原題:Full Frontal

2002年ヴェネチア国際映画祭正式出品作品(アップストリームコンペ部門)

2002年8月2日全米初公開

2002年/アメリカ/カラー/101分/DTS / Dolby Digital / SDDS 配給:アミューズ・ピクチャーズ

2004年05月21日よりDVD発売開始 2004年12月20日よりお正月第一弾シャンテシネ、新宿武蔵野館、関内MGAほか全国順次ロードショー公開 2004年05月21日よりビデオリリース

公開初日 2003/12/20

配給会社名 0008

解説


『エリン・ブロコビッチ』『オーシャンズ11』に続いてJ・ロパーツが三たびソダーバーグ監督と組んだ、スタイリッシュかつコミカルでせつない都会派群像劇

 『トラフィック』でアカデミー監督賞に輝き、名実ともにトップ映画監督の地位にのぼりつめた才人ステイーヴン・ソダーバーグ。彼の監督作『エリン・ブロコビッチ』でついにアカデミー主演女優賞を手にしたジュリア・ロバーツ。現代アメリカ映画の最前線を快走するふたりが、大ヒット作『オーシャンズ11』に続いて三たびタッグを組んだ!
 これはロサンゼルスのショウビジネス界とその周辺で生きる8人の男女の24時間の物語。華やかさと残酷さが表裏をなすキャリア人生を何とかサヴァイヴァルしているかに見える成功者たち。だがひと皮むけば、心の中は弧独と不安が渦を巻き、本物の繋がりに飢えている。誰かを愛したい人、誰かに愛されたい人、自分しか愛せない人。そんな男女のいとおしくなるほど痛々しい裸の心が、ささやかな愛にたどりつくまでを、良質の短編アンソロジーのような構成と、あっと驚く映画的仕掛けで描いてみせた、スタイリッシュな野心作が本作である。

ロサンゼルス。
裸の心を抱えて、誰もが少し誰かとつながっている

 登場するのは強気のポーカーフェイスでは隠しきれない心の空洞を抱えた大人たち。愛妻との結婚生活と雑誌社でのキャリアが同時崩壊しつつあることにも気づかないほど、常に心配事の耐えない脚本家。欲求不満を従業員の首切りで解消する大企業の女性人事部長。ネットで知り合った男性との初デートの約束に心ときめかすマッサージ・セラピスト。自己主張の強い俳優に手を焼く劇作家。無名時代の仲間との思わぬ再会に心ほぐされる映画女優。どこか自意識過剰な黒人俳優。
 そして彼らのほとんどが、今夜、ビヴァリーヒルズの超一流ホテルで開かれる大物プロデューサーの誕生パーティーに招かれていた。だがパーティーの主役が決して現れないことを、彼らはまだ知らない……。

初監督作『セックスと嘘とビデオテープ』の原点と、
インディ作家精神に回帰したソダーバーグの野心的試み

 本作では二重・三重の入れ子構造になった物語が、35ミリフィルムでオーソドックスに撮られたパートと、デジタルヴィデオで撮影されたドキュメンタリー・タッチのパートに分かれており、それらが歯切れよく交差しながら進行してゆく。『トラフィック』『オーシャンズ11』でソダーバーグが発揮した、複雑な物語と多数の登場人物を鮮やかにさばく作劇術が、ここではさらに高い完成度へと進化している。
 ビデオとフィルムの併用や、複数の人物の関係性の中から次第に隠されていた深層心理が浮かび上がってゆく語り口は、ソダーバーグのデビュー作『セックスと嘘とビデオテープ』を思い起こさせる。彼自身、今『セックスと〜』を撮れば『Full Frontal』になっていただろうと語っており、その意味で本作は彼が自らの原点に回帰した作品と見ることもできるだろう。
 原点回帰は作品の主題だけではない。本作は極めて少人数のクルー編成で、たった18日間で撮影された。出演者たちには、衣裳は自前、現場には自分で運転して来るように……といった、非ハリウッド的な10のルールが課せられた。映画作りの方法においても、今回ソダーバーグは意識的にインディ精神に回帰してみせたのである。いかにも永遠の映画青年ソダーバーグらしい挑戦と言えよう。

実力派が集結したアンサンブル・キャストと、
ブラピを始めとする豪華カメオ出演者たち

 ジュリア・ロバーツ以下、キャストにはソダーバーグの野心に賛同した個性豊かな実力派が集結した。ロバーツの相手役を務めるのは『英雄の条件』などで度々NAACPイメージ・アワードを受賞しているブレア・アンダーウッド。『マルコヴィッチの穴』でオスカー候補になったキャサリン・キーナーと、『インソムニア』のニッキー・カットともにこれが二本目のソダーバーグ監督作。『光の旅人 K-PAX』のメアリー・マコーマック、『めぐり逢えたら』のデヴィッド・ハイド・ピアースは、舞台俳優として輝かしいキャリアを持つ。さらに『X−ファイル』のデヴィッド・ドゥカヴニーが物語のキーパーソンである映画製作者を演じている。
 加えてブラッド・ピット、テレンス・スタンプ、デヴィッド・フィンチャーらが映画ファン心理をくすぐる遊び心たっぷりの登場シーンで楽しませてくれる。

