アイ・アム・デビッド
原題:I Am David
名前だけが、唯一の持ちものだった。
2004年12月4日アメリカ公開
2003年/アメリカ/カラー/99分/ 配給:日本ヘラルド映画
2005年08月18日よりDVDリリース 2005年2月19日、シネマスクエアとうきゅうにて ロードショー
公開初日 2005/02/19
配給会社名 0058
解説
少年は北へ向かう。
母との再会が待つ地へと。
新鋭ポール・フェイグが、世界的ベストセラー小説を
完全映画化した奇蹟の感動作!
ラストで素晴らしい奇蹟が私たちを包んでくれる感動作「アイ・アム・デビッド」は、12歳の少年デビッドが、たったひとりでブルガリアの収容所からデンマークへ北へと向かう物語である。
収容所育ちのデビッドは、ある日、そこでの生活に見切りをつけ、本当の人生を生きるために、ある男の指示に従い危険を顧みずに収容所を脱走する。
行く先で待ち受けているトラブルやドラマティックな冒険をその時は知る由もない。
そうして、初めて知識として得ることや、体験や出会いを通して真の意味の勇気、信頼、笑顔、希望を発見していく─。
やがて訪れる、思いもよらない奇蹟と幸福感。
引き離されていた母との再会が彼に訪れる。
原作は、デンマークで1963年に出版された世界的ベストセラー、アン・ホルム原作の同名小説である。
英語圏でのもとのタイトルは「North to Freedom」。本国では教科書の中で紹介されているほどの有名な人気冒険小説で、多くの賞を受賞するとともに、ミリオンセラーとなった。
ホルムはそれまでタブー視され、誰も扱おうとしなかった戦争や難民問題に真っ向から向き合い、人を信頼する心の大切さ、自由を勝ち取るための勇気などを、少年少女・若者・大人にいたるまで皆が楽しんで読める小説に仕上げたのだ。
そして口から口、人から人へとこの物語は世界へ広がっていき、想像を絶する過酷な状況にありながらも懸命に立ち向かう、この親しみを覚える利発な少年デビッドに人々は夢中になった。
アメリカでは特に高い評価を得ており、いくつもの学徒新聞で「冒険児童小説の最高傑作!」と評されている。
製作は、子どもの頃にこの小説の熱狂的読者であった多くのスタッフによって支えられた。
プロデューサーのローレン・レヴィンや、パートナーとなるクライヴ・パーソンズらにとって、デビッドの冒険は忘れられない出来事になっている。
そして、子どもたちへ両親が読み聞かせるという形でそれは続いていきながら、今回の完全映画化が進められた。
この企画を持ち込まれた監督ポール・フェイグは既にファミリー向けテレビ番組で成功していた新鋭脚本家兼監督として名高く、すぐに興味を示したと言う。
当たり前のように私たちが受け取っているこの世界へ初めて踏み出そうとするアウトサイダーの映画を作りたかったと言う彼にとって、デビッドは切望したキャラクターでありながら、新鮮な素材であったのだ。
自由が保障されているこの現代でこそ、自由を得るために多くの犠牲が支払われなければならないこともある、というメッセージも、フェイグ監督にとって必要不可欠なことだった。
スリリングでサスペンスフルなオープニングから、自然に観ている私たちを共感させ、そのファンタジックな世界に引き込むドラマティックな描き方は、「彼こそこの小説の映画化にふさわしい人物」とプロデューサー陣に言わしめた新鋭ポール・フェイグ監督の手腕と才能によるところであるが、スタッフは監督と同じ重要性を持って、デビッドを演じる少年をオーディションで根気よく、大々的に捜し求めた。
そして、「リトル・ダンサー」(00)のジェイミー・ベルを発掘したキャスティング・ディレクターのピッパ・ホールが、とうとうベン・ティバーを見出したのである。
これが映画初出演となるイギリス人少年だ。
複雑なデビッドというキャラクターには、演技力に加え、精神的・肉体的な強さが求められていたが、ベンは完璧にその条件を備えているばかりか、哀しみをたたえた瞳と、大人びた表情を見せる豊かな表現力で、製作陣に「ベンを見た後、迷いはなかった」と決定させたのだ。
共演には、本作の演技がメル・ギブソン監督の大ヒット映画「パッション」(04)につながったジム・カヴィーゼル。
年が親子ほどに違うデビッドを兄のような師のような愛情で守り、たった一つの石鹸のために彼をかばい身代わりに看守の銃弾に倒れるというヨハネスを演じている。
また、デビッドがスイスへ向かう途中で出会い、目的地デンマークへと誘う奇蹟への案内人となる優しい老女ソフィーを、2度のアカデミー賞にノミネート経験のあるジョーン・プロウライト(「永遠のマリア・カラス」・02)が好演。
そして、ブルガリア、ギリシャ、イタリア、スイス、デンマークと5カ国にわたる旅の撮影は、近代化の波にさらされず、美しい森や華やかな古城などが今も残るブルガリアで全て行われ、原作の世界を正確に表現した。
2004年に製作完成された後、既に出品された多くの映画祭では作品賞、主演男優賞、観客賞などを多数受賞。この波に乗って、この、北へ北へと新たな命を求めて彷徨う少年の奇蹟を描いた本作が、世界的ベストセラーである原作と同じように、世界中で圧倒的な共感と感動で迎えられるのは間違いない。
