原題:Monrak Transistor

戻りたい−−−想えば想うほど遠くなる、愛する人、美しい村。 タイ、アユタヤ。ゆるやかに流れる川のほとり。 この幸せが永遠に続くと思っていた…。 常に世界を驚かせつづけるアジアの新星が描くノスタルジック・ラブストーリー

東京国際映画祭2002アジアの風部門出品作品::http://www.tiff-jp.net/ 2002年カンヌ国際映画祭 監督週間正式出品作品

2001年12月28日タイ初公開

2002年/タイ/DOLBY SRD-EX/85ビスタ/116min 後援:タイ王国大使館/配給:クロックワークス

2003年05月30日よりビデオ発売&レンタル開始 2003年05月30日よりDVD発売開始 2002年12月21日よりシネスイッチ銀座にてロードショー公開 10月27日渋谷ジョイシネマにて上映

公開初日 2002/12/21

配給会社名 0033

公開日メモ 今までのタイ映画のイメージを一新する、美しく穏やかなアユタヤの地で夫の帰りを待ちつづける妻と、都会に流されていってしまった青年。その切ない距離を歌で綴ったノスタルジック・ラブストーリー。

解説


2002年度カンヌ国際映画祭の監督週間に正式出品された『わすれな歌』は、前作の「6ixtynine9』が世界の映画祭で「タイのタランティーノ」「ヒッチコックの再来」と大絶賛を浴びたペンエーグ・ラッタナルアーン監督の新作である。前作の雑然としたバンコクとバイオレンスのイメージから一転し、本作では、運命のいたずらで都会へ流されていってしまう青年と、故郷の村で彼の帰りを待ちつづける妻とのノスタルジック・ラブストーリーを丁寧に描き、新しい一面をみせた。
天真彌漫な青年ペンは、歌を歌うこと、そして村一番の美しい娘サダウに夢中。めでたく結ばれた二人は、美しい自然にかこまれたゆるやかな川のほとりで、田を耕し、ゴザを編み、慎ましくも幸せな生活を送っていた。しかし、そんなある日ペンが兵役に駆り出されてしまう。望郷の思いを“わすれな歌”に込めて歌い、毎日のようにサダウに手紙を送るペン。だが歌謡コンテストに合格し、軍隊を脱走してしまったことから、ペンはつらく長い、故郷への道をたどることになる…。
主人公のペンを演じるのは、『快盗ブラック・タイガー』にも出演している期待の若手俳優スパコン・ギッスワーン。どうしてもペン役をやりたいと監督に直接かけあってこの役を獲得した彼は、無邪気さにあふれた青年時代から、人生の波にもまれて大切なものに気づくという難しい役どころを、ウェイトコントロールまでして熱演した。
愛する夫の帰りをけなげに待ち就ける妻サダウには「脚本を書いた時から彼女を想定していた」と監督に出演を熱望されたタイの国民的女優シリヤゴーン・プッカウェート。少女のようなイノセンスの中に夫を待ち続ける哀しみを内包する、物語の核となるサダウ役を見事に演じ切った。都会に流れていってしまった夫が戻るまでに彼女が流すいくつもの涙に観客は魅了されずにはいられない。
幾年にもわたるペンとサダウの離ればなれの日々をつなくのは、ノスタルジックなタイの名曲の数々。時には若く純粋な二人の出会いを彩り、時には離ればなれの二人の切ない距離と想いを代弁する歌の数々は、異国の曲でありながらどこか懐かしさを感じさせ、本作の重要なアクセントとなっている。その中でも中心となるのは、60年代にタイで圧倒的な人気を誇ったスターシンガー、スラポン・ソムバットジャルーンの“わすれな歌”。数々の困難を乗り越えて曲の使用権利を獲得した監督は、本作『わすれな歌』をソムバットジャルーンに捧げている。なお、劇中でペンが歌っている歌の数々はすべて、スパコン・ギッスワーンが吹き替えなしで披露した。
2002年度シアトル国際映画祭でアジアン・トレードウィンズ賞を受賞した本作について監督は「この映画の中でペンはいろいろな過ちを犯すけれど、自分にとって本当に大切なものがわかるまでには、時間がかかることもある。ペンとサダウのラブストーリーの中に、人生で本当に大切なものは何かというメッセージを入れたかった」と語る。そんな監督の次回作は、浅野忠信主演、クリストファー・ドイル撮影の『LAST LIFE IN THE UNIVERSE』。アジア各国から才能が結集するこの作品で、今度はどんなペンエーグワールドが広がるのか。今後もますます楽しみな監督である。