ストーリー


ニューヨークの空港でTV俳優ニコラス(ブレア・アンダーウッド)と合う女性記者キャサリン(ジュリア・ロバーツ)。ブラッド・ビット、の新作映画で共演者に抜擢された彼にインタヴューするのが彼女の仕事だ。ふたりはロサンゼルス行の飛行機に乗り込んだ。

 ロサンゼルス、金曜日。今夜、ビヴァリーヒルズの高級ホテルで、映画プロデューサー、ガス・デラリオ(デヴィッド・ドゥカヴニー)の40歳の誕生パーティーが、親しい業界関係者たちを招いて開かれることになっている。パーティーに招かれた者、招かれたと思い込んでいる者、招かれなかった者、それぞれの一日が今、始まる。
 出勤前、リー(キャサリン・キーナー)は、脚本家・雑誌ライターの夫カール・プライト(デヴィッド・ハイド・ピアース)に離婚を告げる置手紙を書く。彼女はある会社の人事部長で、最近は社員たちの首切りが主な仕事になっている。ストレスの増す日々。彼女は転職を考え始めている。
 カールは置手紙に気づかないまま、勤め先の雑誌社に出勤する。彼は優秀な書き手だが、心配性で、常に何かを思い悩んでいる。自分のことで頭がいっぱいで、リーに愛人がいることなど思いもよらない。その日、彼は編集長(ジェリー・ウェイントローブ)に呼び出され、解雇を告げられる。
 劇作家・俳優のアーサー・デイーン(エンリコ・コラントーニ)は、カールと共同で書いた、ヒトラーが主人公の実験的新作『響きと総統』を演出中。だが、今夜が初日だというのに、自己主張が強いヒトラー役の俳優(ニッキー・カット)に悩まされ、稽古は思うように進まない。アーサーはこの週末、インターネットで知り合った女性とトゥーソンで会うことになっており、そのせいか、どこか上の空である。
 アーサーが会おうとしているのは、実は、リーの妹のマッサージ師リンダ(メアリー・マコーマック)である。アーサーは40歳だが、リンダは彼の嘘を信じてトムという名の22歳の画家だと思っている。彼女は彼との初デートを心から楽しみにしている。リーは彼女にガスを紹介しようと考え、今夜のパーティに誘うが、リンダは服がないと言って断る。

ロサンゼルスへ向かう飛行機の機内。ニコラスは熱烈な愛を告白する手紙を見つけ、キャサリンが書いたに違いないと考えるが、彼女は否定する。二人の間に気まずい空気が覆い始める。

 リンダは、明日41歳の誕生日を迎える姉にプレゼントを渡すため、仕事先のホテルで彼女と待ち合わせる。トゥーソンでのデートの件に不快感を表すリー。彼女は去年、リンダがくれた誕生プレゼントについても文句を言う。口論の末、今年のプレゼントを開けたりーは、それが去年のプレゼントの“入れ物”と知って唖然とする。

撮影現場に入ってからも、キャサリンのインタヴューは続く。ブラッド・ビットとの共演シーンの合間に質面に答えるニコラス。その時、突全、“カッと”の声が……。

 マッサージを頼まれたりンダがホテルの一室を訪ねると、偽名を使ったガスが待っている。リンダもまた、アンと名乗っている。リンダは、500ドルと引き換えに彼の変わった性欲を満たす手伝いを要求されて戸惑うが、承知する。彼がガスだと気づいた彼女は、受け取った金で今夜のパーティーに出席するためのドレスを買う。
 カールが帰宅すると、飼い犬が倒れている。動揺して獣医(トレイシー・ヴァイラー)を呼ぶカール。犬はガスのパーティーの差し入れ用に作ったブラウニーを食べて、脱水状態に陥っていた。ブラウニーに混ぜたハシシのせいである。命に別状ないと聞いて、カールはほっとする。
 劇場では『響きと総統』の幕が開く。ヒトラー役の俳優は稽古の時とはうって変わって、自信に満ちた名演を見せる。
 ガスの誕生パーティーに招待客たちが集まってくる。だが主役のガスはいつまでたっても現れなかった……。

スタッフ

監督:スティーヴン・ソダーバーグ
脚本:コールマン・ハフ
製作:スコット・クレイマー、グレゴリー・ジェイコブス
撮影監督:ピーター・アンドリュース
編集:サラ・フラック

キャスト

フランチェスカ/キャサリン:ジュリア・ロバーツ
カズ:デヴィッド・ドゥカヴニー
リー:キャサリン・キーナー
リンダ:メアリー・マコーマック
カール:デイヴィッド・ハイド・ピアース
カルヴィン/ニコラス:ブレア・アンダーウッド
ヒトラー:ニッキー・カット
アーサー/エド:エンリコ・コラントーニ

LINK

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