ストーリー
名前だけが、唯一の持ち物だった。
第二次大戦直後のブルガリア。戦争が終結したにもかかわらず、依然として共産主義国が周辺諸国に軋轢をかけている時代であり、罪のない人々が強制収容所に隔離されていた。
ある夜、12歳の少年、デビッドは看守たちの隙をつき、フェンスをよじのぼり収容所から逃げ出した。
頭の中には、ある男の言葉が響いていた。「この手紙を持って、誰にもつかまらずにデンマークげ行け」。 デビッドの持ち物は、わずかな食料とひとかけらの石鹸、ナイフ、そしてコンパス(磁石)だけ。
やっとギリシャに到着し、イタリア行きの船に乗り込むが、船員に見つかってしまう。
初めは船員の外国語が聞き取れないデビッドだったが、「君は収容所育ちだ。外国人の言葉には慣れている。よく聞いてみろ」という例の男の言葉が蘇った途端、船員が何を話しているかを理解した。
密航は船長へ突き出す規則だ、という彼にデビッドはナイフをあげることを条件に、イタリアのサレルモという町へ下ろしてもらう。
イタリアは、収容所の生活しか知らないデビッドにとって、見たことのないもので溢れていた。きれいな服を着た子どもたち、幸せそうな親子、本屋のウィンドーに並ぶ白い本・・・。タイトルは「旅と悲しみ」と書いてある。
そして、おいしそうなパンを並べるパン屋。陽気な親父は「笑ってくれたらパンをあげるよ」と言うがデビッドは笑顔の作り方を知らない。笑ったことがなかったのだ。すると、収容所の看守たちと同じような制服を着た警官が入ってきた。パン屋が他の子とは違うデビッドの様子を見て通報していたのだ。 間一髪で彼らの手をすり抜けながら、あの男の声を思い出す。
「誰も信用するな」。
デビッドは北へと歩き続けながら思い出そうとする。
あれは誰だったんだろう?
親も兄弟もいない収容所生活で、何かと世話を焼いてくれたヨハンだろうか。デビッドが看守の引き出しから石鹸を盗んだ時に「人のものを盗んではいけない」と言ったのは、父親ほども年の違う彼だった。
そして、女の人の顔が浮かぶ。とても優しい瞳で愛しげにデビッドを見る金髪のきれいな女の人・・・。
北へ北へと進みながら、デビッドはたくさんの出会いと経験を積み重ねていく。
通りがかりにワインの配達を頼まれたり、エンストした車の修理を手伝ったり。
ある時、兄弟との悪戯が過ぎて炎にまかれている少女マリアを助け、豪華な屋敷に招かれて滞在したこともあった。
初めて体験する豊かで優雅な暮らしの中で(その家の図書室でもまた「旅と悲しみ」の白い表紙を見かけた)優しいマリアと過ごすうちに、北へ向かうことを忘れかけていた。
しかし、やはりデンマークへたどり着かなくてはならない。託されていた手紙はボロボロになり、決して封を開けてはいけないと言われたのに中身を見てしまった。そこには、デビッドの小さいころの写真と、あの記憶の中の金髪の女の人の写真が貼られた身分証明書が入っていたのだ。
次に出会ったのは、ソフィーという老女であった。
ずっと前に息子をなくし、趣味で絵を描いている彼女はデビッドをスイスの自分の家へと連れていき、「何か理由があるのね。しばらくここにいたらどう?」と語りかける。
しかし、彼はもとの場所へ連れ戻されるのではないかと思うと「僕のことを密告しないで」と怯えることしかできない。
「大丈夫よ。そんなことは絶対しないわ」とソフィーが驚いて言うと、デビッドは今までの緊張が一気にほどけたのか、彼女に抱きつき、おいおい泣き出した。
再び収容所のシーンが蘇る。
ヨハンが看守の1人に撃ち殺されるところだ。
ヨハンはデビッドの身代わりに石鹸を盗んだ罰として見せしめに殺されたのだ。まるでそれが自分の望みであるかのように。
そして看守の部屋。「何としても生き抜くんだ。私は来週には転任する。もう君を守ってやれない。・・・ヨハンのことは残念だった」。
デビッドのこれまでの旅を支えてくれていたのは収容所の看守だった!
ソフィーと一緒に町に出かけ本屋に入ったデビッドは、棚にまた「旅と悲しみ」の白い本を見つける。
デビッドの視線に気づいたソフィーがその本の内容を語りだした。
「これはブルガリアで夫と息子と死別した女の人の話なの。夫が反共産主義者だったためにブルガリアの収容所に入れられてしまい、夫と息子は殺されてしまったの。ところが、看守が幼馴染で、彼女だけは書類を捏造して逃がしてあげたのよ。今、デンマークに住んでいるらしいわ」。
驚いたデビッドが本を裏返して見ると、記憶の中の金髪の女の人の写真が著者紹介として載っている。その女性はまさに彼の母親だったのだ!!
そして今、デビッドはソフィーに見送られてデンマーク行きの飛行機に乗っている。彼は果たしてそこで母に会えるのだろうか・・・?
スタッフ
ポール・フェイグ (監督・脚本)
ローレン・レヴィン (プロデューサー)
キャスト
ベン・ティバー(デビッド)
ジム・カヴィーゼル(ヨハン)
ジョーン・プロウライト(ソフィー)
LINK
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