原題:In This World

2002年/イギリス/カラー/89分/ドルビーデジタル/ 配給:アミューズピクチャーズ

2004年05月21日よりDVD発売開始 2003年11月15日よりシャンテシネにてロードショー 2004年05月21日よりビデオリリース

公開初日 2003/11/15

配給会社名 0008

解説


自分の夢がかなう場所がある!
アフガン人の少年がめざす4000マイルの魂をゆさぶる旅

パキスタンの難民キャンプで育ったアフガン人の少年ジャマールと従兄弟のエナヤット。ふたりは故郷を離れ、自分たちの未来のため、遥かなる目的地口ンドンへ旅立つことになった。得体の知れない“人の運び屋”によるその旅は、いつも死の危険と隣り合わせだった。
パキスタンからイラン、トルコ、イタリア、フランスを経由してイギリスまでの4000マイル。旅の途中で、何度もくじけそうになりながら、それでも少年は、決してあきらめない。旅の果てに幸せがあると思っていたから。きっと夢がかなう堺所があることを信じていたから。それは少年の大きな未来と純粋な命を賭けた魂の旅だった!

2003年ベルリン映画祭グランプリ受賞!
若き名匠、マイケル・ウィンターボトム監督の衝撃的な最高傑作が登場

未知の世界へと旅立つアフガンの若き亡命者たち。そのパワフルな生命力を鮮烈な映像に焼きつけてみせたこの衝撃作は、2003年ベルリン映画祭で辛口の批評家たちを熱狂させ、見事、グランプリに輝いた。監督は「ウエルカム・トゥ・サラエボ」や「ひかりのまち」でイギリスの実力派監督として知られるマイケル・ウィンターボトム。ヨーロッパ人でありながらも、アフガン難民のかかえる現実と問題を正面から見据えるリアルな眼差し。これまでのヨーロッパ映画にはなかった「亡命」と「難民」に対する真筆で誠実な姿勢と、その野心的なテーマヘの取り組みによって、ベルリンではピース・フィルム賞、エキュメニック賞も同時受賞。ベルリン3賞を制覇という快挙を成し遂げた。
社会派ドラマ「ウエルカム・トゥ・サラエボ」、イギリス・アカデミー賞候補となった群像劇「ひかりのまち」など、ウィンターボトムのパワフルで緻密な演出カには高い評価があたえられてきたが、今回は現代難民が直面する問題に挑戦し、新境地を切り開いた。この最高傑作と共に、いよいよ21世紀の名匠への道を歩み始めた!

難民のテーマに鋭い光をあてることで、
ひとりの少年の人生までも変えた問題作

ウィンターボトム監督を今回の映画作りへと駆り立てたのは、英国で実際に起きた事件だった。2000年6月にイギリスのドーバー港で、不法に入国を試みた中国人58名の死体がトラックのコンテナの中で発見されるというショッキングな事件が起きたのだ。これを知った監督はイギリスでの移民問題について考え始め、今回の映画に着手。100万人の難民がいるといわれるパキスタンから始まるこの映画は事実を基に撮影され、登場人物も実際に難民キャンプで生まれ育った少年たちが実名のまま出演している。
映画の完成後、主人公ジャマールを演じたジャマール・ウディン・トラビは、映画用に取ったビザを使って実際にロンドンに移民をした。彼の難民保護申請は却下されたが、特例として18歳の誕生日までロンドンで生活することを許された。実話に基づいたこの作品は、ひとりの少年の人生までも変えてしまう大きな影響力を持っていた。
「ジャマールの問題を越え、“移民”に対するネガティブなイメージを、この映画を見ることで、みんなが考え直してくれればうれしい」と語る監督。現在、ヨーロッパのみならず日本人も直面する“難民”“亡命”の問題。ウィンターボトムの力強いメッセージは、この作品を見た人すべてに大きな問いかけを残してくれる。

