた。不法に他人の家に滞在することに罪悪感を持ち続けていたオディールも、やがて、あきらめるように、安全な場所である屋敷での生活を受け入れる。ただ、オディールは疲れていた。父親の分も、母親として正しくしなくてはいけないことに。もう夫がいない世界に1人生きていかなくてはいけないことに。時々ふと、すべてを投げ出したくなり、そんな自分の心にまた、戸惑うのだ。
オディールはふとしたきっかけで、イヴァンは字が読めないことを知る。その時から、それまでの警戒は解け、別の感情がオディールに芽生え始めた。オディールは、自分を求めはじめた彼に理性で抵抗する一方、本能で強く魅かれ始める。危ういバランスを保ち続けていたオディールとイヴァンの情熱がピークに達した直後、ショッキングな悲劇と意外な結末が訪れる。

スタッフ

監督・脚本:アンドレ・テシネ
脚本:ジル・トーラン
撮影監督:アニエス・ゴダール
製作:ジャン・ピエール・ラムゼイ・レヴィ

キャスト

オディール:エマニュエル・ベアール
イヴァン:ギャスパー・ウリエル
フィリップ:グレゴワール・ルプランス・ランゲ
カティ:クレメンス・メイヤー

LINK

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