2003年/日本/カラー/アメリカンビスタ/DTSステレオ/110分 配給:ゼアリズエンタープライズ、ケンメディア/配給協力:東宝

2004年07月23日よりビデオ発売開始 2004年1月17日より正月第二弾、有楽町スバル座にてロードショー公開

公開初日 2004/01/17

配給会社名 0040/0031

解説


主人公・関川仁は妻を亡くし、駐在勤務から離れて泥棒刑事になったばかりの新米刑事。ある日、ひょんなことから仁はプロの大泥棒・猫田定吉(通称ネコ)を捕まえる。刑事っぽくない実直な仁に惹かれたネコは、「捕まえるヤツがとろいんじゃ、逃げるヤツも面白くねえ」と泥棒テクを教え始める。ネコに刺激されて、刑事の仕事が大好きな仁は泥棒専門刑事として腕を磨いていく。「逃げんなよ!きっと本物の泥棒刑事になっから!」ここから奇妙な真剣勝負、刑事と大泥棒の追いつ追われつが始まる。
刑事の仕事に昼も夜もない。父と娘の二人暮らし。仕事の時間が不規則で、娘美咲が急病になってもそばについてやることができやしない。仁と美咲は、美咲が通う学童クラブの牧子先生に教わったピンチ脱出のおまじない「オイッチニ、オイッチニ!」を心の支えにしている。仕事と子育ての両立は不器用な仁には大変だが、娘だってなんだかんだ勝手に育っていく。娘が成長して父親のもとを旅立っていくラストのくだりまでに父と娘の立場は大きく逆転していく。
主人公の刑事・仁を演じるのは『Shall we ダンス?』『失楽園』など常に時代が求める役柄を演じてきた役所広司。新米泥棒刑事が大泥棒ネコと交流するうちに、刑事として成長していく微妙な変化を見事に表現している。その伝説の泥棒ネコを、『うなぎ』『ドッペルゲンガー』で役所と共演してきた怪優・柄本明が演じ、犯罪者であるのに取調室で常に優位に立ちまわる人を食った芝居で大泥棒の逸話を観る者に実感させてしまう。彼等がクライマックスの取調室で見せた長科白の語りの場面は圧巻である。他に、仁が思いを寄せる女性・牧子先生に『壬生義士伝』の夏川結衣、ネコが通う居酒屋の女将に淡路恵子が扮し、17歳の娘役を演じる前田綾花、同僚刑事役の水橋研二、加えて津川雅彦、奥田瑛二らの俳優陣が華を添えている。
『笑う蛙』『T.R.Y.』などの脚本家として活躍してきた成島出の監督デビュー作。奇をてらった演出なしで、発砲しない、CGもない、血も流れない刑事と泥棒の奇妙な物語を堂々と描き出した。個性の強い日本を代表する二大役者の力をうまく生かすが如く、彼等の演技をかけ算してスクリーンに映し出した正統派の監督の誕生である。
元群馬県警警察官・飯塚訓のドキュメンタリー短編集「捕まえるヤツ・逃げるヤツ」を基に脚本は作られた。人情味溢れる刑事と憎めない大泥棒の話は、遠くに見える榛名山や伊香保温泉の情緒ある石段、名物だるまの生産工場などを背景に描かれる。群馬県と同じ内陸で育った成島監督は子どもの頃体験した懐かしい出来事をこの風土のイメージに重ねる。山田洋次監督の『学校』シリーズや『たそがれ清兵衛』の名カメラマン、長沼六男の映像が見事である。

