1982年/中国/カラー/35㎜/シネマスコープ/98分/

1983年11月公開

公開初日 1983/11

解説


 本作は、台湾の女性作家・林海音(1918-2001)の短編小説を上海映画制作所が1982年に映画化したものである。1983年のマニラ映画祭でグランプリを獲得した他、金鶏賞の最優秀監督賞・最優秀助演女優賞・最優秀音楽賞を獲得した。監督・呉貽弓の日本公開作としては本作の他、《孔家の人々》がある。
 林海音は大阪で生まれ、5歳のとき父母に連れられて北京の城南に移り住んだ。それから1948年に台湾に帰るまでを北京で過ごした。本作の原作は、彼女が1960年に台湾で発表した2冊めの短編小説集『城南舊事』の表題作で、故郷の台湾に帰ってから子供時代を過ごした北京を懐かしく想って書いた短編小説である。映画全編に流れる童謡『旅愁』のメロディは懐かしさの感覚をよりいっそう確かなものにしている。

ストーリー

1920年代の北京。古きよき北京の雰囲気が色濃く残る時代だった。今は台湾に住む林英子(リン・インヅ)は、かつて住んだ北京の城南にある胡同(フートン)に遊んだ子供時代を懐かしく想い出していた。そこには物売りがあふれ、ラクダが郊外から出入りし、活気にあふれたところであった。
 北京の城南に住む5歳の英子。彼女の家は比較的裕福だった。家の近くにある惠安会館の前にはいつも秀貞(シゥヂェン)という女がぼうっと佇んでいた。彼女は英子のいいお友達だった。しかし、学生運動に熱心な彼女の恋人は警察に捕まって行方不明になっており、しかも子供までさらわれて彼女は気がふれていた。彼女の子・佳子(ヂアヅ)は養父母に虐待されたため秀貞に保護されていたのだ。秀貞は英子と一緒に佳子の実の親を探すが汽車に轢かれて非業の死を遂げてしまった…。
 ほどなくして別の家に引っ越した英子。学校に上がった彼女は家の近くにある荒れ果てた屋敷に出入りする男と知り合った。弟想いの彼は実はこそ泥。弟を学校にやるための泥棒だったのだ。警察に捕まったその男は目くばせしながら英子の前から消えた。
 林家のお手伝いさんの宋さんには子供がおり、英子の弟と一緒に仲良く遊んでいた。しかしある日、英子が学校から戻ると宋さんが号泣している。子供が溺れ死んだというのだ。失意の彼女は林家から去っていった。
 英子と弟をかわいがってくれた最愛の父親。進歩的学生の良き理解者だった父親も肺ガンを患い逝ってしまった。
 みんな彼女の元から去ってしまった。そして彼女自身、北京から去り、今は懐かしくその時代を想い出している…。

スタッフ

原題:城南旧事
原作:林海音『城南舊事』
監督:呉貽弓(ウー・イーゴン)
改編:伊明(イー・ミン)
撮影:曹威業(ツァオ・ウェイイェ)
製作:上海映画制作所

キャスト

シェン・チエ
ヂェン・シェンヤオ
チャン・ミン
チャン・フォンイー
イェン・シャン
ユェン・ヂアイン

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