原題:THE GREY ZONE

少女の鼓動は彼らに勇気と誇りをよみがえらせた。

文部科学賞選定作品

2001年/アメリカ/カラー/ヴィスタサイズ/ドルビーデジタル/109分/PG-12 配給:アートポート

2003年10月24日よりDVD発売開始 2003年10月24日よりビデオ発売&レンタル開始 2003年5月24日よりシアター・イメージフォーラムにてロードショー

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公開初日 2003/05/24

配給会社名 0014

解説


第二次大我中のナチ強制収容所。そこに“ゾンダーコマンド”と呼ばれるユダヤ人がいた。彼らは食事などの特別待遠とほんの4ヶ月の延命と引き換えに同胞をガス室へと送り込み、死体処理作業を行った。
それは、生きるための究極の選択だった。そしてある日、彼らはガス室で奇跡的に生き残った少女をみつける。生きることに絶望し始めていた彼らは少女に最後の希望を託し、何とか命を救おうと奔走する。そうすることで、自らの魂を浄化するかのように…。
 道徳的ジレンマに苦しみながらも誇りを失うことなく、死に勇敢に立ち向かっていった男たち。これまでゾンダーコマンドや果敢に戦った女性たち、家族の命と引き換えに人体実験に従事させられていたユダヤ人医師の存在などは、映画や舞台ではほとんど取り上げられることはなかった。同様に、アウシュビッツで実際に起こったユダヤ人による反乱も一般的には知られていない。

監督のティム・ブレイク・ネルソンは、「オー・ブラザー!」で3人組の囚人の一人を演じ、ジョシュ・ハートネットの主演で『オセロ』を現代に移し変えた映画「O」で監督としても高く評価された個性的なアーティスト。自らもユダヤ人である彼は、収容所で人体実験を手伝ったユダヤ人医師ミクロシュ・ニスリの手記をもとに『Grey Zone』を書き上げてオフ・ブロードウェイで上演し、オビ一貫、ルシール・ローテル賞などを受賞した。映画化に当たっては、ブルガリアに収容所や焼却炉などのセットを建設。ガス室に送られるユダヤ人の姿やガス室の内部をリアルに再現し、歴史の狭間に埋もれた真実をえぐり出している。灰色がかった暗い画面に印象的に赤い色を落とすアーティスティックな絵作り、手持ちカメラで登場人物ににじり寄る臨場感豊かなカメラワークなど、知性あふれる映像センスが刺激的。何より、研ぎ澄まされた会話や台詞の数々が心に深く迫ってくる。
ゾンダーコマンドを演じるのは、ロザンナ、パトリシアを姉にもち「スクリーム」でブレイクしたデイビッド・アークエットや、「パルプ・フィクション」「ファーゴ」など“おかしな顔”で個性際立つスティーヴ・ブシェミら。「誘惑のアフロディーテ」でアカデミー助演女優賞に解いたミラ・ソルヴィーノが反乱のための火薬を調達する女囚に扮して、たおやかな美貌を忘れさせる変身ぶりを見せている。また、ナチスのSS軍曹に扮するハーヴェイ・カイテルはプロデューサーも兼任。このように演技派ぞろいの豪華なキャスティングが実現したのも、作品のクオリティーの高さを証明している。
監督はこの作品を「死を宣告された生活の中で、自分の人生に意味を持たせるために必死に生きている人々の物語」だと語る。感傷を排した精微でクールな語り口の中には、現実の厳しさと囚人たちの切迫した心理が滲み出している。そこでは、死や暴力が「当たり前のこと」だったのだ。私たちは、彼らの人生を「見る」のではなく、まさに「体験」する。そして、改めて生と死、人間の誇りと尊厳について自らに問いかけるにことになるだろう。

ストーリー


第2次世界大戦、ポーランド・アウシュビッツ強制収容所。
ナチスは“ゾンダーコマンド”と呼ばれるユダヤ人による「特別労務班」を編制。
彼らは同胞であるユダヤ人をガス室に送り、その死体から金歯を抜き取り、髪の毛を刈り取り、そして焼却炉で死体を焼くという「特別任務」にあたっていた。
“ゾンダーコマンド”として働く彼らへの代償は、食事などの特別待遇とほんの4ヶ月の延命であった。
1944年、ソ連のポーランド進攻が伝えられドイツの敗色が濃厚となるなか、アウシュビッツの絶滅収容所でコマンドとして働いていたホフマンらユダヤ系ハンガリー人は、第三焼却場のアブラモウィックスや女性軍需工場で働
くダイナらと密かに火薬を集め、暴動の計画を立てていた彼らの目的は、毎日山のような死体を焼き続ける巨人な焼却炉の破壊だったそれが、どのみち殺される自分達にできる最後の抵抗だと考えていたのだそんな水面下の動きを察したムスフェルドSS軍曹は、ドイツ人医師メンゲレのもとで働くユダヤ人民師ニスリに情報の提供を要求する。彼もまた妻子の命と引き換えに、数々の人体実験に従事させられていたのだったいつものようにガス室から死体を運び出していたホフマンは、積み市なった死体の山から奇跡的に生き残った少女を発見する。少女はニスリ医師の手当てで一命を取りとめるが、せっかく助かったこの命もナチスに見つかれば殺されてしまうさらに、少女をかくまうことは、これまで少しずつ計画してきた暴動の妨げともなり得るのだったしかし「死」が日常であり、日々絶望の中で暮らすホフマン達は、少女に一抹の希望を託すようになる。そして何としても救いたいと思い、危険をかえりみず奔走するのだった。
そんな中、暴動のための準備も整い、着々と決行の日が近づく。
果たして彼らは暴動を成功させそして少女を救うことができるのか−−

スタッフ

監督・脚本:ティム・ブレイク・ネルソン
製作:アヴィ・ラーナー、ダニー・ラーナー、パメラ・コフラー、
   クリスティン・ヴァション、ティム・ブレイク・ネルソン
製作総指揮:ハーヴェイ・カイテル、ベギー・ゴームリ、ダニー・ディムボート
   トレヴァー・ショート、ブラッド・ウェストン、ジョン・ウェルズ
編集:ティム・ブレイク・ネルソン、ミッシェル・ボッティチェリ
撮影:ラッセル・リー・ファイン
プロダクション・デザイナー:マリア・ジェルコヴィック
音楽:ジェフ・ダナ

キャスト

ホフマン:デヴィット・アークエット
シュレーマー:ダニエル・ベンザリ
アブラモウィックス:スティーヴ・ブシェミ
マックス:デイビッド・チャンドラー
ニスリ医師:アラン・コーデュナー
ムスフェルドSS軍曹:ハーヴェイ・カイテル
ローザ:ナターシャ・リオン
ダイナ;ミラ・ソルヴィーノ

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