原題:Soigne ton gauche

1936年/フランス/モノクロ/12分 配給:ザジフィルムズ→日本コロムビア

2014年4月19日公開 ぼくたちの伯父さん ジャック・タチ フィルム・フェスティバル 2003年7月26日よりヴァージンシネマズ六本木にてロードショー

公開初日 2003/07/26

配給会社名 0089

解説


ぼくたちの伯父さん
ジャック・タチ フィルム・フェスティバル

没後20周年を迎えた2002年、カンヌ国際映画祭やフランス映画祭横浜でオマージュを捧げられた、監督/脚本家/俳優のジャック・タチ。パントマイム芸人出身のタチは、ヨレヨレの帽子に丈の短いコート、パイプをくわえて前のめりに歩く“ぼくの伯父さん”のユロ氏という映画史に残るキャラクターを生み出した。ユロ氏独特のナンセンス・ギャグと酒脱な作風は一世を風扉し、世界中で愛され続けている。
アメリカ・モダニズムの影響を受けたタチのセンスはクールで新しく、その世界観は今も映画のみならず最先端の建築/インテリア、美術、音楽、サブカルチャーに大きな形響を与えている。
存在感が希苅で正体不明の不思議なユロ氏のキャラクター。超モダンなハイテク住宅やユーモラスな魚の噴水。ガラス張りの空間や窓などで作り上げた偏し絵のギャグ。ラウンジブームを先取りしたノスタルジックで軽快な音楽、映像と音のずれによって生み出されるオフビート感。これらは一度目にしたり、耳にしたりしたら決して忘れられないものだ。ピエール・エテックスによるシンブルでキュートなポスターデザインも、タチのハイセンスなイメージを確立するのに大きな役割を果たした。日常に潜む人間の可笑しさを描き、きらりと光るおしゃれ感を漂わせて、現代人の触覚をも震えさせる要素を満載する万華鏡ワールド、それがジャック・タチの世界だ。
タチはヌーヴェルヴァーグの映画作家たちにも愛された。フランソワ・トリュフォーは批評家時代、有名な論文「フランス映画のある種の傾向」の中で、タチの『ぼくの伯父さんの休暇』を“作家の映画”としてロベール・ブレッソンの『田舎司祭の日記』と並び絶賛した。1967年、『プレイタイム』が批評家たちに酷評されたとき、憤慨したトリュフォーはタチ宛に熱い支持表明の書簡を送った。さらにトリュフォーは、70年の監督作『家庭』の中で、ユロ氏を登場させた。またタチと同じくアメリカ・モダニズムに影響を受けたゴダールは、自作『右側に気をつけろ』で、タチの『左側に気をつけろ』にオマージュを捧げている。なお、タルコフスキーの遺作『サクリファイス』の冒頭、子供が郵便配達の自転車を木に結び付け、郵便配達が転びそうになるシーンは、タチが生んだ人気キャラクター、郵便配達フランソワを意識したものだ。日本でも、『男はつらいよ』の車寅次郎のキャラクターはユロ氏に多大な影響を受けており、『ぼくの伯父さん』と副題がついたエピソードもある。
日常を淡々と描きながらも現代文明を鋭く批評し、時代を先取りしたタチの世界は、カンヌでの回顧上映をきっかけに再評価された。散逸していた幻の超大作『プレイタイム』のプリントは、ファッションデザイナーのアニエス・べーの協力の下、デジタル修復と音声トラックが録音し直されて一般公開された。
パリ、シャイヨー宮にあるシネマテークでの上映に際しては、ソワレにてタチの親戚で人気演出家のジェローム・デシャン一座によるパフォーマンスと舞踏会が行われ、連日満員札止めの大盛況となった。タチの映画のサウンドトラックや音源をサンプリングしたDJ、Mr.Untelによるりミックス盤は人気を呼び、この音楽に合わせて踊るというイベントも、公開期間中に開催されて若い人々の間でもタチ人気が沸騰した。
さらに、作品に表れるユニークな建築デザインにスポットを当てた展覧会の開催、研究本の出版など関連したイベントは数知れず。フランス映画祭横浜2002でもタチヘのオマージュとして『ぼくの伯父さん』の上映が行われ、ジェローム・デシャンとパートナーのマーシャ・マケイエフが来日したことも記憶に新しい。タチブームに沸いたパリの熱気をそのままに2003年初夏、“ぼくたちの伯父さん”ユロ氏のぴょこぴょこ歩く姿が、ニュープリントで蘇る。

ストーリー

農家の作男ロジェ(タチ)が、隣でやっているプロ・ボクサーの相手をすることになるが、ボクシングを知らない彼は、フェンシグやニワトリのまねをして対抗するといった珍騒動を描いた喜劇。ミュージック・ホールの映画を撮ろうとしていた記録映画のカメラマン、ルネ・クレマンが、タチと意気投合して撮り上げた監督第一作。製作資金を作るためにタチはミュージック・ホールで働きまくって困難の末、完成させた。監督作ではないが、タチの主演・脚本で、スポーツのパントマイム芸、田舎の風景、素人役者、少年、タチ的郵便配達の原型となる人物の登場など、戦後の作品につながる要素が多々あることも注目される。またジャン・イアトーヴの軽快な音楽は、『のんき大将』にいたるタチの映画を画面と連動して活気づけることになる。知られざる作品だったが、ゴダールの『右側に気をつけろ』(86)によってオマージュが捧げられ、公開されることになった幸運な作品。

エスクァイアマガジンジャパン刊 『E/Mブックス4:ジャック・タチ』より

スタッフ

製作:フレッド・オラン(キャディ・フィルム)
監督:ルネ・クレマン
脚本:ジャック・タチ
台詞:ジャン=マリー・ユアール
音楽:ジャン・イアトーヴ

キャスト

ジャック・タチ
マックス・マルテル
J・オーレル

LINK

□公式サイト
□IMDb
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http://www.zaziefilms.com/tati/index.html
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