原題:Black Narcissus

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2001年/韓国/カラー/35mm/103分/シネマスコープ/ドルビーデジタル/ 配給:ギャガ・コミュニケーションズ

2003年12月24日よりビデオレンタル開始 2003年5月31日よりシブヤ・シネマ・ソサエティにてロードショー

公開初日 2003/05/31

配給会社名 0025

解説


なにがあっても君を守る−−−。

幼い日、憧れた少女。恋という言葉すら知らなかったあの頃、少女の微笑みが心を満たし、その声に胸が高鳴った。少女は、少年の穏やかな愛情に心地よい安らぎを感じていた。だが、揺れ動く時代は2人を容赦なく苛酷な運命へと導く・・・。

『黒水仙』は、裕福な家に生まれた娘ソン・ジヘと、その家の使用人の息子として育ったファン・ソクがやがて直面する朝鮮戦争という悲劇に翻弄されながらも愛を貫く運命の物語である。

80年代に次々とヒット作を生み出し”韓国のスピルバーグ”と称されたペ・チャンホ監督が今回テーマに選んだのは、戦争によって引き裂かれてきた恋人たち。「君に再会するために、俺は必ず生き残る」−極限状態の中で交わした誓いだけを支えに、苛酷な運命を生き抜いてきた2人の半生を描き出す。だが、巨匠ペ・チャンホ監督は、2人の物語をごくありふれた悲恋ドラマには仕立てていない。現代の韓国で起こった殺人事件の捜査を担当する刑事の手によって過去が暴かれ、やがて50年もの間不滅の愛を貫き通した2人の運命が白日の下にさらけ出される。観客は、2人の愛の深さに感動し、歴史が引き起こした罪を嘆き、やがて訪れる衝撃的な結末に涙をぬぐうことさえできないはずだ。

2001年。第6回釜山国際映画祭オープニング作品として上映された『黒水仙』は、ペ・チャンホ官途ックひさびさのメジャーカムバック作品として話題を集めた。上映チケットが僅か数分間で完売したことからみても、観客の期待度が伺える。現代から過去への謎解きのように展開するミステリアスなストーリー、捕虜収容所からの逃亡シーンや宮崎での追跡シーンの息を呑むような迫力の映像、少ない台詞で見事に心の内面を演じきった俳優陣。ここ数年新進若手監督の活躍で活況を呈している韓国映画界において、まさにベテランの実力を存分に見せつけたこの作品に、観客は熱狂し賞賛の拍手を贈った。

さらにもうひとつの話題は、なんといってもペ・チャンホ監督と共に80年代の韓国映画界を支えた名優アン・ソンギとの10年ぶりのコンビ復活である。アン・ソンギは、50年間ひとりの女性を想い続ける寡黙な男ファン・ソクを圧倒的な存在感で演じ、作品に一段と深みを与えている。事件の捜査を通して、朝鮮戦争当時の捕虜収容所で起こった出来事を明らかにしていくオ刑事を演じるのは、『情事 an affair』『イルマーレ』などラブストーリーもので知られる若手スター、イ・ジョンジェ。これまでは恋に落ちる心優しい青年のイメージが強かったが、この作品では刑事らしく見えるように発声方法や歩き方まで変え、また初のアクションシーンにも挑戦するなど本格俳優としての地位を確かなものにした。裕福な家庭に生まれ、やがてソクと恋に落ち愛を貫くヒロイン、ソン・ジへ役には、アイドル女優から演技派女優へ成長したイ・ミヨン。20歳から70歳まで演じなければならない難役に挑んだ本作で、高い評価を得た。

『黒水仙』は、『シュリ』『JSA』の大ヒットから始まり質の高い映画が次々に誕生している”韓国映画ルネッサンス”の円熟期にふさわしい、珠玉の一作である。

ストーリー


50年もの間、独房に収監されていた男、ファン・ソクが釈放される。彼に手渡された所持品は、ごくわずか。ハンカチ、木彫りの人形、そして金の指輪。

漢江に浮かび上がる水死体。被害者はヤン・ダルスという男。殺人課のオ刑事は、残されたわずかな遺留品を元に捜査を進めていく。被害者宅に残された色褪せた写真を手がかりに、その写真が撮影された巨済島へと向かう。
朝鮮戦争中、捕虜収容所が置かれていた巨済島の小学校を訪れた彼は、ダルスが当時脱走捕虜を捕らえる任務についていたことを知る。ダルスの幼馴染みだったマノの家には、ソン・ジヘという女性が遥か昔に書き記した日記が残されていた。
その夜、元警察署長でかつてダルスと同じ任務についていた男が死体で発見される。

1952年4月、その日記は始まっていた。ソン・ジヘは、”黒水仙”という暗号名で尼僧に成りすまして収容所に潜入し、共産主義捕虜の脱走を手助けしていた。だが作戦は失敗し、ダルスに狙われることになる。ジへの家の使用人の息子ソクは、ジへの身を案じ、彼女を連れて脱出捕虜の隠れ家へ逃げた。飢えと死の恐怖が支配する日々のなかで、ジへにとってソクは心のよりどころだった。子どもの頃から常に彼女を守りささえてきたソク。2人は何があっても一緒に生きようと誓いあうのだった。

日記はここで終わっていた。殺されたダルスと元警察署長、ソクとジへ。50年前の出来事と、ソクの釈放と同時に起こった二つの殺人事件。謎を解くため、オ刑事はソクを訪ねる。
彼は今もジへを想い続けていた。「なぜ?」の問いにソクが答える。「将来の夢を持つことも許されない貧しい少年にとって、彼女は生きる希望そのものだった」と。そして幼い日、「彼女が死んだら自分も死ぬ」と心に誓ったことを、言葉少なに語るのだった。

オ刑事はようやくジへの消息を突き止める。彼女はマノが日記を持ち逃げしたあとに起こったすべてを語り始めた。マノの密告でダルスらに襲撃された隠れ家、仲間の裏切り、そして別れの時、ソクと交わした約束−「再会したとき、私の指にこれをはめて」自分の指輪をはずしソクに手渡した日のこと・・・。歴史に翻弄された恋人たちの悲しい別れ。そして、運命は更に苛酷な試練を2人に与えようとしていた・・・。

スタッフ

監督:ペ・チャンホ
製作:チョン・テウォン
撮影:キム・ユンス
照明:イ・スング
編集:キム・ヒョン
音楽:チェ・ギョンシク
美術:オ・サンマン

キャスト

イ・ジョンジェ
イ・ミヨン
アン・ソンギ
チョン・ジュノ
イ・ギヨン
イ・デヨン

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