原題:Monday Morning

第3回東京フィルメックス・特別招待作品::http://www.filmex.net/ ベルリン国際映画祭2002銀熊(監督)賞受賞

2002年2月20日よりフランス初公開

2002年/フランス・イタリア/カラー/127分/1:1.66/ドルビーSRD 日本語字幕:寺尾次朗 配給:ビターズ・エンド

2004年6月19日より渋谷シネ・アミューズにてロードショー 2004年05月08日よりDVDリリース 2004年05月08日よりビデオリリース 2003年10月11日よりシャンテシネにてロードショー公開

公開初日 2003/10/11

配給会社名 0071

解説



月曜日の朝、誰もが抱く憂鬱—これから1週間、変化のない毎日を送らなければならない。ヴァンサンは毎朝5時に起き、乗り物を乗り継いで、1時間半もかけて工場まで通います。工場ではタバコを吸うこともできず、単調な仕事をこなすだけ。家では家族からあまり相手にされていない様子。でも、雑用ばかり言いつけられて、お楽しみの絵を描くこともままならない。
もう、そんなあくせくした日常にさようなら!ワイン片手にヴァンサンは、一路“水の都ヴェニス”ヘ。ハプニングに見舞われながらも、気のいい仲間たちと出会い意気投合。美しいヴェニスの風景を肴に、飲んで、歌って、語らって…。いつしかヴァンサンの心も軽くなってゆくのでありました。
『月曜日に乾杯!』は、退屈な日常にうんざりし、家を飛び出した主人公ヴァンサンの気ままな旅を描きます。ヴァンサンはヴェニスで久しぶりに自由を謳歌し、友人たちとふれあい、幸せなひとときを過ごします。しかし、夢のようなヴェニスにも同じように変化のない日常があることを知らされます。そして、ささやかな幸せを見つけたヴァンサンは、家へと帰るのです。外の世界へと出てみないと分からないことかもしれません。
世の中うまくいかないことや、皮肉なことばかりありますが、そんな時こそ、人生の歩調を少しゆるめて、ひと休みやより道するのもいいでしょう。新しい発見、忘れかけていた大事なものが見えてくるはず。そう、ヴァンサンも見つけたように。
どうこう言っても人生は楽しい。さあ、ノンシャランと行きましょう!
『月曜日に乾杯!』には、突如旅に出る主人公ヴァンサンを筆頭に、たまらなく魅力的なキャラクターがたくさん登場します。くわえタバコでスポーツカーをぶっ飛ばすイカしたおばあちゃん、覗きが趣味の好色な牧師、手紙を盗み読む郵便配達、のっそり歩くワニを連れたジプシー、自由に遊ぶ子供たち、女装したトイレ番、見栄っ張りの侯爵など…。愛すべき登場人物(動物)たちが、フランスの田舎とヴェニスを舞台に、交錯し繰り広げるいくつものエピソードは、まるで絵本をめくるような楽しさに満ちています。それらは、やがてゆっくりと繋がって、ひとつの素敵な物語となり、観る者すべてに至福の時間を与えてくれるのです。
監督は、すでにヨーロッパでは絶大なる人気と評価を集めているグルジア出身の名匠オタール・イオセリアーニ。本作『月曜日に乾杯!』で、2002年ベルリン国際映画祭の銀熊賞(監督賞)と国際批評家連盟賞をダブル受賞したことからもうかがい知れるでしょう。作品の完成度の高さは言うまでもなく、そこからあふれ出すほのぼのとした幸福感に、批評家やマスコミはもちろんのこと、観客も大絶賛。日本でも、昨年公開された前作『素敵な歌と舟はゆく』のヒットによって、新たな熱狂的ファンが増え続けています。
ジャック・タチの作品を思い起こさせるノンシャランとした登場人物たち、ゆったりとした雰囲気、センスのよい独特のユーモアは、本作『月曜日に乾杯!』でも健在です。さらには演出力にも磨きがかかり、まるで極上のワインを飲むような味わいの洗練された傑作を創りあげました。
「映画を創ることは建築と同じで橋を造るようなもの」と語るイオセリアーニは、周到な計算に基づいて映画を創っていきます。準備に十分な時間をかけ、全カット分のストーリーボードを作成。ストーリーボード上には、絵コンテとは別に、緻密に設計されたカメラの動き、役者の立ち位置や台詞に至るまでこと細かに描かれています。即興やアドリブはなく、ストーリーボードに従って撮影は進められてゆきます。流れるような長回しのカメラワーク、絵画のような美しい映像、役者たちの瑞々しい芝居もすべてストーリーボードがあるからこそ。本作のもつ心地よい軽やかさは、綿密な計算によって生まれてくるのです。
撮影は、ジャン=リュック・ゴダールやジャック・リヴェットの作品など数多く手がける名手ウィリアム・リュプシャンスキー。イオセリアーニとのコンビ4本目となる本作でも、その滑らかなカメラワークと、光を取り入れ創りだされる完璧な映像は、目を見張るばかりです。そして、その美しい映像を、イオセリアーニとは7本目のコラボレートとなるニコラ・ズラビシュヴィリの軽快な音楽が華やかに盛り上げてくれます。
自分のアドレス帳からキャストを探すと言われるように、イオセリアーニは演技経験のない知りあいなどをキャスティングすることで有名です。主人公ヴァンサンを演じるジャック・ビドウの本職は映画・テレビのプロデューサー。映画初出演とは思えないほど、のびのびと楽しげに演じています。また、役柄にあう役者が見つからなかったという理由で、イオセリアーニ自身が、ヴェニスの見栄っ張りな侯爵の役で登場。憎めないインチキぶりで笑わせてくれます。

