わたしは、どうして 彼女たちを抱きしめたいのだろう?

2003年/日本 配給:SPACE SHOWER PICTURES+スローラーナー

2003年9月27日よりテアトル新宿にてレイトショー!

(c)2003 SEP

公開初日 2003/09/27

配給会社名 0390/0048

解説



あなたは「今、幸せ?」と聞かれたら何と答えますか?
そんなに幸せでもない、でも不幸せでもない。そんな女性たちに捧げる映画です。
若い頃のように勢いだけでは前に進めず、かといって人生経験はまだまだ不足していて、自分に自信が持てるまでには至っていない。「自分の居場所」、「存在理由」を探し求めて逡巡している女性たちの背中を、そっと押してくれるような映画が完成しました。この映画に描かれるヒロインたちは切ない想いを抱えて立ちすくんでいます。それでも彼女たちは、やがて新しい「出会い」や誰かの言った何気ない「ひとこと」、そんな些細なきっかけで新たな一歩を踏み出すことになります。そんな彼女たちの凛とした姿はわたしたちに力を与えてくれます。「アイノカラダ」とは“愛する体”でも“愛される体”でもなく“愛に溢れた体”のことを意味します。この言葉には“愛に溢れた体”を持とうよ、自分を慈しもうよ、という監督のメッセージが込められています。

この映画に主演する6人の女優たちは、まさに迷いのただ中にいる女性たち。
そんな女優たちを優しく厳しい目線で見つめ、「リアルな女性の物語」を創り上げた村上なほ監督。
まさに迷いのただ中にいる6人の女優たちと、監督との出会いからこの映画の企画はスタートしました。これが初監督となる村上なほは、女優ひとりひとりに自分自身のことを綴らせ、何度も話し合いをし、彼女たちから引きだしたエピソードと監督自身の過去の経験を織り交ぜて「リアルな女性」の物語の原型を編み出していきました。そして同性ならではの優しく厳しい目線で女優たちを見つめ、作品を創りあげていました。劇中での役柄の成長と「女優たち」の成長の軌跡が重なりあうことで、この作品はよりリアルな女性の物語として成立しています。女優たちの成長を監督とともに見守り、沢山の写真を撮りおろしたのは新進気鋭の写真家、戸崎美和。これまで“女”“性”をテーマにした写真を撮り続けてきた戸崎にとっても、彼女たちの表情の変化は驚きに値するものだったようです。

映画に広がりと奥行きを与える役者たち、女性たちを優しく包みこむように響く久保田利伸の音楽。
主演女優たちの脇を固めるのは、日本を代表する俳優夏八木勲、個性派女優鷲尾いさ子、現在人気沸騰中の成宮寛貴、名バイプレイヤー戸田昌宏、光石研、水橋研二ほかの豪華かつ個性的な面々。彼らの演技が映画に広がりと奥行きを与えています。また、ミュージシャン久保田利伸が企画段階からこの映画のコンセプトに賛同し、楽曲を提供していることも話題です。その歌声は、道に迷った女性たちの“ココロ”と“カラダ”を優しく包みこむように響くことでしょう。

ストーリー


映画『アイノカラダ』は、痛みや悩みを抱え、生きることに迷いながらも自らの輪郭を自らの手で掴み直そうとする女性たちの5つのストーリーで綴られます。5つのストーリーは、微妙にからみ合いながら、一本の映画を紡ぎだして行きます。

『Find‐er』 触りたい 今の自分を抜け出していつか出会えるはずの世界に
カメラマンのミズキは戸惑っていた。それは、取材に訪れた画廊のオーナーに、今、自分が抱えている“思い”を言い当てられてしまったからかもしれない。
「仕事で撮る写真なんてニセモノだと思ってるんじゃないかね。単なる取材カメラマンで終わりたくない。いつか本物の写真を撮ってみせると思ってる。でも、現実には迷っている。ノウハウは身についたものの、何を撮っても自分の写真にはならない。それを認めるのが嫌で無理矢理シャッターを押してみるが、納得できない…そんな感じだね」何も展示されていない空っぽの画廊。オーナーは、次の取材日までに「君がシャッターを切るのにふさわしい瞬間」を撮ってこれたら、この画廊に展示しようと言って、あと1枚だけ撮れるフィルムをミズキに手渡した。わたしは世界に触りたいんだ、でも・・・。何にカメラを向けてもシャッターを押せないミズキ。タイムリミットはあと二日。「自分にしか撮れない写真」を彼女は撮れるだろうか?

