原題:failan

2002年ドーヴィル・アジア映画祭コンペ部門・最優秀作品賞・最優秀監督賞、最優秀男優主演賞 2001年大鐘賞映画祭オープニング作品 2001年東京国際映画祭協賛企画コリアン・シネマ・ウィーク正式出品作品 2001年釜山国際映画祭・評論家協会賞主演男優賞 2001年青龍賞・監督賞・主演男優賞

2001年4月28日韓国初公開

2001年/韓国/カラー/116分/ 配給:シネカノン

2003年11月28日よりビデオ発売&レンタル開始 2003年11月28日よりDVD発売&レンタル開始 2003年6月14日より新宿武蔵野館にてロードショー

ビデオ時に変わった場合の題名 ラブレター〜パイランより〜

公開初日 2003/06/14

配給会社名 0034

解説


 全国150万人を感涙の渦に巻き込んだ短編集『鉄道員(ぽっぽや)』に収められ、「こちらの方が断然泣ける」といまだに評判の高い小説「ラブ・レター」。切なく胸に迫る傑作短編を原作に、舞台を韓国に置きかえた逸品が誕生した。
 四十過ぎて独りふらふらと暮らすカンジェは、ある日突然「奥さんが亡くなった」と知らされる。身に覚えがなかったが、かつて小金欲しさに中国人女性と偽装結婚したことを想い出す。女の名は「白蘭(パイラン)」。一度も会うことのなかった“妻”の遺体を引き取りに、カンジェはパイランが暮らしていた町を訪れる。部屋に小さな“夫”の写真を飾り、病と闘いながら必至に働いて言葉を覚えていったパイランの最後の手紙。そこにはカンジェへの純な気持ちが切々と綴られていた…。

 主人公カンジェを演じるのは、『シュリ』の北朝鮮兵役で強烈な印象を残したチェ・ミンシク。孤独な中年男を表情豊かに演じ、まさに「彼以外考えられない」はまり役と言える演技で韓国でも絶賛を浴びた。ヒロインには香港で活躍する美人女優セシリア・チャン。未だ見ぬカンジェを想う一途な姿を透明感溢れる演技で表現し、忘れがたい余韻を残す。また舞台を韓国に置き換え独自の解釈を加えたソン・ヘソン監督の見事な手腕は、海外でも高く評価された。
 日本の素晴らしい原作×波に乗る韓国映画の底力×香港女優の魅力。『パイラン』は、『春の日は過ぎゆく』『ラスト・プレゼント』『猟奇的な彼女』など韓国映画の新たな潮流の中でも、抜群の完成度と涙腺を直撃するストーリーで観る者の心を揺さぶる感動作だ。

ストーリー

イ・カンジェ(チェ・ミンシク)は四十歳を過ぎてもふらふらと暮らす独身男。ビデオショップの店長をしていたが、未成年にアダルトビデオを売ったかどで逮捕され拘留されてしまった。十日ぶりに街に戻った矢先、ボスのヨンシク(ソン・ビョンホ)に声をかけられるが、なにやら苛立っている様子。ヨンシクは古くからの友人だが、今や若い子分を抱えて辺りの店を仕切っており、カンジェはその縄張りでしがなく暮らしている。ビデオショップに顔を出すと、既に若い男が新店長になっていて、文句を言ってもボスに掛け合えと言うばかり。
 カンジェはアパートに戻り、弟分のギョンス(コン・ヒョンジン)から留置場にいた間の出来事を聞く。ソウルのはずれインチョンに足場を置く組織の主な仕事は、クラブの経営と中国からの出稼ぎ労働者を各地に派遣する事だが、警察の手入れで同業者が逮捕された。その影響で何店か休業に追い込まれ、組織間の対立も激しくなっていると言う。

 借金の取り立てを巡って若い子分たちと諍いを起こしたカンジェは、ボスのヨンシクに窘められる。幼なじみだった二人だが今ではまるで立場が違ってしまった。大きな船を買い故郷に帰って暮らす夢を持ってたじゃないか…。久しぶりに酒を酌み交わす二人だったが、ヨンシクは自分の店で敵対する組織の男が得意気に振る舞う姿に腹を立て殴り殺してしまう。現場に居合わせたカンジェは、ヨンシクから身代わりに刑務所に入ってくれと請われ、代償として大金をもらうことを条件に引き受ける。翌日、カンジェのアパートを警官が訪れる。いま出頭しようと思ってたと言う前に、「奥さんのパイランさんが亡くなりました」と告げられる。「パイラン?」身に覚えのないカンジェだったが、そういえば、思い当たる節がある…。

