原題:BEND IT LIKE BECKHAM

2002年4月12日イギリス初公開

2002年/アメリカ・イギリス・ドイツ/カラー/112分/Dolby Digital 配給:アルバトロス・フィルム

2003年10月03日よりビデオ発売&レンタル開始 2003年10月03日よりDVDリリース 2003年4月19日よりシネ・スイッチ銀座、テアトル新宿、渋谷シネ・アミューズにてロードショー

公開初日 2003/04/19

配給会社名 0012

解説


世界中の女の子たちに夢と元気をあたえたパワフル&ラブリームービー『ベッカムに恋して』。じつは一番の支持者はデヴィッド・ベッカムその人なのかもしれない!
というのもマンチェスター・ユナイテッドのチームメンバーを引き連れ試写会場に現れたベッカムは、“ものすごく気に入った”と絶賛したのである。
デヴィッド・ベッカムが主人公ジェスのアイドルに選ばれた理由はふたつある。ひとつは彼が世界でナンバーワンクラスのプレイヤーだから。そして彼が一般人がサッカー選手に抱いている偏見に対して挑戦を続けているからだ。とはいえグリンダ・チャーダ監督とポール・マエダ・バージェスが初めて脚本の下地を書いたとき、ベッカムはイギリスでもっとも不人気なサッカー選手だったという。前回98年のワールドカップ対アルゼンチン戦で彼が退場になったとき、人々はイギリスが敗れたのはベッカムのせいだと非難した。そんな風潮にもかかわらず、なぜチャーダ監督はあえてベッカムを取り上げたのか。それは、彼が女性にサッカーを広めるのに貢献していること、昔からあるマッチョタイプのサッ
カー選手のイメージを変えたということが彼女の作品テーマと重なっていたためである。また、「あらゆる意味でベッカムはインド系の母にとって完壁な婿候補なのです。なぜなら彼は奥さんを愛しているし、両親や親戚を大切にする。そして子供にとっては最高に良き父親でもある」。
グリンダ・チャーダ監督は4年前、アジア系の人物を主人公に広く大衆に訴えた王道をいく作品を撮りたいと新作の構想を練っていた。ちょうどそのころ、イギリス中がサッカーにのぼせていた。チャーダ監督が立ち寄ったパブでは、アジア系や黒人の男性が「行け行けイングランド!」と絶叫していたし、イギリスがアルゼンチンに敗れたときには大の男が道ばたで号泣していた。「国中がこんなふうになるのを見たのはダイアナ妃が亡くなったとき以来です。それ以来サッカーに夢中になって、このエネルギッシュな環境にインド系の女の子を据えると面白いのではないかと思い付いたのです」
映画の舞台はチャーダ監督が生まれ育ったサウスホールとロンドン西部。サッカーそのものが脚本の上では重要なパートを占めるのだが、一方にある少女たちと家族の生活に監督は焦点を置きたいと考えていた。「ある意味でこの映画は私の自伝的要素が浪い作品です。故郷サウスホールを舞台にしているだけでなく、ジェスと父親との関係は私と私の父親との関係によく似ています。私はこの作品を父へのトリビュートとして作りました」インド系イギリス人でケニア生まれのチャーダは、さまざまなカルチャーが交錯した環境で生活してきた。そうした実体験は彼女に、国は違っても人間は所詮同じ存在だと信じる力を与えた。デビュー作“Bhaji on the Beach”では主人公のバーミンガムのアジア系女性たちに、ブラックプールへ日帰り旅行に出かけるという非常にイギリス的なことをさせた。次作“What Is Cooking”では、ユダヤ系、黒人系、ラテン系、ヴェトナム系と、人種的背景の異なる4家族を取り上げた。この2作は一部に強く支持されたものの、対象とする客層の不明瞭さに悩まされた配給会社は大規模な公開を踏略した。しかし『ベッカムに恋して』はその限りではなく、イギリスではハリウッド大作並みの劇場で上映され、人々を熱狂させた。その中の1人ブレア英国首相は「この作品を誇りに思っている」という声明を出している。
冒頭のシーンで元サッカー選手で現解説者のデイリー・リネカーが特別出演しているのもサッカーファンにはたまらない演出である。またサントラ盤では元スパイス・ガールズのヴィクトリア・ベッカムを始めテキサス、メラニーC、ブロンディー、バックヤード・ドッグなどUKを代表するアーティストとインド系アーティストが多数参加しているのも話題である。誰もがいつの間にか物語にのめりこんでしまうのは、サッカーシーンのクオリティの高さのせいでもある。チャーダ監督と撮影監督のジョン・リンは、リアルかつ映画的な効果のある手法で撮影するために、ウェゴという特殊な機械を使った。これにより、ステディカムでは不可能だったローアングルで動きの早いシーンが撮影可能になったのだ。もちろんそこに、女優たちのリアルな動きそのもが要求されたのは言うまでもない。彼女たちは8週にわたっての合宿トレーニングを受けた。ジェス役の華著で小柄なパーミンダ・ナーグラは、孤影終了が近づくにつれ引き締まった体つきになったものの満身創痍、撮影終了後2、3ヶ月は何もする気が起きないほど疲れ果ててしまったという。しかしその甲斐あって輝く演技は高く評価され、最優秀女優賞など数々の栄光も手に入れることとなった。保守的な母親に役者になるという夢を反対され苦悶してきたナーグラ。ジェスと同様、今まさに夢を実現したのである。

