原題:Lost In La Mancha

映画『ドン・キホーテ』は、こうして作られなかった!

2002年ベルリン国際映画祭正式出品作品

2002年8月2日イギリス初公開

2002年/アメリカ・イギリス/カラー/93分/ 提供:シネカノン、クロックワークス 配給:シネカノン

2004年02月27日よりDVDリリース 2003年5月10日より渋谷シネ・アミューズほか全国公開

公開初日 2003/05/10

配給会社名 0034

解説


『未来世記ブラジル』『バロン』『12モンキーズ』…、他の追随を許さない圧倒的な映像世界とストーリーテリングで観客をうならせてきた鬼才テリー・ギリアム監督。待望の、待望の最新作『ドン・キホーテ』が始動!!主演はハリウッドきっての実力派ジョニー・デップ、共演は彼の現在のパートナー・ヴァネッサ・パラディ、そしてフランス映画界の重鎮ジャン・ロシュフォール。総製作費50億、舞台は17世紀のスペイン、ラ・マンチャの地、タイムスリップしてきた現代のエグゼクティブ、ジョニー・デッブが繰り広げる愛と冒険
の旅!!そして彼らに降りかかる突然の雷雨、上空を飛び交うNATOの空軍機、ドン・キホーテを演じるロシュフォールの異変…、この空前の超大作に、一体何が起こったのか!?2002年ベルリン映画祭ワールドプレミアではロバート・アルトマン、ウディ・アレンも激賞し、『地獄の黙示録』の撮影現場を追った『ハート・オブ・ダークネス』を凌ぐ傑作と迎えられたあの作品が、達にベールを脱ぐ!

「映画を作るってことは突き詰めて言えば2つの事だ。信念と勢いだな」
——テリー・ギリアム

ストーリー



2000年9月、テリー・ギリアム監督の最新作「The Man Who Killed Don Quixote」の撮影が始まった時、この作品をめぐっては、10年に及ぶ準備期間、複数のプロデューサーの関与、そして二度に渡って撮影を始めようとした経緯など、すでに波乱に満ちた過去があった。やがてギリアムは拠点をヨーロッパに移し、4000万ドルという製作費を調達するという困難な仕事を成し遂げる。そのおかげで、彼はハリウッドで製作することによるクリエイティブ面での制約を受けずに済むかのようにみえた。

作家セルバンテスが残した、名作ドン・キホーテの物語。17世紀、スペインのラ・マンチャ地方。偉大な騎士の勇敢で気高い物語に取り愚かれたドン・キホーテは自身を孤高の騎士だと思い込み、老いた駄馬ロシナンテにまたがり、従者サンチョ・パンサをロバに乗せて冒険の旅にでる。丘の上の風車を何本もの腕をもつ巨人と信じ、突進するドン・キホーテ。狂気と正気の境を祐偉いながら彼が見る世界はまるで子供の視線と一緒で、不思議な魔法に満ちた幻想的な世界だ。ギリアム版は、ジョニー・ゲップ演じる売れっ子CMプロデューサーが、CM撮影中に17世紀のスペインにタイムスリップするところから物語は始まる。ドン・キホーテと出会い、サンチョ・パンサに間違えられての波乱の連続、そしてヴァネッサ・パラディ演じるアルティシドーラ姫との恋…。これまでのギリアムの作品には、キャラクターに必ずどこか彼自身が投影されてきたが、なかでもドン・キホーテは別格だ。ユーモアやダークな部分、現実とファンタジー、狂気と正気、ドン・キホーテの物語にはギリアムの世界そのものが込められている。

ドン・キホーテの物語を映画化しようとしたのはギリアムだけではない。57年、映画作家オーソン・ウェルズもまた、ドン・キホーテの映画化を試みている。ウェルズは他の映画に出演しながら白ら資金を集め、撮影は断続的に続けられていった。それはドン・キホーテを演じた役者フランシスコ・リゲラの死後もすすめられたが、85年、ウェルズの死によって作品は未完のまま残された。
「過去のキホーテ映画化は必ず災難に遭っている。呪われた企画なんだ」(ギリアム)。