 両親に先立たれ中国から親戚を頼って独り韓国にやってきた康白蘭=カン・パイラン(セシリア・チャン)。だが中華街にいるはずの叔母は既に海外に引っ越してしまい行方が分からない。今さら中国に帰っても身寄りがないし、韓国で暮らすには仕事を見つけなくてはならない。途方に暮れて中国人向けの職業紹介所を訪ねるが、就労ビザがなければダメだと言われる。ただ一つ手がある、韓国人の男と結婚すればいい…。

 そう、むかし小金欲しさに戸籍を貸したことがあった。つまり偽装結婚。中国人のホステスをクラブで雇うために、組織がよく使う手だ。手続き用に書類だけ持っていき相手の顔すら見なかったけれど、その女が死んでしまったらしい。紙の上だけとはいえ妻だった女だ。どうせあと数日で刑務所行きだし気が乗らないが、遺体を引き取りに行かなくてはならない。カンジェは弟分のギョンスと一緒に列車に乗り、そこで初めてパイランの写真を目にする…。

書類上の結婚を済ませたパイランは、ギョンスの案内で日本海沿いの小さな町・テジンのいかがわしいクラブに連れて来られる。どうやらそこでホステスとして働かなくてはならないらしい。ところがパイランは突然咳き込み吐血してしまう。病気を患っているようなのだ。これには女を手配する役のギョンスも頭を抱えてしまい、仕方なく地元のクリーニング屋に雇ってもらうよう話をつける。こうして慣れないながらパイランは韓国での生活を始めたのだった。

 パイランが暮らしていた町へと向かう列車の中で、カンジェはパイランの書いた手紙を見つける。「カンジェさんへ 結婚ありがとうございました。結婚してくれたから、韓国で働くことできました。ここはみんなやさしいです。ずっとここで働きたいです。みんなやさしいけど、カンジェさんがいちばんやさしいです。私と結婚してくれたから」

 韓国語を独習しながら、パイランは毎日熱心に働いた。海辺の町の静けさ、自転車での配達、クリーニング店のおばさんも親切にしてくれる。一度、入国管理局の人が尋ねに来たけれど、婚姻届があったから大丈夫だった。書類に貼ってあったカンジェの証明写真と、彼が身に着けていたという赤いスカーフが心の支え。でも働かせてくれた組織に借金を返さなくてはいけないのに、パイランの病気はどんどん悪くなっていく。せめて一目、カンジェに会いに行きたいと、パイランは仁川行きのバスに飛び乗った…。

 冬景色の町に着いたカンジェとギョンスは、パイランに仕事を斡旋した地元の男に会う。病気だと聞いていたのに何の世話もしなかったのだ。23歳の若さで故郷を離れて孤独に死んでしまったのか。友人のために刑務所に入ろうとしてる大馬鹿者の自分と、案外お似合いかもしれない。
 身元照会のため地元の警察に顔を出すと、偽装結婚がばれるかと思い気が気でなかったのに、手続きはすぐに済んでしまった。見知らぬ町で独り人が死んだっていうのに、確認だけして終わり?死んでしまったのは自分たちのせいじゃないのか?やり場のない苛立ちと怒りを抱えながら、カンジェは葬儀場で冷たくなってしまったパイランにはじめて出会う。
 パイランは美しい姿のまま横たわっていた。一度も会ったこともない“妻”は、自分を「世界でいちばんやさしい人」と想ってくれていた。その存在を知ったときにはもうこの世にいなかったなんて、一体自分はどうすればいいんだ? 酒に酔いギョンスに毒づいてもカンジェは気持ちを晴らすことが出来ない。そして遺骨を抱え、パイランが働いていたクリーニング屋を訪ねたカンジェは、彼女が残した最後の手紙を受け取る。そこにはカンジェへの純な気持ちが切々と綴られていた…。

スタッフ

原作:浅田次郎「ラブ・レター」
監督:ソン・ヘソン
脚本:ソン・ヘソン、アン・サンフン、キム・ヘゴン
撮影監督:キム・ヨンチョル
音楽:イ・ジェジン
製作:TUBEピクチャーズ

キャスト

チェ・ミンシク
セシリア・チャン
ソン・ビョンホ
コン・ヒョンジン
キム・ジヨン
ミン・ギョンジン
チャン・ユサン
チ・デハン
ソン・ビョンヒ
シン・チョルジン
キム・ヨンソン

LINK

□公式サイト
□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す
http://www.failan.co.kr/
ご覧になるには Media Player が必要となります