原題:Pollock

こんな僕に心をくれた女——。 僕はあなたに永遠をあげる——。

第72回アカデミー賞助演女優賞受賞(マルシア・ゲイ・ハーデン)

2001年2月16日全米初公開

2000年/アメリカ/122分/ 配給:ソニー・ピクチャーズエンターティンメント

2008年01月23日よりDVDリリース 2004年04月28日よりビデオリリース 2003年11月1日よりシャンテシネにてロードショー

公開初日 2003/11/01

配給会社名 0042

解説


ゴールデン・グローブ賞受賞に輝く知性派名優エド・ハリスがピュリッツァー賞受賞の原作伝記にインスパイア、製作・主演、そして初監督にまで乗り出した傑作の誕生だ。米モダン・アート界初のスター、実在の天才画家ジャクソン・ポロックと彼を支え続けた女性アーティスト、リー・クラズナーとの鮮烈な完全燃焼の人生を描くあまりにも切ない感動ラブーストーリー。全世界の辛口メディア&映画賞が激賞し、第73回アカデミー賞主要2部門〈主演男優助演女優〉ダブル・ノミネート&受賞の快挙をエド・ハリスは初監督作品で成し遂げた。
NYグリニッジビレッジの都会美、対照的な避暑地イーストハンプトンでのスローライフの先駆者としての田舎暮らし。この秋ディオール、プラダも注目のエレガントでセクシーな40-50年代ファッションも必見。B・ホリディ、グッドマンのジャズが彩る人生の光と影、その苦悩を癒しに昇華するトム・ウェイツのテーマ曲にも感動がとまらない。

1949年8月、『ライフ』誌に全段抜きの見出しが躍った。“ジャクソン・ボロック”米国で最も偉大な画家か?”記事にはカンヴァスをバックにポーズをとる彼の写真が添えられていた。着古した黒のジャケットにブルー・ジーンズをはいたポロックは、挑戦的に胸の前で腕を組んでいた。
彼はあまりに鋭敏でピュアな感性のゆえに、自らを表現せずにはいられない気持ちと世間をシャットアウトしたい思いとの間でせめぎあっていた。そんな彼の心と創作を献身的に支えたのが女性アーティスト、リー・クラズナーだった。だが、ポロックの脆い精神はやがてきりもみ降下を始める。
そして、1956年夏のある霧の晩、酒を飲み、二人の女性を乗せてイースト・ハンプトンの道路を疾走していたポロックは、路傍の木に激突して44年の生涯を閉じた。人は彼を“アート界のジェームズ・ディーン”と呼んだ……。彼の〈死〉は自殺か事故か?その謎は観客にゆだねられることになるのだが。

自らポロックを演じつつ初めてメガホンをとったのは、『トゥルーマン・ショー』でゴールデン・グローブ賞を受賞し、同作と『アポロ13』、本作、『めぐりあう時間たち』で4度アカデミー賞にノミネートされている知性派俳優エド・ハリス。1990年代の初めから映画化の構想を練っていただけに、確信に満ちた精緻な演出でポロックの潔い“自然”な生
き方、“偶然”を排除した創作との対時、リーとの愛に満ちた関係を奥行き深く描き出している。映画化を決めて以来10年もの間ずっと絵を描き続けてきたという彼は、“ドリッピング/ポーリング”をはじめとするポロック独特の創作スタイルを再現して鬼気迫るリアリティ。まるでポロックの魂が乗り移ったような緊迫感と生命力溢れる演技で多面的な人間性を体現し、見る者を圧倒する。
リークラズナ一役に選ばれたのは『スペース・カウボーイ』『ジョー・ブラックをよろしく』のマルシア・ゲイ・ハ一デン。“ワンダフルでファビュラスで、しかしときにぞっとするような”結婚生活の中でポロックを心身ともに支えた女性アーティストの複雑な心理を繊細かつ力強く演じ、みごとアカデミー助演女優賞に輝いた。
また、エド・ハリスの私生活上のパートナーでもあるエイミー・マディガンが、ポロックのパトロン、ペギー・グッゲンハイムに、「ビューティフル・マインド」でアカデミー助演女優賞を受賞したジェニファー・コネリーが、ポロックの最期のときに車に同乗していた恋人ルース・クリグマンに扮している。
撮影は主にニューヨークとロングアイランドのイーストハンプトンにあるポロックとクラズナーの地所で行われ、プロダクションデザイナー、マーク・フリードバーグが二人の家や創作を行った納屋などを復元。撮影監督リサ・リンズラーが端正で落ち着いた映像の中に、画家ポロックの強烈な個性を表現してみせる。さらに衣装デザイナー、デイヴィッド・ロビンソンが、時代の先を行くポロックとクラズナーのモダンなスタイルを再現して当時の空気に彩りを添えている。