ストーリー



フランスの小さな村。ヴァンサンは毎朝5時に起きると、車で駅にむかい、そこから電車とバスを乗り継いで、1時間半もの時間をかけて工場に通っています。工場は禁煙で、勤務中は好きなタバコも吸えません。とはいえ、こっそり吸って上司に怒られることもしばしばです。
ヴァンサンの家族は全部で5人。今じゃ会話もなければ愛想もない妻、彼の母親で、くわえタバコでオープンカーに乗って墓参りに行っちゃう粋なおばあちゃん、女の子がうんざりするほど化学と数学の話ばかり、だけど絵を描くのが上手な長男ニコラ、おばあちゃんと自転車が大好きでちょっぴり甘えん坊の次男ガストン。
ヴァンサンが仕事を終えて帰宅しても、妻や子供たちは相手をしてくれません。なのに、ヴァンサンが趣味の絵をのんびりと描こうとする時にかぎって、妻は雨どいの修理といった雑用を頼んでくるのです。妻は妻で、夜になるとすぐに眠ってしまうヴァンサンに少々ご不満のようです。
ヴァンサンのお隣さんは夫婦げんかが絶えません。夫はお金のことでイライラ、妻はヒステリックに怒鳴ってばかり。一緒に暮らすおじいちゃんは、居心地悪そうに、車椅子に乗ってお散歩へ…。
ヴァンサンが工場であくせく働いている間、村にはゆったりと時間が流れています。
牧師は望遠鏡で女性を覗き見。ポストに投函された手紙を盗み読みする郵便配達は、他人のラブレターを読んでにっこり。なぜかワニを抱えて、ジプシーたちもやってきました。
いつものように出勤したヴァンサンは、始業時間になっても工場に入らず、仕事をサボり、丘に登りました。そして、工場の煙突からもくもくと立ちのぼる煙をじっと眺めていました。
こんな退屈な毎日にさようなら!ヴァンサンは旅に出ることを突然思いつきます。
夜になってもヴァンサンが帰ってこないことにようやく気づいた妻は、飲み屋を探し歩きました。しかし夫の姿はどこにも見えません。
ヴァンサンは街で、独り暮らししている父親の家を訪れました。父親はヴァンサンに「お前は世界に見聞を広める必要がある」と、旅に出るためのお金をくれました。
ヴァンサンはバーへ行き、陽気なコサックたちと一緒に歌いながら酒を飲みました。酔ったヴァンサンを、トイレ番のおばさんが優しく介抱してくれました。なんと、そのトイレ番は女装したヴァンサンの友人ポール=ロベールでした。その晩、ヴァンサンを家に招いたポール=ロベールは、自分の画材道具をヴァンサンにプレゼントしました。
ヴァンサンはワイン片手に列車に乗り、一路ヴェニスヘとむかいました。
到着するなりヴァンサンは財布を盗まれましたが、路上のヴァイオリン弾きや水上を優雅に走るゴンドラ、スケッチをする人々の姿に気持ちも体ものびのびと癒されていきました。そして、思うままにスケッチを始めるのでした。
あるとき、ヴァンサンは駅で出会った男カルロと再会しました。意気投合したふたりは、カルロのボートでヴェニスを周遊することに。
ヴァンサンは父親の旧友、マルティーノ侯爵を訪ねました。お客がやってきたことを知って侯爵はびっくり。自画像を飾ったり、ピアノ演奏のテープを仕込んだり、スピーカーを設置したり、ゴージャスなガウンを羽織ったりと準備に大忙しです。ヴァンサンを部屋に通すと、この見栄っ張りな侯爵はニセの演奏をし、ウソの拍手に応じました。ヴァンサンが早々に部屋を退散すると、酒を禁止されている侯爵が酒を飲んだ飲んでないと、家人と言いあらそう声が屋敷の外にまで響いていました。
ヴァンサンはカルロやその仲間とピクニックに出かけ、ワインを飲んだり歌を歌ったり、尼僧院を覗き見したりしてヴェニスでの日々を楽しみます。
カルロが屋根の上へとヴァンサンを誘いました。夕陽に染まるサン・ジョルジオ教会やジテッレ音楽学校。遠くには海が見えます。カルロは、ヴェニスに住む者しか知らない絶景をヴァンサンにプレゼントしてくれたのです。
その夜、ヴァンサンはカルロの家に行き、酒を飲み、語らいました。酔っぱらった男たちを、カルロの妻と娘たちはまるで子供を寝かしつけるようにベッドに連れて行き、黙々と後片づけを始めるのでした。
翌朝、カルロと一緒に、ヴァンサンは家を出ました。行き先はカルロが勤める工場。工員たちが入口前で一斉にタバコを消す光景は、ヴァンサンが勤めている工場とまったく同じです。カルロと固い握手をかわし、ヴァンサンは再び街へむかいました。
ひとりで歩いているヴァンサンにカルロの仲間が「ひまなら来るか?」と声をかけました。ヴァンサンは誘いをうけて船に乗り、また別の地へ…。
旅先からヴァンサンが送った絵葉書がまた1枚届きました。「今度はエジプトだ!」ガストンは大喜びで母親に見せますが、彼女は読まずにびりびりと破いてしまいました。
ある日、ヴァンサンが帰ってきました。以前よりちょっと小ぎれいに見えるのは、気のせいでしょうか?妻をはじめ家族たちはさほど驚きもせずヴァンサンを迎えました。
次の朝、工場へ出勤しようとするヴァンサンの車を、妻が洗っていました。ヴァンサンが近づくと、妻は駆けよって、襟元にマフラーを巻いてあげると、頬にいってらっしゃいのキスをしました。
手を振って見送る妻。ヴァンサンはゆっくりと車を走らせました。

