原題:Callas Forever

声を失くしたマリア・カラスが復活に賭ける— 永遠に燃え続ける情熱の感動ドラマ!

2002年9月18日フランス初公開

2002年/イタリア・フランス・イギリス・ルーマニア・スペイン合作/ ビスタサイズ/カラー/108分/SRD/サウンドトラック:東芝EMI/ 配給:ギャガ・コミュニケーションズ/協力:東芝デジタルフロンティア

2004年03月17日よりDVD発売開始 2003年7月19日よりシャンテシネほか全国ロードショー

公開初日 2003/07/19

配給会社名 0025

解説


15歳でプロ・デビューを果たし、瞬く間にオペラ界の頂点に登り詰めた天才歌手、マリア・カラス。神に祝福されたソプラノの歌声と、オペラに革命をもたらしたと言われる豊かな表現力で世界を魅了した彼女は、まぎれもなく20世紀最高のディーヴァとして、人々の記憶のなかに生き続けている。そんな彼女の晩年にスポットを当て、華やかな伝説の影に隠された孤高の芸術家魂を浮き彫りにした本作は、著名なオペラ演出家であり、カラスの親しい友人でもあった名匠フランコ・ゼフィレッリが、フィクションの形を借りてカラスの実像に迫った感動のヒューマンドラマだ。
「私は、あの声の背後にいた人物が誰であるかを、あれほどの美しさを我々に与えるために彼女がどれだけの代償を払ったのかをいまの人々に知ってほしかった。我々全員が彼女の美しい声を知っているが、マリア・カラスの真髄はいまだに謎のままだ。彼女は天才だった。前世紀最高の声を持っていた。でもなぜ? 何が彼女を特別の存在にしていたのか? 私は、この映画を通して、マリカ・カラスをマリア・カラスたらしめているものを探求したかったのだ」
ゼフィレッリがそう語るとおり、『カルメン』の映画化の企画に復活のチャンスを見出し、生きる情熱と誇りを取り戻していくカラスの姿をみつめた物語は、妥協を許さない完璧主義に貫かれたディーヴァの生き様と、天才ゆえの苦悩と孤独を鮮やかに浮かび上がらせていく。愛するオナシスもかつての美声も失ったあと、翼をもがれた天使のように、パリのアパルトマンで追憶にひたる引退生活を送っていたカラス。そんな彼女が、友人のプロモーターから持ち込まれた主演映画の撮影にのめりこみ、自分のすべてを注ぎ込もうとする様を、ゼフィレッリは迫力あるタッチで描写。演じる喜びにひたり、まぶしいまでのオーラを放つカラスの美しさ──その一瞬の生の輝きを、映像のなかに封じ込めていく。
なかでも圧巻は、劇中劇として展開する『カルメン』の場面だ。世界一有名なこのオペラは、生前のカラスが一度も舞台で演じたことがなかったもの。それが今回、レコーディングとして残されたカラスの全盛期の歌声と、ゼフィレッリのめくるめく演出、そしてカラス役ファニー・アルダンの渾身の熱演という三位一体を得て、華麗に再現される。カラス・ファン、オペラ・ファンにとって、これ以上のゴージャスな贈り物はないだろう。
このシーンをはじめ、生前のカラスを知る人々を「彼女はカラスを演じているんじゃない、カラスそのものだ」と驚嘆させたファニー・アルダンは、ロマン・ポランスキー演出の舞台『マスター・クラス』でもカラスを演じた経歴の持ち主。歌に生き、恋に生きた女の艶やかさ、ディーヴァのカリスマ性とプライドが全身から滲み出る演技は、まさにブラボーの一語。そんな彼女が劇中で身に纏うのは、カール・ラガーフェルドのデザインによる20点近いシャネルの衣装。そのエレガントな着こなしも大きな話題を呼んでいる。
共演は、カラスを映画で復活させようとする友人のプロモーターに、『運命の逆転』のオスカー俳優ジェレミー・アイアンズ。ふたりの共通の友人で、カラスの身を案じる英国人ジャーナリストに、『ムッソリーニとお茶を』『ジェイン・エア』のジョーン・プローライト。また、カルメンの相手役ドン・ホセに抜擢される新人俳優マルコには、イタリアの新進スター、ガブリエル・ガルコが扮し、ラテンの美形ぶりを光らせる。
スタッフには、ゼフィレッリ監督の強力なこだわりを感じさせるメンバーが集結した。脚本は、『ベント』の原作者として知られる劇作家のマーティン・シャーマン。撮影監督は、カラスの唯一の映画主演作『王女メディア』を手がけているエンニオ・グァルニエル。音楽コンサルタントをつとめるのは、有名なマスタークラスでカラスのピアノ伴奏者をつとめたユージーン・コーン。オペラ界のスーパー・スター、カラスの実像を物語るにふさわしい格調を備えた顔ぶれが、映画の完成度を確かなものにしている。

