原題:25th Hour

俺に残された 最後の自由な24時間

2002年12月9日アメリカ初公開

2002年/アメリカ/2時間16分/カラー/スコープサイズ/ドルビーデジタル 配給:アスミック・エース エンタテインメント

2004年09月10日よりDVD発売開始 2004年1月24日より恵比寿ガーデンシネマにてロードショー

公開初日 2004/01/24

配給会社名 0007

解説



「もし、人生があと24時間で終わるとしたら・・・?」そんな誰もが一度は思いを巡らす普遍的なテーマを、ビビッドな今の空気感と新鮮な語り口でリアルに描いた映画『25時』は、”めまいのするような高度まで舞い上がる作品”(ワシントン・ポスト)、”胸が張り裂けるような感動的なムードの連続”(ニューヨーク・タイムズ)と全米マスコミを熱狂させ、2003年2月に行われたベルリン国際映画祭では批評家からも観客からも賞賛された、心に深く刻み込まれる衝撃の感動作である。
全ての始まりは、新進作家デイヴィッド・ベニオフが2001年に書き下ろしたデビュー小説にある。収監を目前に控えた男の苦悩、親友たちの孤独と絆、恋人への疑惑と真実、父親の語る絶望と夢・・・なによりも意表をつく出色の結末で話題となり、そこには一貫して流れる強く確かな”情熱”は、すぐに映画界にも飛び火した。最初にその小説に目をつけたのは俳優のトビー・マグワイアは、それが出版される前から映画化権を獲得し、初めてプロデューサー業に進出。脚本はベニオフ自身が手掛け、監督にはアメリカを代表する最も勇敢でパワフルな映画作家スパイク・リー、主演にエドワード・ノートン、というこれ以上ない奇跡のようなドリーム・チームが結成されたのだ。
そしていよいよ、その熱波が日本中を席巻しようとしている。
ニューヨーク。モンティに残された自由な時間は刻々と過ぎてゆく。彼は25時間後には収監され、7年間の刑期に服さなければならない。
モンティには、残されたわずかな時間でケリをつけておかなければいけないことがある。愛犬ドイルには新しい主人が必要だ。最後まで息子のことをあきらめようとしない父親に別れを告げなければならない。ふたりの親友にどうしても頼みたいことがある。これまで世話になったロシア人マフィアとも全てを清算し、自分を警察に密告したのは恋人のナチュレルなのかを明らかにさせなければならない。
もう、時間がない。刑務所でハンサムな白人男性を待ち受ける運命は恥辱に満ちている。選択肢は三つ———服役、逃亡、そして自殺。
絶望を抱えながら、モンティは最後の自由な24時間をどう過ごすのか?
映画と小説の決定的な違い・・・それは9.11を描いているか、否かである。「ニューヨークで生まれ、一生そこに住むニューヨーカーとして、我々の街、そして世界がどう変わったかを反映しない映画は作りたくなかった」とスパイク・リーが語るように、本作には生々しいグラウンド・ゼロの情景が映し出される。そこから溢れるのは抑えきれないほど深い街への愛——どんなに姿を変えようとも、人は生まれ育った街を愛し、ともに過ごした仲間を愛する。主人公モンティが<服役、逃亡、自殺>のどれを選択したとしても、全ての愛すべきものと別れなくてはならない。絶えがたいその切なさが観る者の心を締め付ける。
