原題:Auto Focus

2002年10月18日全米初公開

2002年/アメリカ/105分/カラー/ビスタサイズ/SDDS・ドルビーデジタル 配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

2003年11月1日よりシアター・イメージフォーラムにてレイトショー

(c)2002 Sony Pictures Classics.All Rights Reserved.

公開初日 2003/11/01

配給会社名 0042

解説


現実に起きたこの殺人事件の真相に迫る“The Murder of Bob Crane”(ロバート・グレイスミス著)をもとに、クレインが辿ったスターとしての一瞬の栄光からミステリアスな死に至る波瀾に満ちた生涯を、60〜70年代の空気やショウビズ界の現実を背景に、ウィットに富んだ視点で強烈に描いたのが『ボブ・クレイン〜快楽を知ったTVスター〜』だ。
良き家庭人でもあった好感度満点の輝くスターが、ビデオ機器の営業マン、ジョン・カーペンターに会った事で欲望にのめり込むことの甘美さに憑かれ、自分を見失い、他人の心に無頓着になり、自覚のないまま破滅へのスパイラルを急降下していく…。
女達への欲望で繋がっている「親友」カーペンターとの絆。有名であることに乗じて楽しんだ数え切れないほどの女性との乱交。そのセックスの饗宴をカーペンターが調達したビデオ機材で撮影、鑑賞し、コレクションして再度満足を得るクレイン。彼等は二人で行動することで、さらに行為をエスカレートさせていく。それは、60年代から70年代に生きたアメリカ男性の性的アイデンティティの記録であり、ひとりだけではできない事をさせてしまう、ある種の「友情」が持ち得る力についての物語でもある、と監督のポール・シュレイダーは言う。
欲望の虜になるに従い、ショウビズ界での彼の位置も変わっていった。64年、東部のラジオDJからLAの人気ラジオDJに。TV成長期の65年「0012捕虜収容所」の主役でTVスターになった彼だが、「0012捕虜収容所」終了後は仕事に恵まれず、74年ディズニー映画に主演するも興行は失敗。そして最後は地方のディナー劇場回りに身を落とし、78年命を断たれる…。クレインは、アメリカのショウビズ界を乱気流に巻き込まれて上昇、旋回し、そして失速して落ちた。カウンターカルチャーが花開き、ヒッピーが登場し、平和を求めベトナム反戦運動が激しさを極めた「激動の60年代」から、初めての敗戦を喫した「不毛な」と言われる70年代へ。アメリカが変貌していくこの時代を図らずも彼が体現したかのようだ。『アメリカン・ジゴロ』(80)、『キャット・ピープル』(81)、“Mishima:A Life in Four Chapters”(85)の監督にして『タクシードライバー』(76)、『最後の誘惑』(88)などの脚本家、社会常識からはみ出した人間の心理を鋭く描くことで定評のある映像作家ポール・シュレイダーが監督を務める。主役のボブ・クレインには、『恋愛小説家』(97)でアカデミー賞助演男優賞ノミネートのグレッグ・キニア。重いテーマが流れる反面、随所にユーモアが光るこの映画だが、その明るさの大半は彼のキャラクターがもたらしたもの。クレインを欲望の世界に導くカーペンターに、『最後の誘惑』、『スパイダーマン』(02)の個性派ウィレム・デフォー。他に、『プリティ・ブライド』(99)や夫のトム・ハンクスと共に製作した「マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』(02)が知られるリタ・ウィルソン、『コヨテ・アクリー』(00)、TV「ER緊急救命室」(96〜98)のマリア・べ口が、クレインの二人の妻をリアルに演じている。音楽は、『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』(92)、『マルホランド・ドライブ』(01)などに印象的な曲を提供しているアンジェロ・バダラメンティ。雰囲気をかもし出す独特の音楽やノスタルジックなジャズで映画のテーマを際立たせる。また、60年代から70年代の変化を追いつつ、登場人物の意識や社会的立場を明確に表わしているファッションにも注目だ。