主人公と同じ目線でドラマを体感!
彼らの五感と共鳴する画期的な映像作り

アフガン人の少年ジャマールと青年エナヤットが体験する未知の旅。イランでは検問所で所持品を取り上げられ、マクーの山を越える時は銃撃戦を覚悟する。そして、映画のクライマックスともいうべきイスタンブールからのコンテナによる危険な船旅。これまで故郷を一歩も出たことのなかったアフガン人の目に映る新世界の風景、その美しさと過酷さ。ウィンターボトム監督の製作意図により彼らの分る言葉しかあえて訳さず、映画を見る観客も、彼らと同じ感覚で旅を体感していくという新しい映像スタイルが展開される。今回のロケに先がけ、監督のウィンターボトムと脚本家のトニー・グリソーニは、実際にパキスタンからロンドンまで“地図のない旅”を実践。そして、今度はジャマールとエナヤットが体験する初めての旅を、ドキュメンタリー映画を超えた“主人公の五感を体感する”という視線で追い続ける、小型のデジタルカメラの力を借りることで、ドキュメンタリーでも、フィクションでもない“新しいジャンル”の映画が誕生したのだ。

ウィンターボトムが才能を見込んだ
才能のコラボレーション

今回の即興を中心とした新しい映画作りのために、監督はベテランと新人のスタッフをバランスよく集結。製作は「ひかりのまち」や「24アワー・パーティ・ピープル」などウィンターボトム映画を製作してきたアンドリュー・イートン。製作総指揮は「ダスト」のクリス・オーティ。脚本は「ラスベガスをやっつけろ」のトニー・グリソーニ。撮影監督は「24アワー・パーティ・ピープル」のカメラ・オペレーターだったマーセル・ザイスキンド。編集は「いつまでも二人で」の編集スタッフだったピーター・クリステリス。音楽はイタリア生まれの新鋭作曲家として注目されるダリオ・マリアネッリ。彼の美しく叙情的なメロディが、時にはセリフ以上に映画を盛り上げる、キャスティング・ディレクターは「24アワーパーティ・ピープル」のウェンディ・プレージントン。15才の少年ジャマールを演じるジャマール・ウディン・トラビと20代の青年エナヤット役のエナヤトゥーラ・ジュマディンは、プレージントンがパキスタンでスカウトしたアマチュアで、彼らが映画に出演するのはこれが初めてだ。

ストーリー


パキスタン北西辺の町、ペシャワール。この地域に住む難民の数は約100万人。彼らは新しい夢を求めて自国を抜け出すことを望み、その大事な命を見ず知らずの密入国業者に託すことになる。
15歳の少年ジャマール(ジャマール・ウディン・トラビ)と彼の従兄弟で20代の青年エナヤット(エナヤトューラ・ジュマディン)も、そんな危険な旅に出ようとしていた。孤児のジャマールはシャムシャトウ難民キャンプで生まれ育ち、レンガ工場で一日一ドルの賃金で働いている。エナヤットはペシャワールの中心部に住み、家族経営の家電販売店で働いていた。ある日、エナヤットの父親が息子の将来のため、親戚のいるロンドンに彼を送り出そうと考える。英語が話せるジャマールも、この旅に同行することになった。
こうして、ふたりは死と隣合わせの危ない旅に出る。ロンドンに自分たちの夢がかなう新しい人生があることを信じて。ふたりは空路より経済的だが、より危険な陸路の旅を選び、出発前に身分証明書と、ある電話番号を受取った。

シャムシャトウ難民キャンプからバスでクエッタヘ

クエッタに到着後、出発前に受取った電話番号に電話をかけると、旅行偽造業者が出てきた。その夜、宿泊所のベッドで、生まれて初めての旅に昂揚しているジャマールは、エナヤットに音楽が生まれた時の話をする。

クエッタからトラックでタフタンヘ、
そこからトラックでイランヘ

クエッタから次の目的地タフタンヘの旅はトラックだった。ひと晩中、旅を続け、途中で別のトラックに乗りかえるが、検間所で止められる。エナヤットは家族から餞別かわりにもらったウォークマンを差し出し、ジャマールをがっかりさせる。ふたりはトラックでタフタンヘと移動する。
そこではファリドという怪しげな旅行業者に会い、イラン国境までトラックで運ばれる。そこで彼らはイラン人のベルーズと出会い、人目につかないよう、新しい服をあたえられる。