また、小説で最も称賛されたのは”驚くべき結末”である。それは、モンティが絶望の入口で見た”幻かもしれない、もうひとつの人生”であり、父親のほろ苦く偽りのない語りに導かれるように描かれる、リー持ち前の豪腕な演出によって、その理想的な人生にグイグイと引き寄せられると、やがてそれが人間への愛と希望の手紙となって我々の心に響き渡り、いつまでも切なく優しく豊かな余韻を残すのである。
スパイク・リーは、アカデミー賞2部門にノミネートされた『ドゥ・ザ・ライト・シング』同様、本作で再び24時間という時間枠のドラマを描き、より濃密で芳醇な香りを漂う作品を世に送り出した。それは、リーに選び抜かれ、リーを心から尊敬してやまない屈指の才能たちによって成功に導かれた。
主人公であるドラッグ・ディーラーのモンティには、『アメリカン・ヒストリーX』でアカデミー賞主演男優賞候補となり、『ファイト・クラブ』『レッド・ドラゴン』と飛躍的な活躍を見せるエドワード・ノートン。モンティの親友で内気な高校教師ジェイコブには、『マグノリア』の個性派俳優フィリップ・シーモア・ホフマン、もうひとりの親友である証券ブローカーのフランク役は、『プライベート・ライアン』で彗星のごとく登場したバリー・ペッパー。モンティを警察に密告したのではという疑惑がつきまとう恋人ナチュレルには、リー監督とは『ラストゲーム』に次いで2作目となるロザリオ・ドースン。また、ジェイコブを誘惑するかのようなセクシーさを撒き散らす女生徒メアリー役は、『ピアノ・レッスン』の演技で11歳にしてアカデミー賞助演女優賞に輝いたアンナ・パキン。そして、バーを経営するモンティの父親には、『ザ・リング』『アダプテーション』の名優ブライアン・コックスが扮している。
今回初めてリーと手を組んだ二つの才能。原作・脚本のデイヴィッド・ベニオフは、本作の成功によりウィルフガング・ペーターゼン監督『Troy』、マーク・フォスター監督『Stay』などの大作を手掛ける売れっ子脚本家となった。また、撮影は『8マイル』『アモーレス・ペロス』のロドリーゴ・ブリエトがあたり、緊張感に満ちたザラザラとした質感のニューヨークの街を映し出す。
衣装のサンドラ・ヘルナンデス、編集のバリー・アレクザンダー・ブラウンら、スタッフの重要メンバーの多くは、これまでもリー作品を支えてきた名手たち。中でも、音楽のテレンス・ブランチャードは、『ジャングル・フィーバー』以来手を組んできた欠かせない存在であり、本作でも運命的なドラマを印象付ける音楽を完成させ、ゴールデングローブ賞ノミネート他、数々の賞を獲得している。
そして、エンディングを感動的に飾るのは、アメリカ・ロック界の”BOSS”こと、ブルース・スプリングスティーンの”The Fuse”。彼が、9.11後に初めて発表したアルバム「THE RISING」の中に収められているこの曲は、悲哀に満ちた抒情詩として我々の心に強く深く響き渡る。