ストーリー

1964年、LA。ラジオ局KNXのモーニングショーのスタジオに、DJのボブ・クレイン(グレッグ・キニア)が叩くドラムの音が鳴り響く。人気者の彼は、妻アンの誠実な夫であり、日曜には家族揃って教会へ行くような、三人の子供達の良き父親でもあった。ある日、エージェントのレニー(ロン・リーブマン)が、TVコメディの主役の話を持ってくる。第二次世界大戦下のドイツ軍捕虜収容所に収容された連合軍捕虜達のシチュエーション・コメディだ。映画俳優を夢見る彼はキャリアをだめにする、と断ろうとするが脚本を見て考えを変える。
コメディ「0012捕虜収容所」は、65年9月17日にCBSでスタートし、新番組の中でトップの視聴率を獲得した。彼は人気スターの幸福を味わいながらもストレスをガレージに隠したヌード雑誌で発散するようになり、アンはショックを受ける。
クレインは撮影スタジオ裏で、出入りのソニーの営業マン、ジョン・カーペンター(ウィレム・デフォー)に出会う。クレインが写真マニアだと知ると、開発されたばかりのビデオの説明をしながら彼は言う。「写真好きなら、きっとビデオも好きになる」
カーペンターの誘いでストリップバーに初めて足を踏み入れたクレインは、乞われるままにステージでドラムを叩く。ドラムと女の裸。彼のテンションを緩和してくれる二つの大好きなもの。そんな生活を神父に告白するものの、ある夜、ストリップ嬢二人と共にカーペンターのアパートに招かれると、カーペンターの思惑と女の誘惑に負け、初めて妻アンを裏切ってしまう。
この時から、クレインとカーペンターの「交友」が始まった。自分達二人のセックス用に、クレインの人気を利用して女達を口説くカーペンター。次第に支配的立場に立つようになるクレイン。乱交、SM何でもあり、と段々エスカレートしていくセックスの饗宴は、カーペンターが調達したビデオカメラで盗撮、コレクションされた。二人は観る事で二重の満足を得ていく。そんな時、クレインは自分の尻を触るカーペンターの映像を発見、同性愛の徴候に激昂し、絶交を言い渡す。だが、ビデオの修理のためにやって来たカーペンターから謝罪と友情をアピールされると、あっけなく和解してしまうのだった。
アンとの家庭は崩壊し、クレインは「0012捕虜収容所」の出演女優パティ・オルスン(マリア・ベロ)と再婚した。女性関係に理解を示すパティに、とうとう自分の欲望を理解してくれる女性を見つけた、と彼は思う。
「0012捕虜収容所」が終了し、仕事が思うように回ってこなくなったクレイン。慰謝料や新居のローンに追われる今の彼には、セックス喜劇「ビギナーズ・ラック」を引っさげて地方のディナー劇場を巡業するしか道はなかった。そんな状況にもかかわらず、同行していたパティが家に戻ると、入れ代わりに現れた「親友」カーペンターを嬉々として迎え入れてしまう。セックス三昧の日々に突入した二人は顔を見合わせ、こう叫ぶ。「セックスしない日なんて、一日の無駄!」
そんなクレインのもとに、念願の映画出演のオファーが舞い込む。なんとディズニー映画「スーパー・ダッド」の主役だった。撮影期間中、タブロイド紙にトップレスバーでの写真が掲載され、レニーにイメージを考えろと警告されるが、クレインは笑って取り合わない。映画興行は失敗に終わり、パティとの仲も壊れてゆく…。
バーで、「0012捕虜収容所」再放送中のTVの下に陣取り、自分に気付くように仕向けてまで女を誘おうとしているクレインは、今や過去のTVスターに成り下がっていた。業界で相手をする者は誰もいない。唯一の友、カーペンターをも傷つけ、彼の心は荒廃していく。彼は別れた息子を待ち伏せする。アンに会いたい、自分を変えたい、という思い…。
1978年6月29日。アリゾナ、スコッツデール。地方巡業中のボブが眠るホテルのベッドに何者かが忍び寄る…。

スタッフ

監督:ポール・シュレイダー
脚本:マイケル・ガーボシ
プロデューサー:スコット・アレクサンダー
        ラリー・カラゼウスキー
        トッド・ロスケン
        パトリック・ドラード
        アリシア・アレイン
エグゼクティブ・プロデューサー:トレボア・メイシー
               リック・ヘス
               ジェームス・シャムス
撮影監督:フレッド・マーフィ ASC
プロダクション・デザイナー:ジェームス・チンランド
編集:クリスティーナ・ボーデン
音楽:アンジェロ・バダラメンティ
キャスティング:ウェンディ・カーツマン
衣裳:ジュリー・ワイス

キャスト

ボブ・クレイン:グレッグ・キニア
ジョン・カーペンター:ウィルム・デフォー
アン・クレイン:リタ・ウィルソン
パトリシア・クレイン:マリア・ベロ
レニー:ロン・リーブマン
フェルドマン(「0012捕虜収容所」プロデューサー):ブルース・ソロモン
リチャード・ドーソン:マイケル・ロジャース
ワーナー・クレンペラー/クリンク:カート・フラー
ロバート・クラリー/レビュー:クリストファー・ニーマン
ジョン・バナー/シュルツ:ライル・カノーゼ
メル・ローゼン/エド・ベグレイ・ジュニア
ビデオ・エグゼクティブ:マイケル・マッケーン
ビクトリア夫人:ドナマリー・レッコ
エミリー:アレックス・メネセス

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