原題:石碇的夏天/summer,dream

東京国際映画祭2002アジアの風部門出品作品::http://www.tiff-jp.net/

2001年/台湾/カラー/16mm/1:1.33/60分 配給:スローラーナー、あかり屋 

2003年10月11妃よりユーロスペースにてレイトショー公開 2002年10月26日シアターコクーン、10月28日渋谷ジョイシネマにて上映

公開初日 2003/10/11

配給会社名 0048/0352

解説


『シーディンの夏』は、田舎町・石碇(シーディン)での、青年のひと夏の体験を瑞々しく描く。振り返れば、すべては夢かもしれない小さな出来事たち。故郷・石碇への夏休みの帰郷。そこで出会った異邦人の彼女と、やさしくも、おせっかいな祖母。まばゆい緑や川のせせらぎに囲まれながら、3人で暮らす静かな日々。小さな衝突や葛藤の中、育まれていく絆。
やがて、夏が終わる頃、青年は思う。彼女たちと過ごしたこの夏、ちょっとだけ、僕の何かが変わったような気がする、と。
チェン・ヨウチェー監督は、ゆっくりと流れる、ささやかな日常を穏やかな視線で見つめ、もどかしさや、やるせなさ、そして、やさしさの芽生えといった、繊細な心の揺れを丁寧にすくいあげる。小さな一つ一つの出来事が、わたしたちの胸に染み込み、「あの夏」の思い出として、心に刻まれていく。

チェン・ヨウチェー監督は、弱冠25歳。しかも、現役の大学生(台湾大学在籍中)。『シーディンの夏』は、監督作2作目にして、台湾のアカデミー賞、台湾金馬奨にて最優秀短編映画賞を受賞という快挙を達成。さらに、第15回(‘02年)東京国際映画祭「アジアの風」部門に、正式招待。バンクーバー国際映画祭、釜山映画祭など、世界各地の映画祭にも招かれ、絶賛を浴びる。自ら脚本、監督、主演を務めたデビュー作『BABY FACE』も、日本でイベント上映され、その才能の片鱗が大きな衝撃を与えた。
いち早く、これらの作品に魅了された観客たちは、早くも次回作への熱い期待をささやいている。

夏の陽光を浴び生命力みなぎる木々の緑、澄み切った流れが奏でる川のせせらぎ、突如ベランダに打ち付ける気まぐれな雷雨のしずく。舞台となる石碇の懐かしさを覚える佇まいと、そこで暮らす人々のぬくもり溢れる生活。
『シーディンの夏』は、見失いがちな日々の暮らしのうつくしさを、そっと差し出す。忘れかけていた情景が、乾いた心をどこまでもうるおしていく。

サウンドトラックには、日本から、BIKKE(TOKYO NO.1 SOUL SET)、高野寛、斉藤哲也(undercurrent)の3人によるNathalie Wise(ナタリー・ワイズ)が全面参加。スクリーンを彩るNathalie Wiseの楽曲や、メンバーのソロ作品が、映画にやわらかな空気を吹き込む。
やさしく響く音色が、主人公の葛藤を見守るように包み込む。そして、映
像と音楽が幸福な融合を果たすラストシーン。残された深い余韻は、わたしたちの胸の奥を、いつまでもほのかに灯しつづけるだろう。

ストーリー

この夏、シャオツーは海外短期留学を楽しみにしていた。しかし、不況の影響で親の援助を受けられなくなり、計画を断念。仕方なく、故郷・石碇(シーディン)にある雑貨屋を営む実家で、おばあちゃんと夏休みを過ごすことになった。そんなシャオツーとおばあちゃんのところに、小学校の夏季英語教室の教師を務めるケベック人女性のエリサが、間借り人としてやってくる。
やたらと世話を焼きたがるおばあちゃんへの、ちょっとした苛立ち。新しい風を運んできたエリサヘの、ほのかな憧れ。そんな気持ちを素直にあらわせず、ひとり悶々とベッドで天井を見上げるシャオツー。
英語が得意なシャオツー。エリサは、中国語が達者。おばあちゃんは、中国語の読み書きができない。しかし、世代や人種、育った環境の違いといった、コミュニケーションの壁を越え、3人の間には、いつしか絆が芽生えてくる。
「あれは何?」
夜、ふわりふわりと上昇するひとつの灯りを見つけたエリサ。シャオツーは説明する。
「紙でできたバルーンに願いを書いて、空に放つんだ」
雑貨屋で天灯を広げると、エリサはさらりと英語で願いを書き、シャオツーにも書くように促す。しかし、シャオツーは、なかなか本当の願いを言葉にすることができない。
やがて、理不尽な仕打ちに傷付き、奇妙な行動に出るエリサ。慰めたくても、かえって傷を深めてしまい、素直になれない自分を持て余すシャオツー。おばあちゃんは、そんな二人をいつもやさしく見守っていた。
夏が終わり、静かに訪れる別れ。おばあちゃんが店番をしていたレジに座り、エリサの忘れ物に、そっと目をやるシャオツー。
その夜、僕らは願いを託した天灯を空に放つ。
はるか高くに飛翔する僕らの祈りよ、闇夜を越えて、天まで届け。
僕の願いは…。
— 忘れない。やっと見つけた、大切なもの。

スタッフ

製作:リー・ツーホン
監督・脚本:チェン・ヨウチェー
撮影監督:チャン・チャン
撮影:イエ・スークアン
編集:チェン・シャオトン
録音:チュウ・チェン
音楽監督:高野寛
楽曲提供:Nathalie Wise(ナタリー・ワイズ)

キャスト

ファン・チェンウェイ
マノン・ガルソー
リー・ショウ

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