しかし、ギリアムの映画製作の歴史もまた、受難の連続だった。その作品はどれもオリジナリティに溢れ、豊かな映像美とストーリーで観客を魅了してきたが、その規模や脚本の難しさによって、物議を醸さなかったことはない。『未来世紀ブラジル』のアメリカ公開をめぐって彼が当時のユニヴァーサル社長と大っぴらにケンカをしたこと——彼がユニヴァーサルに質問をぶつけた85年の伝説的なヴァラエティ誌での広告「いつになったら私の映画を公開するつもりですか?」を含めて——によって、彼は好戦的で権力に刃向かう者という評判を得ることになった。(ユニヴァーサルは94分のハッピーエンドの映画を望んだ。ギリアムは142分のヨーロッパ版に固執した。結局、二者は131分で妥協した。)どの作品も基本的には批評的、興行的に成功を納めてきたギリアムだが、膨大な予算超過を招いた『バロン』は興行的にも失敗し、ここでギリアムのハリウッドでの悪評は一気に高まることになった。そして15年以上ハリウッドのシステムと闘い続けた結果、ギリアムは巨大な権力に刃向かう非現実的な夢を追う者としてドン・キホーテのように追われていった。

クランクイン8週間前にマドリードの製作チームに合流した後、本作の監督キース・フルトンとルイス・ぺぺは様々な問題点をすぐに目の当たりにする。衣装はイタリア、セットはスペイン、メイクはイギリス、役者はイギリス、フランス、スペイン…、キャストもスタッフも様々な国から参加しているため、言葉の壁で細かい点を話し合うのに苦労したこと、役者は少ないギャラで他の仕事のスケジュールの合間をぬって参加するため一同に介せないこと、さらに、調教されていない馬から、なんと防音できないサウンドステージまで、あらゆる事が製作の進行を妨げた。しかし、その間もずっと、ギリアムの企画がついに実を結ぶという興奮はどんどん膨れ上がっていった。スタッフは巨人襲撃のスクリーン・テストを見守り、人形師たちは等身大のマリオネット軍団をリハーサルし、ギリアムとジョニー・ゲップは脚本を徹底的に検討した。ジャン・ロシュフォールがキホーテの鎧に身を固めた頃には、まだ先は長いとはいえ、輝かしい成功が約束されたように思えていたのだ。

クランクインするや否や、まるで聖書にあるような幾多の受難が彼らを待ち構えていた。まず、突発的な大洪水でセットが壊れ、カメラ機材に損害が発生した。次に、ロシュフォールが重病になった。そしてクランクイン6日目にして、製作は頓挫に追い込まれた。ドキュメンタリーはその後の展開も記録し続けた。待機するスタッフ、「不可抗力」の解釈に議論する保険会社とプロデューサー、そしてその背後で、ギリアムは自分のプロジェクトにおける信念を維持しようともがいている。

メイキングムービーは、得てして映画公開に合わせてその映画をよりコマーシャルに売り込むために存在しがちだ。だが本作は、その舞台裏を滅菌消毒して携わった人々がいかに努力したかを描いているというよりも、私的な葛藤から予期しようがない天災までキツい現実に自らツッコミを入れながら、映画製作というクリエイティブなプロセス自体に元々備わっていた「脆さ」を描き切ったパワフルなドラマだ。これは映画史上稀にみる、まだ存在していない映画についての映画であり、さらには誰もがテリー・ギリァムの完成版を見たくなる、最高の予告編なのだ。

スタッフ

監督:キース・フルトン、ルイス・ペペ
製作:ルーシー・ダーウィン
ナレーション:ジェフ・ブリッジス
編集:ジェイコブ・ブリッカ
音楽:ミリアム・カトラー
アニメーション:ステファン・アヴァロス、チャイム・ビアンコ
絵コンテ:テリー・ギリアム

キャスト

テリー・ギリアム
ジョニー・デップ
ジャン・ロシュフォール
ヴァネッサ・パラディ

LINK

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