軍人にバスを降ろされ、パキスタンへ戻される

イランで10日間待機した後、ふたりはイランからバスに乗ってテヘランへ向おうとした。しかし、検間所でバスが止った時、ふたりは下ろされ、再び軍人たちと共にトラックでパキスタン国境に戻される。

トラックで再びイランへ

その後、タフタンに戻ったふたりは怪しげなエージェントのファリドと再び出会う。彼は再び金を要求する。エナヤットは靴に隠していたドル札を出し、ふたりはトラックでイランにたどりつく。

パスでテヘランへ

その後は、白いバスでテヘランへ向うふたり。疲れきったジャマールとエナヤットは無言のままだった。ぼんやりと窓の外を見つめるふたり。テヘランに到着したのは2002年の4月12日。そこでは大きなアイスクリームをおいしそうにほおばるジャマールだった。

車で国境の村マクーへ

その5日後、ふたりはオレンジの箱に囲まれたトラックに乗り込み、山脈の風景を移動する。マクーの村では優しいクルド人のもてなしを受ける。ジャマールは村の子供たちとサッカーをし、新しいスニーカーをもらい、笑顔と希望を取り戻す。

山を越え、トラックでイスタンブールヘ

ふたりは山を越えて、トルコに行くことになった。危険な山道を銃撃戦から身をかわしながら進み、雪深いトルコについた。そこで子供たちは雪合戦をしている。その後は、羊を積み込まれたトラック、その次は貨物自動車に乗ったふたり。4月29日にイスタンブールに到着する。

フェリーでイタリアのトリエステヘ

イスタンブールでは、金物工場で臨時の仕事を見つけるふたり。仲間たちに囲まれ、つかの間の穏やかな日々を送った。そして、今度は他の移民や難民たちと貨物輸送用コンテナに入り、イタリアのトリエステに移動するのだ。そのコンテナは船に積まれる。しかし、その旅は想像を絶する苦しさで、暑さと酸欠のため、人々は暗闇の中でもがき始める。40時間後、船は目的地に到着する。

フランスのカレー市のサンガト難民キャンプヘ

イタリアでの2週間が過ぎた。ジャマールは、安いブレスレットを売って、毎日をしのいでいたが、ある時、女性のバッグを盗み出し、その金で汽車に乗って、フランスのサンガト難民キャンプに向う。そこでロンドンのレストランで働いていたユシフという男と知り合う。

ユーロトンネルをぬけてロンドンヘ

ジャマールはユシフと友人となり、今では冗談を言ったりする関係だ。6月6日、彼はユシフと共に、ロンドンに向う決心をする。長距議大型トラックの車体の底に身を隠し、ユーロトンネルを抜けて、目的地に向うのだ。最後の旅に挑戦するジャマール。そして、無事、ロンドンに到着したジャマールは、カフェで皿洗いとして働くことになった。彼は神の神職の前で、自分の幸福な未来のために、そっと祈りを捧げていた。

スタッフ

監督:マイケル・ウィンターボトム
脚本:トニー・グリソーニ
製作:アンドリュー・イートン、アニータ・オーバーランド
撮影監督:マルセル・ザイスキンド
サウンドミキサー:スチュアート・ウィルソン
キャスティング:ウエンディ・プレージントン
音楽:ダリオ・マリアネッリ
編集:ビーター・クリステリス
サウンド編集:ヨアキム・サンドストローム
ダヒングミキサー:ティム・アルバン
製作総指揮:クリス・オーティ、デビッド・M・トンプソン
共同製作者:べールーズ・ハシーミアン

キャスト

ジャマール:ジャマール・ウディン・トラピ
エナヤット:エナヤトゥーラ・ジュマディン

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