ストーリー



ジェスはサッカーとベッカムを愛するインド系の少女。今日もテレビでサッカー中継を見ながら、ベッカムと一緒にプレーしている自分の姿を空想している。しかしそれも、彼女の名を呼ぶ大観衆の声がうんざりするような母親の呼び声と重なるまでのお楽しみ。いまジェスの家族は姉の結婚式にむけて大わらわなのだ。欝陶しい家を抜け出して、ジェスは男の子たちとサッカーに嵩じる毎日を送っていた。
そんな彼女を遠くから見つめている女の子がいた。地元の女子サッカーチーム“ハウンズロー・ハリアーズ”のエースストライカー・ジュールズである。何かを決意したかのようにジュールズはジェスに近づいていき、一緒にサッカーをしょうと声をかける。突然のことに戸惑うジェス。しかしサッカーへの情熱は何にも勝る。チームのコーチ、ジョーにも見込まれ、公園でのお遊びサッカーから本格的なプレーへ、ジェスは新しい一歩を踏み出した。
ところが、練習帰りのジェスがユニフォームのショートパンツ姿で男の子たちとはしゃいでいるのを、母親が見てしまった。烈火のごとく怒った母はサッカー禁止令を発令。伝統的なインドの慣習にあずかる両親にとって、女の子がサッカーをするなど言語同断なのだ。
ジェスほどではないにしろ、ジュールズもまた家族のことでは厄介ごとを抱えていた。彼女の母親もサッカーにはまるで理解がない。周囲の反対の声のなかで、二人は友情を深めていく。そして、お互いがコーチのジョーにほのかな想いを寄せていることにも薄々感づいていた。
ジェスは庭の片隅にユニフォームを隠し、HMVでバイトをしていると嘘をついてサッカーを続ける。サッカー熱はいよいよ高まり、夢はプロでプレーすることへと膨らんでいく。しかし楽しい日々は長くは続かず、嘘がバレる日がやってくる。おまけにジェスがジュールズと親密にしているのを目撃した姉の婚約者の両親は、ショートカットのジュールズをイギリス男と勘違い。白人とイチャつくとはもってのほかと婚約破棄を申し出て、家族はジェスのせいで危機に陥る。さすがの彼女も悩み、練習を休むようになる。心配したコーチのジョーは家を訪ね、ジェスの才能をつぶさないでくれと両親を説得。しかし、若いころクリケットの選手だった父親は、その実力にもかかわらずインド人だという理由で差別されプレーができなかった苦い経験を告白する。同じ屈辱を娘には味わわせたくないという思いは強硬だった。ただ闇雲に古いしきたりにこだわっているわけではなかったのだ。
そんな折り、チームはドイツ遠征に行くことになる。ジェスは堪らず、また家族に嘘をついてドイツへ向かった。試合も無事終わり、夜には皆が着飾ってクラブへ出かける。黒髪をほどいたジェスは、思わず息をのむほどの神秘的な美人に変身している。熱気のせいか酔って外へ出た彼女をジョーが追う。バルコニーで話す二人。気になって様子を見にきたジュールズは、ジェスとジョーの唇が近づいてゆ<のを見てしまう。二人の友情は音をたてて崩れた。 婚約破棄の瀬戸際でジェスの誤解も解け、あらためて姉の結婚式の日取りが決まった。しかしその日は、ジェスにとっては大事な決勝戦の日だった。しかも、ドイツでの活躍を見たアメリカのスカウトマンが、ジェスとジュールズのプレーを見にくるという。ジェスが行かなければジュールズのプレーも活きないだろう。サッカーと友情と家族に板挟みにされたジェスはどうしてよいのかわからない。そんな彼女を尻目に華やかな結婚式は進行していく。幸せの絶頂にいる姉の一方で、悲しそうな顔をしている妹がいることに父は心が痛む。そしてついに、試合に行くことを許すのだった。 車の後部座席で美しいサリーからサッカーのユニフォームに着替えるジェス。結婚式の宴はたけなわ、音曲が最高潮に達するのと同時に試合は佳境に。ジェスは何かを突き破るかのようにボールを蹴る。ジュールズはそれを受け止めますますパワフルにプレーする。二人の輝くプレーを見定めた久カウトマソは、アメリカでの奨学金つき留学をオファーした。 ジェスとジュールズは家族に囲まれ、空港のロビーにいる。別れを前にジェスとジョーは初めてのキスをかわし、大事な約束をする。なにもかもが上手くいく予感。そんな彼女の向こうには、記者に囲まれたベッカムの姿があった。

スタッフ

監督:グリンダ・チャーダ
製作:ディーパック・ナヤ、グリンダ・チャーダ
脚本:グリンダ・チャーダ、グルジット・ビンドラ、ポール・マエダ・バージェス
製作総指揮:ウルリヒ・フェルスバーグ、ラッセル・フィッシャー、サイモン ・フランクス
      ジギ・カマサ、ハニート・ヴァスワニ
撮影:ジョン・リン
プロダクション・デザイナー:ニック・エリス
編集:ジャスティン・クリシュ
衣装:ラルフ・ホールズ

キャスト

パーミンダ・ナーグラ
キーラ・ナイトレイ
ジョナサン・リース・マイヤー ズ
アヌパム・カー
アーチー・パンジャビ
シャズネー・ルイス
フランク・ハーパー
ジュリエット・スティーヴンソン

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