ストーリー


ニューヨークの画廊でアメリカのモダン・アート界のスター、ジャクソン・ポロックの個展が開かれていた。若い女性が彼を特集した『ライフ』誌を抱えてやってくる。自分の記事のページにサインをしながら、ポロックの表情はどこか虚ろだった。
9年前の1941年11月、グリニッチヴィレッジ。29歳のポロック(エド・ハリス)は四兄サンフォード(サンド)夫婦の家に居候していた。その日、兄とアパートの階段を上りながら、ポロックは「くたばれ、ピカソ!」と大声でどなった。長兄チャールズの後を迫って“アメリカン・シーン派”トーマス・ハート・ベントンのもとで美術の勉強をしてきたポロックは、数年前からシケイロス、リベラ、オロスコといったメキシコの画家、ネイティブアメリカンの美術、ヨーロッパのキュビズムの画家たちにイメージを刺激されていた。中でもピカソはポロックにとって“何もかもやつちまったクソ男”。崇敬の念とともに、彼は自分の才能と価値に不安を抱いていた。10代のころからアルコール依存症に陥り、不安定な精神を抱えてユング派の精神科医のもとに通っていたポロックは、おかげで徴兵を免れたものの、サンドの妻にとっては厄介者でしがなかった。
ポロックは美術評論家ジョン・グレアムが著書『原始美術とピカソ』で書いたユングの“無意識”論に基づく抽象表現主義理論に感激し、彼と親交を結んでいた。グレアムはマクミレン画廊で名もないアメリカの画家たちとピカソ、ブラックらフランス画壇の大家たちの作品を一緒に並べる〈フランスとアメリカ絵画展〉を企画していた。そんなある日、彼のもとにリー・クラズナー(マーシャ・ゲイ・ハーデン)が突然訪れる。彼女は自分の作品と共にこの展覧会に出品されるポロックの絵を見てその才能を見抜き、本人に会いに来たのだった。部屋に散乱する絵を見て「凄い!」と驚愕するリー。彼女はポロックに自分のアトリエに来るように言って帰っていく。
3週間後、ポロックはリーのアトリエを訪ねた。二人はカフェへ行き、リーは5年前にパーティで泥酔したポロックに会ったことを話した。二人の心には何か通じ合うものがあった。夜になって二人はリーの部屋に戻った。彼女は無言で服を脱ぎ始めた。
リーはポロックと家族ぐるみの付き合いを始めた。しかし、ポロックの精神は不安定で、飲酒癖は治らなかった。美術界の状況に明るく、画家や批評家と親交のあるリーは、ポロックをデ・クーニング(ヴァル・キルマー)ら前衛的なグループに紹介した。そして、ペギー・グッゲンハイム(エイミー・マディガン)との出会いが、彼の進路を大きく飛躍させる。秘書兼助手のハワード・ピュッッェルとともに彼の作品を見に来たペギーは、「天才だ」と断ずるピュッツェルの意見を入れて自分が開設した前衛美術の画廊〈今世紀の美術〉への出品と新居の壁画制作を依頼した。ペギーはポロックの契約画商となって月150ドルの手当てを支給することになり、おかげで彼は制作に専念することができた。新進の美術評論家クレメント(クレム)・グリーンバーグが積極的に彼の絵を賞賛した。
絵の具のチューブで直接カンヴァスに厚塗りするポロックのスタイルは独創的だった。勇敢にして大胆。野性的で荒々しく、原始的な素朴さを湛え、力強さは暴力的ですらあった。その“荒ぶる美”は洗練されたヨーロッパのキュビズムにはない独自のものだった。リーはポロックに尋ねる。「シュールレアリズム?夢?何を描いているの?」。彼は答える。「俺が自然だ!」と。彼はすでにこのとき、芸術の創造の源である“無意識”につながる通路を見出していた。43年11月、〈今世紀の美術〉画廊で初めての個展が開かれた。ポロックは画壇の寵児になった。
グッゲンハイム邸の壁画制作はいっこうに進まなかった。ポロックは何週間も白いカンヴァスをみつめたままだった。しかし、ある日突然、彼は黒いペンキで線を引き始める。これに青緑、黄、白、赤、ピンクと順に色が加わり、豊かな色彩の抽象画へと変わっていく。翌朝、リーが目を覚ますと作品が完成していた。それは凄まじいばかりの集中力だった。ペギーもこれを気に入ってくれた。しかし、酒ゆえの傍若無人はいっこうに治まる気配がなかった。しだいに病状は悪化し、浮浪者のように路地にうずくまつ心しばらくしてボロボロになって家に帰ってきたポロックを、リーは何も言わずに受け入れた。彼女は彼と一緒に暮らし、彼に絵を描いてほしいと思った。そして、結婚するか別れるか決断するように迫る。
45年の秋、ポロックとリーは正式に結婚し、ニューヨークの喧騒を避けるようにロングアイランド、イースト・ハンプトンに近いスプリングスの農家に引っ越した。ボロ家だけれど自然に囲まれた静かな環境で、二人はキツネの美しさに見とれた。ポロックは草原に寝ころがってカラスと戯れ、犬と一緒に自転車で道を走った。納屋をアトリエに改造し、創作の合間に畑を耕した。穏やかで幸せな日々が続いたある日、ポロックはリーに子供を作ろうと言う。しかし、彼女はポロックだけで手一杯。子供を作るために結婚したのではないし、生活は逼迫していた。彼女はポロックの天才を信じ、ここで二人きりの生活を送りたかった。時々ペギーや友人たちが訪れることもあったが、リーは何よりポロックが再び酒に溺れることを恐れていた。そして、ポロックはしだいに創作に行き詰まっていく……。

スタッフ

製作総指揮:ピーター・M・ブラント
製作:フレッド・バーナー、エド・ハリス、ジョン・キリク
監督:エド・ハリス
原作:スティーヴン・ネイファー&グレゴリー・ホアイト・スミス
脚本:バーバラ・ターナー、スーザン・J・エムシュウィラー
撮影監督:リサ・リンズラー
テーマ曲:トム・ウェイツ
絵画指導:リサ・ローリー

キャスト

ジャクソン・ポロック:エド・ハリス
リー・クライズナー:マルシア・ゲイ・ハーデン
ペギー・グッゲンハイム:エイミー・マディガン
ウィレム・デ・クーニング:ヴァル・キルマー
ルース・クリグマン:ジェニファー・コネリー

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