原題:BULLY

ちぎれた心が暴走する

2001年7月13日全米初公開

2001年/フランス・アメリカ/カラー/111分/ヴィスタサイズ/SRD/ 提供:東芝、アミューズピクチャーズ 配給:アミューズピクチャーズ

2003年11月21日よりDVD発売開始 2003年11月21日よりビデオ発売&レンタル開始 2003年5月10日よりシネセゾン渋谷にてロードショー

公開初日 2003/05/10

配給会社名 0008

解説



1993年7月14日。南フロリダでボビー・ケント殺害事件が起こった。殺人者は彼の仲間だった7人のティーン・エイジャーたち。その中には5歳からボビーの親友だったマーティ・プーチョも含まれていた。彼らはいじめっ子だったボビーを嫌うあまり、ナイフで刺殺し、川に投げ込んで、ワニの餌にしようとしたのだ。この衝撃的なニュースは、すぐに全米をかけめぐり、コロンパインで起きた高校生による銃の乱射事件とならび、アメリカ中に衝撃をあたえた。その事件を実際に殺人が行なわれたフロリダ郊外の町で撮影することで、大ヒット作「ボウリング・フォー・コロンパイン」をしのぐ、リアルな問題作「ブリー」が誕生した。

<軽い気持ちで殺人に走る今のティーンたちの事情>

人生に対するはっきりした目的もなく、小さな郊外の町で退屈な日々を送るティーンたち。そのエネルギーのはけ口は、セックスやドラッグヘと向けられる。主人公ボビーと彼の幼なじみ、マーティも、ナンバやドラッグにあけくれる日々を送っていたが、マーティと恋に落ちたリサの登場によって、ふたりの関係が変化する。落ちこぼれのマーティを殴ったり、無理にゲイバーで踊らせたり、彼をいじめて喜ぶボビーに怒りを感じたリサは、仲間のアリやドニーたちとボビー殺しを計画する。大人には理解できない独自の倫理観と価値観を持ち、最後は殺人への衝動を抑えきれず、軽い気持ちで犯罪へと走ってしまうティーンたち。その事件のプロセスを大胆な暴力とセックス描写で赤裸々に描くことで、今どきのティーンの恐るべき実体が暴かれていく。今の日本人にも、けっして無縁ではない荒廃した現実が観客に強烈なインパクトを残す。

<「KIDS/キッズ」で鮮烈な監督デビューを飾ったラリー・クラークの待望の最新作>

セックスやドラッグに溺れるティーンの生態をリアルに描写し、全世界で大きな議論を巻き起こした95年の「KIDS/キッズ」で鮮烈な監督デビューを飾ったラリー・クラーク。写真家として高く評価され、「タルサ」「ティーンエイジ・ラスト」といった写真集でティーンの生態を活写してきたクラークだが、映画監督として認められてからは、スクリーン上でティーンたちの不安定な青春像を見つめてきた。今回の監督3作目では、「KIDS/キッズ」以上にパワフルに10代の心理を描写して、全米マスコミを騒然とさせ、「クラークがドラマ監督としてさらに大きくなった」(プレミア誌)と、スケールアップした演出力を絶賛された。彼は映画の原作となったジム・シュッツ著「なぜ、いじめっ子は殺されたのか?」を読んで映画化を決意。「製作が大変な映画だったが、今の現実を映し出したこの映画は現代に必要な作品だと思う。コロンパイン乱射事件やこの事件が、今の現実社会なのだから」と製作意図を語っている。

<ブラッド・レンフロをはじめ、未来のスターたちが勢揃いしたフレッシュなキャスト>

新人俳優の発掘にかけては定評のあるラリー・クラーク監督。今回はキャスティングに7ヶ月をかけ、作品のイメージを完壁なものにしようと考えた。主人公ボビーにいじめられるマーティ役には「依頼人」でデビュー後、「マイ・フレンド・フォーエバー」などで日本でも人気の高いティーンスター、ブラッド・レンフロ。実在のマーティの写真をもとに役づくりに励み、これまでのイメ一ジを破る大胆な演技で大人の俳優へと変身してみせる。彼をいじめ、最後は仲間たちに殺害されるボビー役には「イン・ザ・ベッドルーム」に出演後、今年は大作「ターミネ一夕ー3」が待機中の実力派ニック・スタール。マーティの仲間のダ二一には、大ヒット作「ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ」で注目されたマイケル・ピット。ティーンたちを先導する殺し屋カーフマン役に「KIDS/キッズ」以後、ラリー・クラーク映画に欠かせない俳優となったレオ・フィッツパトリック。マーティを愛するリサ役を「ヘンリー・フール」のレイチェル・マイナー、ボビーに乱暴される金持ちのアリに「あの頃ペニー・レインと」のビジョウ・フィリップ。リサのいとこ、デレクにこの映画でデビューを飾ったダニエル・フランゼーセ、リサの友人ヘザ一役に短編映画での演技が認められて出演を決めたケリ・ガーナーが扮している。