スタッフ

監督・脚本:オタール・イオセリアーニ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキー
編集:オタール・イオセリアーニ
   エヴァ・レンキュヴィチュ
録音:ジェローム・ティオー
調整:クロード・ヴィラン
美術:マニュ・ド・ショヴィニ
衣装:コーリ・ダンブロージョ
音楽:ニコラ・ズラビシュヴィリ
進行:ヌザール・タリエラシュヴィリ
   ナナ・イオセリアーニ
プロデューサー:マルティーヌ・マリニャック
製作:ピエール・グリーズ・プロダクション(フランス)
   ローヌ=アルプス・シネマ(フランス)
   ミカド(イタリア)

キャスト

ヴァンサン:ジャック・ビドウ
 ヴァンサンの家族
妻:アンヌクラヴズ=タルナヴスキ
母:ナルダ・ブランシェ
父:ラズラフ・キンスキー
息子ニコラ:ダト・タリエラシュヴィリ
(声の吹き替え:マチュー・アマルリック)
息子ガストン:アドリアン・パショー
 隣の家族
ミシェル:パスカル・シャナル
妻:ミリアム・レドゥニ=ドゥニ
子供たち:ローラ=ケイ・モネ
     ニコラ・ポンチェス
父:ピエール・トリコー
弟:アルマン・シャゴ
農夫:ヴァンサン・ドゥハージ
メイド:アン=ジャクリン・ブーシェ
 村の人たち
ニコラの恋人:アナ・ラムール=フローリ
牧師:ジェレミー・ロシニュー
郵便配達:ヤニック・カルパンティエ
     クリスチャン・カボレ
ルシアン:クロード・コカー
ジプシーたち:リリ・ラヴィーナ
       イゴール・ゴナン
       ファニー&ジーナ・ゴナン
       エマニュエル・ド・ヴェリクール
       サニ
ワニを連れたジプシーの少女:クレモンティーヌ・カルラン
 街の人たち
コサックたち:フランク・カヌ
       アミラン・アミラナシュヴィリ
       パスカル・オービエ
トイレ番:マニュ・ド・ショヴィニ
 ヴェニスで出会う人たち
ヴァンサンの友達カルロ:アリーゴ・モッツォ
カルロの妻:ニコレッタ・プレヴェデーロ
カルロの友だち:アンジェロ・ラガッツィ
        ジョルジオ・ダニエレット
エンゾ・ディ・マルテイーノ:オタール・イオセリアーニ
マルティーノの召使い:ジョヴァンナ・デ・ナーレ
牧師:ドミニク・ポゼット
列車の婦人:ステファニー・デュポン

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