原題:Luna rossa

2001年/イタリア/

2003年4月27日〜29日、5月3日〜5日まで有楽町・朝日ホールにて上映

公開初日 2003/04/27

公開終了日 2003/05/05

配給会社名 0364

解説


『赤い月の夜』はナポリ出身のアントニオ・カプアーノが耽美的な映像でスタイリッシュに見せる犯罪一家の崩壊のプロセスである。その世界のすべては要塞を思わせる屋敷の中で完結し、ひとたび外へ出るや、生の保証はない。恐怖と憎悪と妬みと絶望と欲望がせめぎあい、服従と逃避と裏切りと処刑がくり返され、愛欲と死で血塗られた世界。カプアーノは彼らのグロテスクな生きざまを、ギリシャ悲劇を思めせる重厚なトーンで描いてゆく。そこにはかつてフランシス=フォード・コッポラが叙事詩的に(あるいは大河小説的に)撮りあげた『ゴッドファーザー』の暗黒街のロマンティシズムとも、あるいはフランスのフィルム・ノワールのそれとも、もちろん今もなお暗躍し続けるマフィア(ナポリではカモッラ)の現状を表した作品のリアリズムとも異なる、閉鎖的な犯罪組織の姿を、おそらく人類が永遠に依存し続けてゆくであろう家族の関系性の一ヴァリエーションとして捉えた、いわば新古典主義的な手法と美意識がある。第1回のイタリア映画祭で紹介された『死ぬほどターノ』もミュージカルという斬新な切り口でマフィアを血祭りにあげた作品だったが、『赤い月の夜』もまた、既成の倫理観に左右されることなく(礼讃するのでも糾弾するのでもなく)、カモッラを一個の素材として取り上げ、解釈してみせた力作である。

ストーリー

70年代初頭から勢力を拡大し続けてきたマフィア、カッマラーノ家の次世代を担うはずであったオレステの独白から映画は始まる。彼の一族が生きる世界は「前時代的で野蛮な」ものである。あるマフィアの栄枯盛衰を描くこの物語は、アイスキュロスの悲劇三部作『オレステイア』に基づいているが、それは「前歴史的で野蛮な」とあるようにパゾリ一二のギリシア観を経由したものといえる。敵対するロオンゴ家を滅ぼしたアメリゴが凱旋する。抗争でカッマラーノ家が払った犠牲にはアメリゴの長女アミーナがいたが、彼女の遺体は現場に置き去りにされた。妹オルソラが姉の死を弔わない一族に対して不満をもったことから、次第に矛盾と軋轢が露わになってゆく。アメリゴの妻イレーネは愛人エジディオに夫殺害を唆す。父が殺されたのちオレステは行方不明となるが、7年後イレーネを殺害するために舞い戻ってくる。そして、母の口からはオレステの出生についての秘密が明らかにされる

スタッフ

監督・原案・脚本:アントニオ・カプアーノ
撮影監督:トンマーゾ・ボルグストローム
編集:ジョジョ・フランキーニ、ルチアーナ・パンドルフェッリ
美術:パオロ・ペッティ
衣装:メテッラ・ラボー二
録音:マリオ・イァクゥオーネ
音楽:パオロ・ポルカーリ、ルカ・ガッティ
製作総指揮:ジェンナ一ロ・マルキテッリ
製作:アンドレア・デ・リペラート
製作会社:ポエティケ・チネマトグラーフィケ

キャスト

リチア・マリエッタ(イレーネ)
ドメニコ・バルサモ(オレステ)
カルロ・チェッキ(アントニーノ)
トニー・セルヴィッロ(アメリゴ)
アントニア・トゥルッポ(オルソラ)
イタロ・チェローロ(トニー)
アントニーノ・イウオーリオ(エジディオ)
イタロ・チェローロ(トニー)
スージー・デル・ジューディチェ(エレナ)
アントニオ・ペンナレッラ(リーベロ)

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