『錆びた指紋』 助けてと小さな部屋で声もなく叫ぶわたしを誰も知らない
「すいません。また逃げられちゃいました」
キヨリは、不動産会社に勤めている。三ヶ月空家になったままのマンションの部屋にお客を案内したのだが、また契約が取れなかったのだ。マンションのベランダには干涸びた金魚の死体があった。
上司の嫌味。自分から逃げ出した恋人。キヨリの手には無数の自傷の傷跡があった。
いつしか、空家のままになったマンションの部屋は彼女の隠れ家のようになっていた。だから、入居を申し込む人には、「今別の手付けが入った」と断ってきたし、干涸びた金魚もそのままにしておいたのだ。ところが、新しいお客の萩原は、「わざわざ残しておいたんですよね」と手のひらに金魚をのせて笑った。それから、この部屋がすごく気に入ったとも。「ね、金魚の餌ってどこで買えばいいのかな?」そんな萩原の言葉を聞いて、キヨリは・・・。

『耳鳴りのカケラ』 価値のある美しい女を探す 眺め続けた鏡の中に
「あんたは気付いてないんだ。周囲からどう見られているか。みんなあんたを笑ってる」
マネージャーの修二は、そう言い放った。メグミは、芸能界で生きてきた。生きてきたつもりだった。もう30才を目前にしているけれど、今もプロデューサーに媚びて役を貰ったところだった。
でも、修二は言う。「毎日鏡見てて、自分が見えてないのか。ダイエットし過ぎて、顔つきは幽霊そのもの。点滴打ち過ぎて腕はシャブ中みたいに穴だらけじゃないか」絆創膏が貼られたメグミの左腕。黒ずんだ点滴の跡。蒼白な顔。「何が女優だ。笑わせンな!」修二は、そう叫んだ後、何を言っても返事のないメグミの様子を見に彼女が化粧をしているはずのトイレに入ったが・・・。

『香ばしい雫』 セーラムの箱をつぶして立ち上がる 悩みがないなんて言わないけど
「珍しいんじゃないの、あんたが本番中に足を捻るなんて」
電話の向こうから友人のヨウコは、サオリに言った。サオリはダンサーだった。その日のイヴェントも誰にも怪我に気付かれずに踊ることができた。怪我をしても平気で踊れる。酒も強いし、貯金もあるし、男だって簡単に追い出しちゃうし…。
「ね、あんたホントに弱点ってないの?」とヨウコは聞く。でも、サオリにも悩みがないわけではない。ふと眼にした雑誌で、かつてのダンスの生徒ハルカがソリストとして評価されている。追い出した男は帰ってきた。「話せるなら俺に話してみなよ」と男は妙に優しいことを言う。「いいの。全然大したことじゃないから」遠い目をしてサオリは呟いた。

『光の舌触り』 この恋を選んだふたりを信じてる つないだ指が冷たい夜も
ミノリとカオリは一緒に暮らしているカップルだ。スポンサーのバックアップで陸上競技の選手を続けているミノリは、自分たちのことがスポンサーに知れてしまうのを恐れ、ひそかに家を出ようとしていた。でもカオリはそのことに感づいていた。「カオリのこと嫌いになったわけじゃないし、いつでも会えるじゃない。」と言うミノリ。「四六時中側にいて欲しいって言ってる訳じゃないの、ただ手を伸ばせば触れるところにいて欲しいだけ。」とカオリはミノリに自分の思いをぶつけた。冷蔵庫には、二人の写真が貼ってある。カメラを自分たちに向けてシャッターを押したから、どの写真もピントがずれたり、ハレーションをおこしたりしている。「こんな写真ばっかりじゃない。あたしたちの写真誰かに撮ってもらったことある?・・・あたしたちのこと、ほんとに知られちゃまずいことなのかな。」と嘆くカオリ。すれ違っていく二人の想いは何処にいくのだろう。

スタッフ

監督:村上なほ
エグゼクティブ・プロデューサー:案納俊昭 
プロデューサー:長谷川真澄、齋藤寛朗 
企画協力:松井俊之、永田恵介 
キャスティングプロデューサー:狩野善則

音楽:久保田利伸
写真:戸?美和
短歌:佐藤真由美
 
脚本:木田紀生、望月武 
撮影:藤本信成 
VE:関口明 
照明:和田雄二 
録音:鶴巻仁 
装飾:関口三千代 
編集:原正之 
助監督:阿部満良
制作担当:山邊博文
撮影機材協力:シネアルタ

エンディングテーマ:“Free your Soul” 作詞/作曲/歌/久保田利伸(SME Records)

キャスト

ミズキ:菅野美寿紀
キヨリ:宮前希依 
メグミ:きいちめぐみ 
サオリ:北川さおり
カオリ:小野香織 
ミノリ:佐藤美乃利

萩原:成宮寛貴
小柴:光石研
原田:戸田昌宏 
杉本:田中哲司
田島:春海四方
古田:小市慢太郎  
広田:水橋研二

ヨウコ:鷲尾いさ子
オーナー:夏八木勲

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