原題:AFTER WAR

辛 韓国映画祭2003/HOT ! KOREAN FILM FESTIVAL 2002 上映作品 2002年全州国際映画祭公式プロジェクト 2002年ロカルノ国際映画祭ビデオ・コンペティション部門

2002年/デジタル/カラー/36分(『広島からの手紙』) 2002年/デジタル/カラー/38分(『サバイバル・ゲーム』) 2002年/デジタル/カラー/32分(『ニューイヤー』)

2003年1月25日〜2月14日まで辛韓国映画祭2003、テアトル池袋にて上映

公開初日 2003/01/25

公開終了日 2003/02/14

配給会社名 0337/0049

公開日メモ 簡単な設定のもと俳優に自発的に科白を発話させ、それをカメラ/録音機にドキュメンタルに収める作風で知られる諏訪敦彦監督。その彼が短篇オムニバス《AFTER WAR》の自分用の素材に選んだのがヒロシマだった。

解説


『広島からの手紙』
簡単な設定のもと俳優に自発的に科白を発話させ、それをカメラ/録音機にドキュメンタルに収める作風で知られる諏訪敦彦監督。その彼が短篇オムニバス《AFTER WAR》の自分用の素材に選んだのがヒロシマだった。諏訪にはドキュメンタリー作家ロバート・クレイマーにその次回作品での協力を約束した前史があった。現代の広島の若者を捉える意図をもつものだったが、それはクレイマーの急逝で途絶する。広島育ちの父母をももつ諏訪は先達の遺志を継ぐかのように広島へ来訪。むろん広島は原爆記念館の展示写真、クレイマーの企画中絶作品など20世紀映像の集中点。その意識を研ぎ澄まし、彼は韓国女優キム・ホジョン(『バタフライ』ヒロイン)の協力を仰ぎ、広島についての作品を撮ろうとする。全体は一本の映画製作が発進するまでの過程のみを描写する。同時にこれは「映画についての映画」の枠組ももち、映画のフィクション性を現実に向け過激に反転させる彼の従前の問題意識もそのまま継承されている。諏訪作品特有の長回しも頻出。

『サバイバル・ゲーム』
『バタフライ』で手持ちデジタルカメラを駆使した監督ムン・スンウクはこの短篇でも同様の撮影法を踏襲した。現実に非現実が忍び込んでくる恐怖感覚も同じ。主人公の株式ブローカー(『バタフライ』の運転手K)が加わる焼肉屋での会合の長いシチュエーション(そこで手持ち撮影は第2カメラ、マイク持ちなどスタッフの姿まで映してしまう)ののち、作品は一気加勢に不正な株操作の主犯として突然追い詰められた主人公が身を匿すため入ったサバイバル・ゲームが、現実/非現実のあいだで無気味に変貌するさまを捉えはじめる。停滞と飛躍を盛り込んだ類例のない「序破急」のナラティヴがこの監督の特徴だろう。
主題《AFTER WAR》の「WAR」は本作では90年代後半韓国を襲ったバブル崩壊、ハイテク戦争ごっことしてのサバイバル・ゲーム自体、そしてそれを好む感性をつくった70年代韓国の軍国主義時代など多様な意味にかけられている。

『ニューイヤー』
暗黒街映画風の物語ながら人物を等身大に捉えた傑作『ルアンの歌』を撮った中国第6世代の俊英・王小帥。本作では演技経験のない素人たちにカメラを向けながら、旧正月を迎えた繁栄都市・上海の多元的な音も捉えるなど、さらにドキュメンタルな人物/空間把握が達成された。胃癌の父は僅かな緩恢期に最期の旧正月を迎えようと義理の叔父のもとに運ばれる。母とともにアメリカに住んでいた娘は上海に戻るが父の病状は次第に悪化しはじめる……。経済的成功を求め次々とアメリカに移住していった上海人たちが対価として支払った大家族主義の崩壊と孤独への墜落。娘の帰国の遅滞は「9・11」の影響でビザ発給が遅れたためだが、本作での「WAR」は、上海人たちが自らに強いた痛ましい努力を指しているだろう。
人間的で深い感情へと沈潜してゆく作品後半の推移が見事だ。

ストーリー



『広島からの手紙』
女優キム・ホジョンは監督・諏訪と、「ヒロシマについての映画」の出演と脚本協力に同意し広島を来訪。
だが待合せ場所に諏訪は来ず、自分の不在中に広島を見てきてほしいとのみ、広島在住の在日韓国人から伝言を受ける。そのふたりの対話。そして被爆家族に向けられた手紙の朗読。一方諏訪も主題の決定に逡巡しつつ、息子とともに広島をさまよっていた……。

『サバイバル・ゲーム』
ビジネスパートナーとの宴会の席で主人公はサバイバル・ゲームの趣味をもつ旧友に偶然再会する。翌日彼が会社に行くと株式不正操作の嫌疑で会社が査察を受け書類押収されたと知る。真実露呈の恐れ。しかも自分が主犯に祭り上げられつつある気配。彼は焼肉屋で出会った旧友を思い出し、その避暑用別荘へ行く。その近隣ではサバイバル・ゲームが多くの同好の士の間でおこなわれていて、彼もそれに参加。だ
がそこに、捜査のためか警官が姿を現す……。

『ニューイヤー』
母とともに米国に在住する娘は、胃の摘出をした父が旧正月を病院以外で迎えるべく義理の叔父のもとへ運ばれた旨、連絡を受けた。彼女の一族はかつては大家族主義だったが、多くがアメリカヘと移住、いまは長期離散の状態にあった。「9・11」の影響でビザ発給が遅れたものの彼女はようやく懐しい生地・上海へ。義理の叔父の家へ直行するも、父の病状は悪化、彼は病院に戻される。娘は母に父との最期の会話をしてもらおうと携帯電話でアメリカにいる母を呼び出し、その電話を病床の父の耳もとに差し向けるが・・・。

スタッフ

『広島からの手紙』
監督:諏訪敦彦

『サバイバル・ゲーム』
監督:ムン・スンウク

『ニューイヤー』
2002年/デジタル/カラー/32分
監督:ワン・シャオシュアイ(王小帥)

キャスト

『広島からの手紙』
出演:キム・ホジョン

『サバイバル・ゲーム』
出演:チャン・ヒョンソン

『ニューイヤー』
2002年/デジタル/カラー/32分
監督:ワン・シャオシュアイ(王小帥)

LINK

□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す