原題:Resurrezione

2001年/イタリア・フランス・ドイツ/カラー/187分/ヴィスタサイズ/ドルビー 配給:アルシネテラン

2003年11月8日より有楽町スバル座、新宿武蔵野館にてロードショー公開

公開初日 2003/11/08

配給会社名 0013

解説



『復活』は、世界文学の巨匠とも言えるロシアの文豪トルストイ(1828-1910)の晩年の作品である。すでに『アンナ・カレーニナ』、『戦争と平和』という傑作によって名声を手に入れ、さらには簡易生活・無抵抗・博愛を唱え、精神界にまで大きな影響を及ぼすようになった1889年から1899年までのlO年の歳月を費やして執筆された。原作は、彼の友人であるA・F・コーニから聞いた実際に起きた事件にヒントを得ており、若き将校ネフリュードフと召使いカチューシャの恋物語は、トルストイ作品の中でもとりわけ最高の悲恋物語として世界中の人々に今なお愛され続けている。日本で『復活』といえば、堅いロシア文学のイメージというより、かつて芸術座の「復活」公演で唄われた「カチューシャ可愛いや〜別れのつらさ〜」のメロディーで多くの人々に親しまれている。
今回、そんな大作の映画化に挑んだのは、『太陽は夜も輝く』(90)で、同じトルストイ作品である「神父セルゲイ」の映画化に成功したイタリアの巨匠パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ兄弟である。溢れる斬新なユーモアと、はつらつとした人間描写、ダイナミックでドラマティックな音楽と映像美で、すでに日本にも数多くのファンを持つタヴィアーニ兄弟の描く本作品は、昨年度のモスクワ国際映画祭でも並み居る作品を圧倒し、見事グランプリを獲得した。カンヌ国際映画祭グランプリと国際映画批評家大賞のダブル受賞という快挙を成し遂げた日本での第1回公開作品『父/パードレ・パドローネ』(77)以来、戦争の感じ方・考え方を本質的に捉えたアカデミー外国賞ノミネート&カンヌ国際映画祭審査員特別大賞受賞作品『サン★ロレンツォの夜』(82)、シチリアの大地に生きる人々の感情の輝きを叙事詩的に謳い上げた『カオス・シチリア物語』(84)、イタリア職人気質をユーモラスに人間味溢れる愛で描き上げた『グッドモーニング・バビロン!』(87)など、傑作を挙げるときりがない。
また、彼らの流麗な映像を一層盛上げるのが、『サン★ロレンツォの夜』以来、彼らの音楽を担当しているN・ピオヴァーニである。ロベルト・ベニーニ監督の『ライフ・イズ・ビューティフル』(98)での軽やかなメロディーで人々の心を魅了し、もはや映画界になくてはならない存在である彼が、今回『復活』で使用したのは、シベリアの壮大感を音で物語るオリジナル曲と、ショパンの『革命』、そしてチャイコフスキーの『くるみ割り人形』(花のワルツ)である。世紀の転換を描くに相応しいメロディーがシベリアの大地に重なり、タヴィアーニ兄弟の特徴でもある地と時代に根付く鮮烈な物語が幕を開ける。

ストーリー


裁判官に陪審員として呼び出されたネフリュードフは、目の前に現われた殺人の罪を問われた娼婦をみて驚愕した。かつて、恋をし、欲望のままに関係を持ち、やがて自分の輝かしいキャリアの為に見捨てたカチューシャであると気づいたのである。カチューシャの罪状は、窃盗・毒殺であったが、その罪は明らかに無実であった。利用されただけだったのである。しかし、裁判の手続き上の不備から、彼女にシベリア徒刑が宣言される。自らの過去が明らかになることを恐れて、彼女を擁護することが出来ずにいるネフリュードフは、ただ黙っていることしか出来ないでいた。
7年という歳月は、カチューシャの姿をすっかり変えてしまっていた。二人が出会った大学3年の夏、ネフリュードフは叔母の家で、養女とも召使いともつかぬ瞳のきびきびとした少女に恋をした。彼女もまた、純真で献身的なネフリュードフに魅了された。二人は鬼ごっこをしたり、本を読んだりしてひと夏を一緒に過ごした。それは、純真な青年と乙女のひと夏の恋だった。それから3年後、二人は再会した。ネフリュードフは輝かしい未来を目前に、すっかり一人前の男に成長していた。人々が祝いあう復活祭の夜、自分の欲望を押さえきれなくなったネフリュードフは、カチューシャを誘惑し、関係を結ぶと、翌朝100ルーブルを握らせて旅立ってしまう。彼のことを愛し、そして同じように愛されていると信じていたカチューシャは、すっかり傷ついてしまう。
今、目の前にいる娼婦にまで落ちぶれたカチューシャの転落した原因が自分にあり、その罪の深さを悟ったネフリュードフは、自らが犯した過ちに対する自責の念からいてもたってもいられなくなり、全ての地位と財産を捨て、あらゆる手段を尽くして彼女を救おうとする。そして、贖罪の念から、彼女に結婚を申し込む。彼が自分を愛していないことを知っているカチューシャだったが、結婚を断られてもなお、シベリアまで追いかけてくるネフリュードフの献身的な愛情に次第に心を開くようになる。カチューシャはネフリュードフのことを愛していた。しかし、自分との結婚が、若くて輝かしいキャリアをもつ彼の人生を台無しにしてしまうと同時に、彼の愛が自分を愛してくれている真実の愛ではなく、良心の呵責からくる使命感・自責の念であることを十分理解していた。
ネフリュードフの力の甲斐もあり、カチューシャに判決取り消しの特赦が下りる。自由の身となるその時、カチューシャは囚人仲間で、あるがままの自分を受け入れてくれる政治犯シモンソンとの結婚を決意する。カチューシャは、二人でネフリュードフの前から立ち去ることで、彼を贖罪の使命感から解放出来ると考えたのだった。
やがて、ネフリュードフを一人残し、囚人達を乗せたシベリア行きの列車が出発し始める。20世紀を迎えようとするその時、二人は別々の人生を歩み出そうとしていた—。

スタッフ

監督・脚本:パオロ・タヴィアーニ、ヴィットリオ・タヴィアーニ
原作:レオ・トルストイ『復活』(新潮文庫刊)
撮影:フランコ・ディ・ジャコモ 
編集:ロベルト・ペルピニャーニ
音楽:ニコラ・ピオヴァーニ
美術:ロレンツォ・バラルディ
衣装:リーナ・ネルリ・タヴィアーニ
助監督:ミンモラ・ジロージ
カメラ:フランコ・ブルーニ
配役:口ベルタ・マンフレーディ
キャスティング:ミッモラ・ジロージ
製作主任:グイド・シモネッティ
製作(RAI):チェチーリア・コーぺ、エリカ・ペッレグリーニ
製作総指揮:クラウディオ・グラセッティ、アントーニオ・フェッレーロ
製作:グラーツィア・ヴォルピ

キャスト

カチューシャ:ステファニア・ロッカ
ネフリュードフ:ティモシー・ピーチ
ミッシイ:マリー・ボイマー
マリエット:セシール・ボワ
老女公:マリナ・ヴラディ
シモンソン:ジュリオ・スカルパティ
ヴェーラ:アントネッラ・ポンツィアーニ
エヴァ・クリスティアン
ソーニャ・ゲスナー
ジューリア・ラッツァリーニ
ミケーレ・メレガ
ヴァーニャ・ヴィレール

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