原題:The Blessing Bell

第3回東京フィルメックス・特別招待作品::http://www.filmex.net/

2002年/日本/カラー/87分/1:1.85 配給:東北新社

2004年07月23日よりビデオレンタル開始 2004年07月23日よりDVD発売開始 2003年11月22日よりシネアミューズにてロードショー

公開初日 2003/11/22

配給会社名 0051

解説


『弾丸ランナー』で鮮烈なデビューを果たしたのが96年。以来、小気味よい映像とドミノ倒しのような展開、追随を許さない疾走感あふれるストーリーテリングで、国内外を問わずカリスマ的な存在感を放ってきたSABU監督。彼の待望の新作『幸福の鐘』は、これまでの独創的な演出を一転、大胆なほどシンプルな描写の中に人生の真理を凝縮させた新境地と言える作品となった。

日本に先駆けた海外映画祭での上映では、批評家がこぞってレビューを書き、そのどれもが新たな”SABUワールド”を大絶賛。「シンプルで感動的」「寓話的でユーモアに溢れている」と評された本作品は、ベルリン国際映画祭でNETPAC賞(最優秀アジア映画賞)を受賞、会場は惜しみない拍手に包まれた。

これまでのSABUワールドの主人公達のように、行き場のないパワーを放出して暴走することなく、不安定な世界を一歩一歩進んでいく主人公。音楽を極力入れず、時に無音を効果的に用いる抑えた演出の中で、主人公はラストに至るまで一言も発しない。つねに受身で客観的に、不安定な世の中、不安定な人々を見つめる姿が実に淡々と描かれ不思議な空気感がただよう。そこに描かれているのは、紛れもない現代人の姿。そしてある意味ベケットやカミュにも通じる、人間の不条理さ、滑稽さ、そして足早に過ぎる日常の中で、自分が幸せかどうかもわからない状況である。ひたすら歩き、わずか2日間で一生分もの出来事に遭遇した末に、男は今まで当たり前で実感したことのない身近にあった幸せに気づく。確かなものなどなにもないと感じられる現今、こうした「小さいけれど確かな幸福」こそが生きてゆく中で、不可欠なものなのかもしれない。

主人公の五十嵐役にはSABU監督や北野武監督作品の常連、寺島進。脚本段階から彼を想定して書かれたという本作品で、難しい役どころを自然に、しかし印象的に演じている。さらに、西田尚美、篠原涼子、益岡徹、塩見三省、そして鈴木清順といった個性的な顔ぶれが、人生の極限に立つ”通りすがり”の人々として登場する。撮影は、『帝都物語』『幻の光』等を手がけ、SABU監督が「この人しかいない」と強く望んだ中堀正夫。クレーンを使用した5分間におよぶラストの長回し、そして朝日のシーンに、彼ならではの映像美を発揮。さらに、主人公の歩む行程の行きと帰りでレンズを換え、その心境の変化を映像で雄弁に物語る。また、海外の映画祭でも話題となった2分間の無音のシーンが高揚と緊張感を高め、幸福感あふれるラストを際立たせている。

ストーリー



寂れた工場地帯の朝。ひとつの工場が閉鎖され、切腹した工場長の唸り声が響いた。職を失った工員のひとり、五十嵐悟は作業服のまま、あてもなく歩きはじめることしかできない。行き交う車、行き交う人。五十嵐の意図に関わりなく、”世界”はさまざまな形で動いている。臓器提供を申し込んだヤクザ、妻を愛しすぎるあまり殺人をおかしてしまった板前。ふたりの子供を抱えながらアパートが火事で燃えてしまったシングルマザー。病床にいながら妻を心配する老人。そんなこととは知らずに、妻は宝くじに当り、ショック死してしまう。自分はつまらない男だと川に身を投げるサラリーマンや、ガンを告知され自分を見失ってしまった男…ひとにとっての幸せって何なのか?じゃあ俺にとっては?たった2日間で次々と色んな出来事を偶然目にし、出会い、五十嵐はそんなことを考え始めた

スタッフ

監督・脚本:SABU
エグゼクティブ・プロデューサー:樫野孝人、安永義郎、熊澤芳紀

キャスト

寺島進
西田尚美
鈴木清順
板尾創路
篠原涼子
益岡徹

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