原題:Il Più bel giorno della mia vita

2002年/イタリア/

2003年4月27日〜29日、5月3日〜5日まで有楽町・朝日ホールにて上映

公開初日 2003/04/27

公開終了日 2003/05/05

配給会社名 0364

解説


スザンナ・タマーロ原作『心のおもむくままに』(1996)で三代に渡る女性の心の機微を丁寧に描いたクリスティーナ・コメンチーニの最新作。本作も女性を中心にしたファミリー・メロドラマであるが、コメンチーニは現代の家族が抱える問題と葛藤を大芝居として演出してはいない。3人の子供を育て上げ静かな老後を送るイレーネ、そして次女の末娘であるキアラ。人生の責務を果たした祖母とまだ「幸せな」幼年時代にいる孫。二人の女性が物語の核となるが、自分の家族が子育てや、不倫、同性愛といった問題にのたうちまわる姿を、静かに見守っている。しかし、彼女たちが声高に自分を主張し、状況に積極的に介入しなくても、その心の声は観る者に確かに届くだろう。写真、ホーム・ヴィデオ、絵、ナレーションが、無口な彼女たちの心情を豊かに表現する。本作が監督第7作に当たるコメンチ一ニの演出の円熟は、事件が起こる時、つまり日常生活に非日常が闖入してくる瞬間を、あくまでもふとした日常の偶然として描くところにも見られる。クラウディオの秘密が明らかになるのは発情期の犬の本能ゆえの行動からであるし、サラが苦しい胸の内を吐露できる相手を見つけるのも一本の間違い電話、それもクラウディオが弁護を担当している被告が自らの弁護人と一桁違いのサラの番号に電話してきたことからである。繊密なプロットと演出を支えるのは、『心のおもむくままに』でも親子を演じたヴィルナ・リージ、マルガリータ・ブイの息の合った演技、ピッチョーニ監督『ぼくの瞳の光』で主演したサンドラ・チェッカレッリ、ルイジ・ロ・カーショの好演である。監督と美術を担当するクリスチーナとフランチェスカの姉妹は、『ブーぺの恋人』(1963)を監督したルイジ・コメンチ一ニの娘であるが、彼女たちだけではなく主要スタッフの多くが女性であることを顧みれば、本作はまぎれもなく女性の手によって生まれた、現代イタリア映画を代表する女性映画といえる。

ストーリー

ローマ郊外の美しい邸宅に住む未亡人イレーネの子供たちは、それぞれに問題を抱えていた。長女サラば思春期を迎えた息子に戸惑い、孤独と闘っている。獣医のダヴィデを愛する次女リータと夫の仲は冷えきっている。そして長男クラウディオは同性愛者であることを母に隠している。リータの末娘キアラはこうした周囲の問題を敏感に察知していた。クラウディオの恋人ルーカが愛犬をつれて彼の生家を一目みようと邸宅を訪れたとき、犬は屋敷のなかに入りイレーネの犬を妊娠させてしまう。この事件を契機に息子の秘密、そしてリータの恋人の存在が母に知れることになる。子供たちを心配しつつもただ見守ることしかできないイレーネは、リータとともに彼女が初めて聖体拝領した日のホーム・ヴィデオを見る。そこには人生最良の日が記録されていたが、彼女の口から語られるのは美しい記憶だけではなかった。初めての聖体拝領の日、キアラはヴィデオカメラを贈られ、早速親戚を撮影する。彼女はこの日が父母が共にいる最後の日であることをも悟っていた。

スタッフ

監督・原案・脚本:クリスティーナ・コメンチ一二
脚本:ルチッラ・スキアッフィーノ、ジュリア・カレンダ
撮影監督:ファビオ・チャンケッティ
編集:チェテリア・ザヌーゾ
美術:パオラ・コメンチ一二
衣装:アントネッラ・ベラルディ
録音:ブルーノ・プッパーロ
音楽:フランコ・ピエルサンティ
製作指揮:サルヴァトーレ・グリマウド
製作:リッカルド・トッツィ、ジョヴァンニ・スタビリー二、マルコ・キーメンツ
製作会社:カットレヤ、ライ・チネマ

キャスト

ヴィルナ・リージ(イレーネ)
マルガリータ・ブイ(サラ)
サンドラ・チェッカレッリ(リータ)
ルイジ・ロ・カーショ(クラウディオ)
マルコ・バリアー二(カルロ)
マルコ・クゥアーリア(ルーカ)
ジャン=ユーグ・アンダラード(ダヴィデ)
リッキー・トニャッツィ(サンドロ・ベラルディ)
フランチェスコ・シアンナ(マルコ)
フランチェスカ・ペリー二(シルヴィア)
マリア・ルイザ・デ・クレシェンツォ(キアラ)

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