原題:L' École des facteurs

1947年/フランス/モノクロ/13分 配給:ザジフィルムズ

2014年4月26日公開 ぼくたちの伯父さん ジャック・タチ フィルム・フェスティバル 2003年7月26日よりヴァージンシネマズ六本木にてロードショー

公開初日 2003/07/26

配給会社名 0089

解説


ぼくたちの伯父さん
ジャック・タチ フィルム・フェスティバル

没後20周年を迎えた2002年、カンヌ国際映画祭やフランス映画祭横浜でオマージュを捧げられた、監督/脚本家/俳優のジャック・タチ。パントマイム芸人出身のタチは、ヨレヨレの帽子に丈の短いコート、パイプをくわえて前のめりに歩く“ぼくの伯父さん”のユロ氏という映画史に残るキャラクターを生み出した。ユロ氏独特のナンセンス・ギャグと酒脱な作風は一世を風扉し、世界中で愛され続けている。
アメリカ・モダニズムの影響を受けたタチのセンスはクールで新しく、その世界観は今も映画のみならず最先端の建築/インテリア、美術、音楽、サブカルチャーに大きな形響を与えている。
存在感が希苅で正体不明の不思議なユロ氏のキャラクター。超モダンなハイテク住宅やユーモラスな魚の噴水。ガラス張りの空間や窓などで作り上げた偏し絵のギャグ。ラウンジブームを先取りしたノスタルジックで軽快な音楽、映像と音のずれによって生み出されるオフビート感。これらは一度目にしたり、耳にしたりしたら決して忘れられないものだ。ピエール・エテックスによるシンブルでキュートなポスターデザインも、タチのハイセンスなイメージを確立するのに大きな役割を果たした。日常に潜む人間の可笑しさを描き、きらりと光るおしゃれ感を漂わせて、現代人の触覚をも震えさせる要素を満載する万華鏡ワールド、それがジャック・タチの世界だ。
タチはヌーヴェルヴァーグの映画作家たちにも愛された。フランソワ・トリュフォーは批評家時代、有名な論文「フランス映画のある種の傾向」の中で、タチの『ぼくの伯父さんの休暇』を“作家の映画”としてロベール・ブレッソンの『田舎司祭の日記』と並び絶賛した。1967年、『プレイタイム』が批評家たちに酷評されたとき、憤慨したトリュフォーはタチ宛に熱い支持表明の書簡を送った。さらにトリュフォーは、70年の監督作『家庭』の中で、ユロ氏を登場させた。またタチと同じくアメリカ・モダニズムに影響を受けたゴダールは、自作『右側に気をつけろ』で、タチの『左側に気をつけろ』にオマージュを捧げている。なお、タルコフスキーの遺作『サクリファイス』の冒頭、子供が郵便配達の自転車を木に結び付け、郵便配達が転びそうになるシーンは、タチが生んだ人気キャラクター、郵便配達フランソワを意識したものだ。日本でも、『男はつらいよ』の車寅次郎のキャラクターはユロ氏に多大な影響を受けており、『ぼくの伯父さん』と副題がついたエピソードもある。
日常を淡々と描きながらも現代文明を鋭く批評し、時代を先取りしたタチの世界は、カンヌでの回顧上映をきっかけに再評価された。散逸していた幻の超大作『プレイタイム』のプリントは、ファッションデザイナーのアニエス・べーの協力の下、デジタル修復と音声トラックが録音し直されて一般公開された。
パリ、シャイヨー宮にあるシネマテークでの上映に際しては、ソワレにてタチの親戚で人気演出家のジェローム・デシャン一座によるパフォーマンスと舞踏会が行われ、連日満員札止めの大盛況となった。タチの映画のサウンドトラックや音源をサンプリングしたDJ、Mr.Untelによるりミックス盤は人気を呼び、この音楽に合わせて踊るというイベントも、公開期間中に開催されて若い人々の間でもタチ人気が沸騰した。
さらに、作品に表れるユニークな建築デザインにスポットを当てた展覧会の開催、研究本の出版など関連したイベントは数知れず。フランス映画祭横浜2002でもタチヘのオマージュとして『ぼくの伯父さん』の上映が行われ、ジェローム・デシャンとパートナーのマーシャ・マケイエフが来日したことも記憶に新しい。タチブームに沸いたパリの熱気をそのままに2003年初夏、“ぼくたちの伯父さん”ユロ氏のぴょこぴょこ歩く姿が、ニュープリントで蘇る。

ストーリー

郵便配達の学校で訓練を受けた、タチ演じるフランソワが、所定の時刻までに航空便に間に合うべく、スピード郵便配達の実行することから生じるドタバタ模様を快調に描く。クレマンが撮る予定だったが『鉄路の闘い』(45)の準備のため、監督をタチに譲ったという。タチの監督デビュー作であり、アメリカの無声喜劇を自家薬篭中のものとした非フランス的センスは、マックセネットの短篇に匹敵すると賞賛される。郵便配達のギャグは、ほぼそのまま次の長篇『のんき大将』の中で反復されている。実際に、いくつかの画面は、本作のフィルムが再使用されている。しかし、冒頭の学校のシーンとラストの飛行場のシーンは、他では見られぬものだ。後者は『ほくの伯父さん』や『プレイタイム』の飛行場の先駆けとも見倣せよう。なお、カフェのダンスのシーンでは、44年にタチと結婚した夫人のミシェリーヌが、フランソワとともにジルバやブギウギを踊っている若々しい姿を見ることができる。

エスクァイアマガジンジャパン刊 『E/Mブックス4:ジャック・タチ』より

スタッフ

製作:フレッド・オラン(キャディ・フィルム)
監督:ジャック・タチ
脚本:ジャック・タチ
撮影:ルイ・フェリックス
編集:マルセル・モロー
音楽:ジャン・イアトーヴ

キャスト

郵便配達フランソワ:ジャック・タチ
郵便配達長:ボール・ドゥマンジュ

LINK

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□IMDb
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http://www.zaziefilms.com/tati/index.html
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