ストーリー


駐在所勤務から、泥棒専門の刑事になって1年。関川仁(役所広司)は、妻を亡くして8歳の娘・美咲(菅野莉央)を男手ひとつで育てながら、多忙な日々を送っていた。美咲の具合が悪くなったときも苦しがる娘を救急車に乗せて病院に運び、幸い大事には至らなかったのだが、ずっと側についてやることも出来ず、かつ、犯人逮捕の現場にも遅刻してしまうような日々の中、仕事と家庭の両立に、頭を悩ませていた。そんなある日、だるま工場で盗難事件が起きた。犯人は窓から侵入、被害額は60万円也。数日後、近所のグラウンドで故障した美咲の自転車を、通りすがりの男が手際よく修理してくれた。父親として見知らぬ男に丁寧に礼を述べる仁だが、自転車を直した工具をしまう男の鞄の中に、盗難現場のだるま工場で飼っていたピラニアの餌の缶を発見する。頭を下げながら警察手帳を見せる仁。男は実直で腰の低い仁を刑事だと見抜けなかった。署では仁が検挙した男の名前に沸き立つ。大泥棒・猫田定吉、通称・ネコ(柄本明)。この辺りでは知らぬもののいないプロ中のプ口。ところが捕まえたのは良いものの、彼に犯行を自供させるのはベテラン刑事でも至難の技。35回検挙されても前科は5犯、6回に5回は逃げられてしまうのだ。ひどく弁の立つネコに大概の刑事は論破され、吐かせることが出来ない。だがネコは仁には一目置いている様子だった。職務質問を掛けられ、それを見抜けなかったのは初めてのことだったからである。取調官次第で自供すると言われるネコは、仁の馬鹿正直で実直な所を気に入ったのか、男やもめで娘を育てる彼を不憫に思ったのか、遂に犯行を語り始めた。「…手柄を立てさせてやっから」。だるま工場から現金60万円とピラニアの餌を盗んだこと、また、以前から自分がしてきた盗みの数々…。これがネコと仁、二人の追いかけっこの始まりだった。
一方、仕事柄帰りが遅くなることがままある仁は美咲を遅くまで預かってくれる学童クラブに通わせていた。仁は学童クラブの牧子先生に思いを寄せ、彼女もまた仁に好意を持っている。ある日、美咲が風邪を引いて牧子先生が仁の家を訪れたことから、二人の仲は急速に近づいていく。だが、幼い美咲はそんな2人の関係を受け入れずに、なついていた牧子先生の作ったご飯を何日も食べずにハンストをして抵抗する。「ご飯作りも洗濯も掃除も、全部自分で出来るから!」と涙ながらに訴える美咲に、仁は牧子先生との結婚をあきらめた。
自供したネコと毎日のように会って実況検分する仁。そこで大泥棒のネコが泥棒刑事としてのイロハ、一流の泥棒の手口、哲学、プロフェッショナリズムを学んでいった。
ネコとの出会いから10年。今では一流の泥棒刑事になった仁。ネコが昔から通っている居酒屋に通い始めていた彼は女将(淡路恵子)から、久しぶりに現れたネコの体調不良を知らされた。管轄内の古美術店で盗難事件が起こり、早速現場検証に向かった仁が見たのは見覚えのあるピラニアの餌の缶だった。一方で17歳になった美咲(前田綾花)は看護学校に通っていた。ある日、彼女は卒業したら海外で看護活動をしたいと仁に切り出した。娘に捨てられたような寂しさを感じた仁は彼女の言葉に頷くことが出来ず、声を荒げて反対した。間もなくネコを逮捕した仁は、ネコの自供を引き出すべく、取調べにかかる。

スタッフ

監督:成島出
企画;成澤章、渡辺敦
エグゼクティヴプロデューサー:尾川匠
プロデューサー:松葉せつこ、福島聡司、村上比呂夫、秋元一孝、升水諭
脚本:小松輿志子、真辺克彦
撮影:長沼六男
照明:吉角荘介
美術:中澤克巳
録音:宮本久幸
編集:奥原好幸
記録:白鳥あかね
原作:飯塚訓「捕まえるヤツ・逃げるヤツ」文藝春秋社刊
音楽:ショーロ・クラブ「colors」ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル

キャスト

関川仁:役所広司
猫田定吉(ネコ):柄本明
城谷刑事:水橋研二
綾乃:淡路恵子
医者・東条:津川雅彦
牧子先生:夏川結衣
パチンコ屋社長:奥田瑛二
美咲(8歳):菅野莉央
美咲(17歳):前田綾花
笹野高史
千うらら
綾田俊樹
田中隆三
宮内敦士
角替和枝
斎藤歩
高橋明
三田村周三

LINK

□公式サイト
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す