ストーリー


ニューヨーク、モンゴメリ・フローガン(エドワード・ノートン)はブルックリンで暮らすドラッグ・ディーラー。ある夜、相棒のコースチャ(トニー・シラグサ)と車を走らせていると、瀕死の状態で地面に横たわっている犬を発見する。血だらけでおびえながら噛み付かんばかりに吠えかかる犬・・・
コースチャの反対をよそに、モンティは車のトランクにその犬を押し込めその場を立ち去る。
ある静かな朝、公園のベンチに座ってハドソン川を眺めているモンティ。傍らには以前に助けた犬ドイルの姿がある。そこへひとりの男が現れ「粉を売ってくれ」とモンティに懇願する。「110丁目へ行け」とモンティは男を一掃する。「俺はパクられたんだ。もう終わり、ゲームオーバーだ」と。麻薬捜査局により逮捕されたモンティは父親の店を担保に保釈中の身だが、ついに明日、収監される。残された最後の自由な24時間がはじまろうとしている。
モンティはドイルと一緒に、慣れ親しんだニューヨークの街を彷徨う。懐かしの母校コヴェントリー高校では、幼なじみのジェイコブ・エリンスキー(フィリップ・シーモア・ホフマン)が英語の教師をしている。モンティは授業中のジェイコブを呼び出し、今夜、いつもの店で待っていて欲しいと告げる。そんなふたりに色っぽい視線を向ける女性徒メアリー・ダヌンツィオ(アンナ・パキン)。ジェイコブは彼女の大人を誘惑するような外見と行動に悩まされていた。教師が生徒を好きになることなど許されないとわかりつつも、どんどん夢中になる気持ちを止めることもできない。
ニューヨークの証券取引所。ここは、モンティのもうひとりの親友である敏腕株式ブローカーのフルンク・スラッタリー(バリー・ペッパー)の戦場だ。ジェイコブからの今夜の誘いの電話も適当に聞き流し、仕事に集中するフランク。自分独自のセオリーだけを信じ、上司の警告を無視して1億ドルもの金を投じ、モニターをジッと睨みつける・・・オフィスを震わすような激しいどよめきの中でその大きな賭けに勝利すると、フランクはニヤリと笑みを浮かべ、ひとり喜びをかみしめる。
モンティのアパートの玄関階段に座りながら、モンティとドイルを待つナチュレル(ロザリオ・ドースン)。ナチュレルは、通りの向こうに愛するモンティの姿を見つけると、立ち上がり寄り添う。このところモンティの態度がおかしいと感じながら、最後の夜をどうしても一緒に過ごしたいと願うナチュレル。しかしモンティは、警察に密告したのはナチュレルではないかという疑念を持っている。「君には限りない夜がる。俺には最後の夜だ。」と言い、夜にはいつものクラブで会おうと告げてモンティはアパートを出て行く。
モンティは父親(ブライアン・コックス)に別れを告げに、父が営むバーへと向かう。モンティの父親は定年退職したアル中の消防士で、今はスタッテン・アイランドでかつての仲間相手にバーを経営している。その殉職した消防士の聖地とも言える店は、実はモンティが麻薬を売って稼いだ”汚れた金”によって運営されていた。医者か弁護士にもなれたはずだったのに自分のせいで・・・、と父親はモンティの今を悔やむ。
そんな気持ちに耐え切れず、モンティはトイレに立つと鏡に向かって心中をぶちまける。ニューヨークに居住するありとあらゆる人種に対しての怒りと苛立ち—薄ら笑いを浮かべて金をせびる物乞い、オンボロタクシーで飛ばすシーク教徒とパキスタン人、チェルシーのホモ野郎。高すぎる果物を売り英語を話せない韓国人、ブライトン・ビーチのカフェにたむろするロシア人ギャング、ブッシュとチュイニー、オサマ・ビンラディンにアルカイダ、グチばかりのジェイコブ、いつもナチュレルのケツを追いかけているフランク、信じていたのに裏切ったかもしれない恋人ナチュレル、嘆いてばかりいる父親、こんな自分を生み出し破壊へと追いやったニューヨークという街全体——そして最も苛立つのは、警察に捕まり人生を台無しにしてしまった自分自身。
フランクのグランド・ゼロを階下に見下ろす高級マンションにジェイコブが訪ねて来る。
「彼に何て言う?」「別に何も」
モンティのようなハンサムな白人男性が刑務所に入れば、確実にカマを掘られて、ボロボロにされる・・・
選択肢は三つ、服役、逃亡、そして自殺。ふたりが7年間の地獄を目前にしたモンティにしてやれることは、しこたま酔わせて楽しい夜にしてやることだけだ。真面目なエリンスキーにはモンティが密告されて捕らえられるのは信じられない事実だが、スラッタリーは当然だと思う。ニューヨーク中でヤクを売り続け、子供にまでも蔓延させたのだから捕まることは自業自得だと。そして、モンティが三つの選択肢のどれを選んでも、もう二度と彼に会うことはないと感じていた。今夜で全てが終わりなのだ。
ついに最後の夜のパーティーが始まる。人生をフイにした大バカな自分に対する絶望を抑えながら、なじみのクラブで淡々と過ごす時間、愛する者たちとの最後の乾杯。「真の友にはシャンペンを、偽りの友には真の痛み(ペイン)を」
しかし、モンティの人生の清算はまだ終わっていない。愛犬ドイルには新しい主人が必要だ。警察にタレこんだのは本当にナチュレルなのかを確かめたい。長年世話になったロシア人マフィアと全てを清算し、親友に最後の願いをしなければならない。
そして、運命の25時間目が刻一刻と近づいてくる・・・。

スタッフ

監督:スパイク・リー
製作:ジュリア・チャスマン、ジョン・キリク、スパイク・リー、トビー・マグワイア
製作総指揮:ニック・ウェクスラー
原作:デイヴィッド・ベニオフ
脚本:デイヴィッド・ベニオフ
撮影:ロドリゴ・プリエト
編集:バリー・アレクサンダー・ブラウン
音楽:テレンス・ブランチャード

キャスト

エドワード・ノートン
フィリップ・シーモア・ホフマン
バリー・ペッパー
ロザリオ・ドーソン
アンナ・パキン
ブライアン・コックス

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