<クラーク監督を支えるスタッフたち>

今回の映画の製作を担当したのは「アメリカン・サイコ」、「バッファロー66」、「ヴァージン・スーサイズ」など、才気あふれる作品のプロデューサーとして知られるクリス・ハンレイ。共同製作は「ナチュラル・ボーン・キラー」のドン・マーフィ。脚本は「アメリカン・ヒストリーX」で知られるデヴィッド・マッケンナとロジャー・プリスの第一稿をもとに、新人のサチャリー・ロングとロジャー・ピルスが手がけた。撮影はキッドロックのMTVが高い評価を受けたスティーヴ・ゲイナー、プロダクション・デザインはロバート・デュヴァル主演の“The Apostle”のリンダ・パートン、編集は「KIDS/キッズ」のアンドリュー・ハフィッツが担当した。また、ファットボーイ・スリム、オール・ダーディー・バスタード、エミネムなど、ヒップ・ホップやファンク系の人気ミュージシャンによる現代的なサウンドが効果的にドラマを盛り上げている。

ストーリー


南フロリダ。ティーンエージャーのボビー(ニック・スタール)と親友のマーティ(ブラッド・レンフロ)は、子供の頃からいつも一緒に遊んでいた。切れ者のボビーは、父親の信頼を得ており、将来は家族で音響スタジオの経営を計画していた。一万、落ちこぼれのマーティはボビーの言いなりで、そんな彼をボビーの父親は嫌悪していた。ふたりは、ある日、アルバイト先のスーパーで女の子をデートに誘う。ひとりはスレンダーな美人のアリ(ビジョウ・フィリップス)、もうひとりはふっくらした体型のリサ(レイチェル・マイナー)だ。すでに子供もいるアリは恋愛経験も豊富で、ややオクテのリサにデートで積極的にふるまうようアドバイスをする。そして、4人のダブル・デートで、リサはマーティと結ばれ、アリはボビーと関係を持った。デートの後、リサはサーファーとしてひきしまった肉体を持つマーティに夢中になり、遂にステキな恋人を見つけた、と母親に報告する。しかし、そんな娘を母はどこか冷ややかに見ていた。十代後半になっても、はっきり人生の目的が定まらない娘の姿に、内心、失望を感じていたからだ。そんな母の心配を気にとめることもなく、リサは日ごとにマーティとのセックスにのめり込む。

そして、彼と交際を続けるうちに、リサはマーティとボビーのゆがんだ関係に気づく。一見、仲良しの幼なじみに見えるふたりだったが、実はその関係はボビーの一方的な権力に支配されており、彼はまるで自分の奴隷のようにマーティを扱っていた。指示どおりに動かない時は彼に暴力をふるい、ゲイバーで無理矢理、ストリップを演じさせたこともあった。ボビーの暴力は、やがて、リサやアリにも及んだ。マーティと抱き合っているリサに、いきなりベルトで殴りかかったり、アリに自分が作った男性ポルノのビデオを見せながら、彼女を力ずくでレイプしたこともあった。そんなボビーの態度に、リサは怒りをつのらせていく。やがて、マーティの子供を妊娠した彼女は、自分の愛する男性がボビーに奴隷のように扱われるのが許せなくなる。最初はリサの妊娠に動揺していたマーティだったが、次第に彼女に心を許すようになり、ボビーの虐待に耐えてきた過去について告白した時、彼女から衝撃的な提案をされる。「ママの銃でマーティを殺しましょう」。最初は本気にしていなかったマーティだが、ボビー殺害計画は密かに進行する。アリや彼女のヤク中のボーイフレンド、ドニー(マイケル・ピット)、アリの友人のヘザー(ケリ・ガーナー)、リサのいとこのデレク(ダニエル・フランゼーセ)らも巻き込み、どんどん現実味を帯びていく。

一行はアリをおとりにボビーをドライブに誘い出し、ふたりが性交中にリサが母親の銃でボビーを撃つ、という計画を練る。ボビーは言われた通り、ドライブにやってきたが、動揺したリサはどうしても銃の引き金を引けず、この計画は失敗に終る。そして、今度はアリの提案でプロの殺し屋カーフマン(レオ・フィッツパトリック)を計画にひきずり込むことになった。今度は川までボビーをドライブに誘い出し、彼を殺して、その死体をワニに食べさせる、という残忍なストーリーが作られた。

ボビーは仲間たちの殺意にはまったく気ずかず、アリとのセックスが目的でドライブに参加する。ヘザーの合図で、いよいよ、殺人計画が実行され、ナイフを握りしめたドニーが最初の一撃をボビーに加える。血まみれとなったドニーは必死にマーティに命乞いをするが、やがて、とどめの一撃がボビーを襲う。

殺人の後、正気に戻った一行は、激しく動揺していた。カーフマンだけが、冷静に辻棲あわせのアリバイを考えようとしたが、マーティやリサたちはそんな言葉をきちんと受け止めることなどできなかった。殺人の衝撃は、日がたつにつれ、さらにふくらんでいった。友人に救いを求めるリサ、警察への通報を考え始めるアリ、アリバイ工作に必死になるデレク。幼い弟を見つめながら、罪の大きさに打ちのめされるマーティ。誰もが仲間たちのことを疑いだし、半狂乱になっていった。

結局、警察への匿名通報によって、7人の殺人者は捕らえられ、裁判にかけられた。ヘザーは懲役7年。デレクは懲役11年。アリは懲役40年。ドニー、カーフマン、リサは終身刑。そして、ボビーの親友だったマーティは電気イスでの死刑を言い渡されたのだった。

スタッフ

監督:ラリー・クラーク

キャスト

ブラッド・レンフロ
ニック・スタール
マイケル・ピット
レオ・フィッツパトリック

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