おばあちゃんの家
原題:家へ.../The Way Home
2002年/韓国/カラー/87分/ 配給:東京テアトル、岩波ホール
2004年03月26日よりDVDリリース 2003年3月29日より岩波ホールにてロードショー公開
公開初日 2003/03/29
配給会社名 0049/0253
解説
陽の当たる縁側、画面いっぱいに広がる緑の木々と山道、流れる時間に身を任せて暮らす村の人々、腰をかがめてゆっくりと歩くおばあちゃんの姿。2002年春、韓国の人々はある一本の映画に夢中になった。それは、ほとんど素人に近い7歳の少年と、映画出演はおろか、映画を見たことさえないというおばあちゃんが主演、おばあちゃんが実際に住んでいた山の中の村が舞台で、その他の出演者も全員が村の住民という映画だった。そんな”田舎の村の暮らし”を描いた映画に、韓国の400万人の人が胸を打たれて、異例の大ヒットとなった。それが「おばあちゃんの家」である。
母親と二人でソウルに住むサンウは、ある日、田舎のおばあちゃんの家へ連れて行かれる。母親が新しい仕事を見つけるまでの間、会ったこともないおばあちゃんと暮らすことになったのだ。話すことができず、読み書きもできないおばあちゃんをバカにし、不自由な山の生活に不満を爆発させるサンウはわがままのし放題。しかし、決して叱らず、サンウの願いを一心に叶えようとするおばあちゃんにサンウは少しずつ心を開いていく。やがて彼の心に信頼と愛情が芽生えた時、母親が迎えにやってくる。
この映画を見た人々は、自分の祖母を思いだし、その無条件の愛情に包まれていた頃を懐かしむ。「おばあちゃんの家」は韓国のアカデミー賞にあたる大鐘賞最優秀作品賞、最優秀脚本賞、最優秀企画賞を受賞、海外の数々の映画祭でも上映されて、世界の注目を集めた。
監督は「亡くなったおばあちゃんの深い愛情に感謝する映画をずっと撮りたかった」と語るイ・ジョンヒャン。女性監督が少ない韓国において、彼女は脚本も手がけた監督デビュー作「美術館の隣の動物園」(98)で、大鐘賞新人監督賞を始め数々の賞を受賞し、実力を認められている。2作目となる本作でも自ら脚本を担当、主人公二人の日常を愛情とユーモアをこめて描いている。その結果、村での何気ない出来事が、サンウにとってかけがえのない体験、大いなる冒険となって、私たちの胸を熱くするのだ。
おばあちゃん役のキム・ウルブンと監督の出会いは運命的だった。スタッフが全国を探しまわったが、おばあちゃん役は全く見つからなかった。監督は「何となく、そこへ行けば私の理想のおばあちゃんが待っていると思った」という直感のもと、韓国中部の忠正北道・永同(ヨンドン)の村でキムおばあちゃんに出会ったのだ。もちろんどんなにすてきなおばあちゃんでも、そのまま撮れば映画が出来上がるわけではない。サンウ以外の出演者は全員素人だが、監督は彼らの人生そのものを引き出してフィルムに焼き付けることによって、この爽やかな物語に真実と厚みを与えたのだ。
ストーリー
夏のある日、7歳のサンウは母親と一緒にソウルから電車とバスを乗り継いで、初めて会うおばあちゃんの家へ向かっていた。おばあちゃんは山の中の村に一人で住んでいた。母親は17歳の時にこの家を飛び出し、今は一人でサンウを育てている。失業中の母親は新しい仕事が見つかるまでの2ヶ月間、サンウを預かってほしいと頼むと、さっさとソウルへ帰ってしまった。
おばあちゃんは話すことが出来なかった。サンウはおばあちゃんを無視して、朝から晩までゲーム機で遊んでいた。食事の時も、サンウは持参した缶詰をおかずにご飯を食べた。おばあちゃんの作った漬物は口にしようともしない。
やがて、ゲーム機の電池が切れた。サンウはおばあちゃんに電池を買うお金をくれるよう頼むが、現金収入のない彼女はお金など持っていない。昼寝しているおばあちゃんの髪からかんざしを盗むサンウ。サンウはそれを持って村の雑貨店に行くが、電池を扱ってない上に、盗んだかんざしだと見破った店のおじさんに、ぽかりと頭を叩かれる。
数日が過ぎ、缶詰もなくなってしまった。何も食べようとしないサンウを心配して、おばあちゃんは身振り手振りで食べたいものを尋ねる。「ケンタッキー・チキン」と半ば焼け気味に答えるサンウに、おばあちゃんはうなずいて出かけて行く。「チキン」だけはわかったおばあちゃんは、かぼちゃと引き換えにニワトリを手に入れ、丸ごとゆでた。サンウはそれを見て「ケンタッキー」じゃないと泣きわめき、手もつけずに眠ってしまう。だが、空腹のあまり夜中に目を覚ましたサンウは、トリを夢中でほおばった。
翌朝、おばあちゃんの様子がおかしい。横になったきりピクリとも動かない。雨の中、トリを手に入れるために出かけたせいで熱を出したらしい。不安にかられたサンウは、おばあちゃんに毛布をかけ、タオルで額を冷やし、残ったトリを運び、かいがいしく看病するのだった。
元気になったおばあちゃんとサンウは、町へかぼちゃを売りに行く。売ったお金でおばあちゃんはサンウに新しい靴を買い、食堂では、サンウが美味しそうに麺を食べるのを、自分は何も食べずに満足げに見つめていた。サンウは村の少女ヘヨンと、彼女の友達の少年チョリと一緒に先に帰って、バス停でおばあちゃんを待っていた。しかし、次のバスにおばあちゃんは乗っていない。心配でいてもたってもいられないサンウの前に、やっとおばあちゃんの姿が見えた。お金を節約するために歩いて帰ってきたのだ。
ようやく村に慣れて来たサンウに友達が出来た。ほのかな恋心を抱いた少女ヘヨンの家に招待されたり、チョリ少年には暴れ牛に追いかけられたところを助けてもらった。楽しく遊んだ帰り道、サンウは調子に乗りすぎてけがをしてしまう。痛くて泣きながら歩いていた時、サンウは少しでも早くおばあちゃんのもとに戻りたくなる。サンウは足を引きずって走り出した。
おばあちゃんは家の前で待っていてくれたのだが・・・
スタッフ
監督・脚本:イ・ジョンヒャン
製作:ファン・ウヒョン、ファン・ジェウ
プロデューサー:ホ・ジェチョル
エグゼクティブ・プロデューサー:キム・スンボン
撮影監督:ユン・ホンシク
照明:イ・チョロ
編集:キム・サンボン、キム・ジェボン
音楽:キム・テホン、キム・ヤンフィ
録音:イー・スンチョル
美術:シン・チョミ
助監督:キム・ウンソク
キャスト
おばあちゃん:キム・ウルブン
サンウ:ユ・スンホ
チョリ:ミン・ギョンフン
ヘヨン:イム・ウンギョン
母親:トン・ヒョフィ
自転車のおじいさん:イ・チュニ
駄菓子屋のおばあさん:イ・トンジウォル
バス運転手:ユ・ソンギ
靴屋のおじさん:ユン・ジェグン
道を教えてくれるおじいさん:コ・ベクファン
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