生きているのは、おとなだけですか。

2004年カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品作品 2004年カンヌ国際映画祭 最優秀男優賞受賞

2004/日本/141分/カラー 配給:シネカノン

2005年03月11日よりビデオレンタル開始 2005年03月11日よりDVDリリース 2004年8月7日(土)よりシネカノン有楽町にてロードショー 2004年、夏休み 渋谷シネアミューズほかにてロードショー

© 2004 『誰も知らない』 制作委員会

サブ題名 Nobody knows

公開初日 2004/08/07

配給会社名 0034

解説


<子供たちの心の叫びが胸に突き刺さる>
『ワンダフルライフ(99)・『ディスタンス』(01)に続く是枝裕和(監督/脚本/編集)の最新作は、88年に実際に起こった事件をモチーフに、東京という街で暮らす子供たちに起こる出来事を彼らの目線に寄り添いながら精緻に描写している.初めて脚本が書かれたのはまだ劇映画デビュー以前の89年。その後何度も手が加えられ、着想から15年の歳月を経て遂に完成した作品だ。その間に世の中では少年に関わる様々な事件が起こり、幼児虐待の問題も毎日のように取り沙汰されるようになってきた。『誰も知らない』はそのよう現代的なテーマを持ちながらも、いつの時代にも共通する普遍的な子供たちの内面世界を描いている。
母親に捨てられるという過酷な運命に巻き込まれながら、それでも4人の子供は自分たちだけの小さな世界で、自分たちだけのルールに従ってたくましく生きて行く。しかし、かろうじてバランスを保っていた彼らの世界は、外の世界との接触によって、だんだんと崩れてゆく。母を想う無垢な心、外の世界に対する憧れと葛藤、そして次第に苦しくなってゆく生活に対する焦燥感。子供たちの言葉にできない心の叫びは、観る者の胸に突き刺さり、知恵と勇気を振り絞って助け合いながら精一杯毎日を生きる彼らの姿は、深い感動を呼び起こすだろう。

<是枝作品の集大成にして最高傑作>
撮影は、02年の秋から03年の夏まで四季を通して行われ、季節毎に編集し、その度に次の季節の構想を練るという作業が繰り返された.オーディションによって集められた演技経験のない子供たちとコミュニケーションを重ねながら、独特の演出によって彼らの姿をフィルムに焼き付けてゆく。そこには物語と共に、演技を超越したリアルな子供たちの成長が確かに刻まれている。過去の作品でもドキュメンタリー的手法を劇映画に取り入れてきた是枝監督だが、これ程までに二つの境界線を軽々と行き来して・何の違和感もなく見事に融合させた作品はなかっただろう。
子供たちの感情は彼らの手の表情やマニキュア、ピアノ、キユッキュサンダル、カップラーメン、アポロチョコといったディテールの積み重ねによって表現され、2DKのアパートで繰り広げられる密室劇をある時は情感豊かに、ある時はスリリングに描き出す。それは、このような特殊な環境に生きる子供だけでなく、幼い頃誰しもが経験したであろう楽しくて甘い記憶や、切ない感情を観る者の心にも呼び起こす。そしてカメラは子供たちに寄り添うように存在し、温かいまなざしを向けながらもそれと同時に子供たちを取り囲み呑み込んでゆく社会にも厳しい視線を投げかける。これは監督自ら「この作品を撮らないことには、先に進めない」と語る、是枝作品の集大成にしてひとつの到達点”最高傑作と言えるだろう。
キャストは5人のフレッシュな子供達の他に、母親役でバラエティ番組などで活躍中のYOUが本格的に映画初出演、その独特の存在感で強い印象を残す他、加瀬亮、寺島進、遠藤憲一、平泉成など実力派の俳優陣がしっかりと脇を固めている。
また、『無能の人』で日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞した人気デュオのゴンチチが、ギターとウクレレだけのシンプルだが心に残るスコアを映画のために書き下ろし、新人タテタカコ(コンビニの店員として出演もしている)の「宝石」が挿入歌として、まるで主人公の心情を映し出すかのように歌われているのにも注目である。

ストーリー



秋。トラックからアパートに荷物が運び込まれてゆく。
引っ越してきたのは母の福島けい子と明、京子、茂、ゆきの4人の子供たち。しかし、茂とゆきはトランクの中に隠れたままアパートの階段を昇った。大家には父親が海外赴任中のため母と長男の明だけの二人暮らしだと嘘をついていたからだ。母子家庭で子供が4人もいることが知れると、この家もまた追い出されかねない。その夜の食卓で母は子供たちに「大きな声で騒がない」「ベランダや外に出ない」という新しい家でのルールを言い聞かせた。
子供たちの父親はみな別々で、学校に通ったこともない。
それでも母がデパートで働き、12歳の明が母親代わりに家事をすることで、家族5人は彼らなりに幸せな毎日をすごしていた。そんなある日、母は明に「今、好きな人がいるの」と告げる。今度こそ結婚することになれば、もっと大きな家にみんな一緒に住んで、学校にも行けるようになるから、と。明は母のその言葉を複雑な表情で聞く。
ある晩遅くに酔って帰ってきた母は「明のお父さんは羽田の空港で働いていたんだよ。京子のお父さんは…」と、それぞれの父親の話を始める。寝ているところを起こされた子供たちも、楽しそうな母親の様子に自然と顔がほころんでゆく。
しかし、翌朝明が目覚めると母の姿は消えていて、かわりに20万円の現金と「お母さんはしばらく留守にします。京子、茂、ゆきをよろしくね」と記されたメモが残されていた。
この日から、誰にも知られることのない4人の子供たちだけの,“漂流生活”が始まった…。

スタッフ

監督・脚本・編集:是枝裕和
製作:テレビマンユニオン
音楽:ゴンチチ

キャスト

柳楽優弥
北浦愛
木村飛影
清水萌々子
韓 英恵
YOU
串田和美
岡元夕紀子
加瀬亮
タテタカコ
木村祐一
遠藤憲一
寺島 進

LINK

□公式サイト
□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す
http://www.kore-eda.com
ご覧になるには Media Player が必要となります