ストーリー



パリ16区のジョルジュ・マンデル通り。その瀟洒なアパルトマンで、オペラ界の伝説のスター、マリア・カラス(ファニー・アルダン)は、ひっそりと隠遁生活を送っていた。いまは訪れる友人もほとんどいなくなった家で、彼女が耳を傾けるのは、レコードから流れてくる全盛期の自分の歌声。それはいまのカラスにとって、芸術家としての栄光の記録であると同時に、失ってしまったものの大きさを知らしめる残酷な凶器でもあった。
そんなある日、カラスのかつての仕事仲間であり、いまはロック・バンドのプロモーターをするラリー(ジェレミー・アイアンズ)が、アパートを訪ねてくる。彼が持参した1通の企画書。それは、カラスの全盛期の録音を使い、カラス主演のオペラ映画を製作する企画を記したものだった。「私にごまかしを演じろというの!」と、怒るカラス。だが、その胸には、消えかけていた芸術への情熱が蘇ってきた。愛するオナシスを失い、かつての美声も失った自分に、いったい何が残されているというのか? 苦しい胸中をジャーナリストの友人サラ(ジョーン・プローライト)に打ち明けたカラスは、ラリーに連れ出されたスタジオでリップシンクの技術を確かめたあと、映画に出演しようと心を決める。
彼女が自ら提案したのは、レコーディングのみで一度も舞台で演じたことのない『カルメン』の映画化だった。ヒロインの役作りにたちまちのめりこんでいったカラスは、自ら共演者のオーディションに参加したいと申し出て、相手役のドン・ホセにマルコ(ガブリエル・マルコ)を選ぶ。さらにリハーサルでは、監督やダンサーが音を上げるほどの熱心さでステップの練習に打ち込んだ。「マリア・カラスと仕事をするなら、昼夜ぶっ通しでやるのよ。完璧でなきゃダメ」。頭をそらし、そう言い放つ彼女は、まぎれもなく20世紀最高のディーヴァの輝きを取り戻していた。その誇り高い姿に、強烈な憧れをつのらせるマルコ。しかし、それが愛ではないことを見抜いたカラスは、楽屋でキスを迫る彼を、「私たちは仕事だけの関係」と優しく諭す。
『カルメン』のテスト試写の日。豊かな表現力で情熱の女になりきり、圧倒的な存在感を見せつけたカラスの名演に、観客は熱狂的な拍手を贈った。劇場を揺るがす「ブラボー!」の歓声。だが、当のカラスは複雑な思いにかられていた。いくら自分自身の声とはいえ、演技と歌の合成で作られたこの映画の成功は、本物ではない。そう感じた彼女は、『椿姫』を2作目のオペラ映画にしたいと言うラリーに、ある提案をする。それは、『トスカ』をいまの自分自身の声で歌うことだった。「『トスカ』なら歌える気がする。今日を生きるカラスの復活よ。まだ声が出るかどうかを確かめたいの」
いまあらためて創造の喜びにめざめ、自分自身の魂を再発見したカラス。彼女の新たな挑戦が始まるかに見えたが……。

スタッフ

監督・脚本:フランコ・ゼフィレッリ
脚本:マーティン・シャーマン
撮影:エンニオ・グァルニエル
音楽コンサルタント:ユージーン・コーン
衣装:カール・ラガーフェルド(シャネル)
製作:ジョヴァンネッラ・ザンノーニ、リカルド・トッツィ

キャスト

マリア・カラス:ファニー・アルダン
ラリー・ケリー:ジェレミー・アイアンズ
サラ・ケラー:ジョーン・プローライト
マイケル:ジェイ・ローダン
マルコ:ガブリエル・ガルコ

LINK

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