デス・フロント

イギリス映画『リトル・ダンサー』でバレエ・ダンサーを目指す主人公ビリー少年を熱演し、鮮烈なデビューを飾ったジェイミー・ベル。全く無名だったこの新人は、天性の演技力と自然体の魅力が認められ、一躍スターの仲間入りを果たすことになった。
……それから二年後。無垢で汚れのない瞳はそのままながら、少したくましささえ身に付けたジェイミー・ベルが再びスクリーン上を疾走する!
時は、第一次世界大戦中の1917年。連合軍とドイツ軍はヨーロッパ西部戦線において激しい戦闘を繰り広げていた。まだ16歳のチャーリー・シェイクスピアが所属するイギリス軍・Y中隊はからくも生き延び、敵ドイツ軍の塹壕を占拠する。しかし迷路のように伸びる敵陣は、逆にY中隊の兵士たち10名を翻弄し始める。鉄条網の張り巡らされた壕内に累々と横たわる遺体、視界を遮る霧と冷たい雨、響き渡る砲撃の轟音、通信機から聞こえてくる声……。そして、捕虜のドイツ兵は告げる。「早くこの塹壕から離れろ。ここに残った者は全員死ぬことになる」と。
その言葉通り、やがてY中隊の兵士たちは一人また一人と無惨な最期を迎えることに。彼らに一体何が起こったのか……?!
数キロにも及ぶ長い塹壕を掘りながら、連合軍とドイツ軍が対峙した西部戦線。しかしこの塹壕戦は進撃もままならず、両軍を膠着状態へと追い込んだ。それを打破する戦略手段として、ガス兵器や戦車といった新兵器が開発・投入されるに至ったが、一方、塹壕内に長期駐留を強いられた兵士たちの中には緊張と混乱から精神のバランスを崩す者も続出したという。いわば彼らは戦場で己の心と戦うことになったのだ。『デス・フロント』は、そんな極限状況が生み出す心理サスパンスに、忌まわしき怪奇現象を融合させた禁断の“戦場ホラー”である！
連鎖的に襲いかかる恐怖と並行して描かれるのは、主人公シェイクスピアの成長ドラマ。初めは逃げることしかできなかった彼も、やがて自らの判断力を頼りに、決死のサバイバルを展開していく。この難役に体当たりで挑戦したジェイミー・ベルも俳優としての新たな一歩を踏み出したと言えるだろう。
そんなジェイミー・ベルをサポートする共演者も実に個性的な面々。『ロード・オブ・ザ・リング』三部作でゴラムを演じたアンディ・サーキスを始め、『ショコラ』のヒュー・オコナー、『ゴスフォード・パーク』のローレンス・フォックス、『フル・モンティ』のヒューゴ・スピアー、『アイリス』のクリス・マーシャル、といったクセ者俳優たちが揃った。
監督・脚本は、これが長編映画初監督となるマイケル・バセット。製作は、ベネチア映画祭で金獅子賞に輝いた『ビフォア・ザ・レイン』や、『グレアム・ヤング毒殺日記』を手がけたサム・テイラー、そして『セブン D』のマイク・ダウニー。撮影は、『熟れた果実』(V)のヒューバート・タクザノウスキー。編集は、『ビフォア・ザ・レイン』、『グレアム・ヤング毒殺日記』のアン・ソペル。プロダクション・デザイナーは、『アンダーグラウンド』、『Super 8』といったエミール・クストリッツァ監督作品で知られるアレクサンダー・デニック。特殊効果には、『ジャスティス』、『フロム・ヘル』、『ロック・ユー!』を手がけたフラッシュ・バランドフが、そしてVFXには、『ダーク・ブルー』、『リプリー』を手がけたUPPがあたっている。