ストーリー

水辺に家々が並ぶ、タイののどかな村、無邪気な青年ペンは、歌を歌うこと、そして村一番の美しい娘サダウに夢中。ちょっとお調子者なペンを最初は敬遠していたサダウだったが、その裏に隠された純粋さに惹かれ、やがて二人は結ばれる。夫婦二人で畑を耕し、川で家畜を洗い、ゴザを編む。おだやかで幸せな日々。しかしサダウが子供を身ごもった矢先、ペンが兵役へと駆り出される。
「君に逢いたい…」身重の妻に、毎日のように手紙を書き、つのる望郷の想いを“わすれな歌”に込めて歌うペン。だが、訓練地へ巡業でやってきた芸能プロダクション主催の歌謡コンテストに合格したことから、彼の運命は大きく狂い始める。「歌手になって成功すれば、サダウと暮らせる…」そんな思いを胸にプロダクションについていってしまうペン。しかし、同期のダーオがつぐつぎとチャンスを与えられるのに比べ、ペンはいつまでも雑用係だった。
2年3ヶ月がたった。ペンはデビューできない苛立ちとサダウに逢えない寂しさから、売れっ子歌手に成長したダーオと一晩のあやまちを犯してしまう。しかし、ひょんなことからデビューのきっかけがやってきた。コンサート直前に雲隠れしたスター歌手ブルースの代打でベンは急遽ステージに立つことになったのだ。「僕は悪い夫だった…」サダウへの懺悔の気持ちを心を込めて歌うペン。観客の中には涙を流しながらそれを聴くサダウがいた。音信不通となった夫の居場所を探し当て、迎えに来たのだった。観客から、そしてサダウから拍手喝采を受けたベンはやっとデビューのきっかけをつかむ。
コンサートを終え、車に乗り込もうとしたペンはサダウと久しぶりの再会を果たした。プロダクションのボス、スワットを待たせていたペンは、「もう二度と離れない」と、次の朝事務所でサダウと落ち合う約束をして別れる。
しかしその晩、悲劇が起きた。ボスと祝杯をあげていたペンは、酔って襲いかかってきたボスを思わず突き飛ばしてしまう。ガラステーブルの上に転落したボスは血の海の中で動かなくなった。パニック状態の中で通りへ飛び出したペンは、通りかかったトラックに飛び乗ってしまう。
次の日、約束どおり夫に逢いにきたサダウはペンの失踪を聞かされた。裏切られたと思ったサダウは、失意のうちに村に帰ってくる。
トラックに乗って運ばれたペンがたどり着いたのは、遠く離れたさとうきび農場だった。行き場の無いペンはそこで日雇い労働者になる。素直に働くペンを農場の作業監督ヨートは気に入るが、それも長くは続かなかった。カード賭博でもめてヨートに殺されそうになった同僚のシアオをかばったことで、ペンはふたたび逃亡の身となる。
夫は死んだものと自分に言い聞かせて暮らしていたサダウは、病気になった息子を親切に世話してくれる薬屋のギァットサックに出逢う。寂しい彼女の心に巧みに入り込んでくる薬屋のギアットサックに、サダウはだんだん惹かれていく自分を感じていた。
その頃、都会に着いたペントシアオは、食べるものにも事欠くどん底の生活を経験していた。「家に帰りたい…」涙を流すペンのためにシアオは金のネックレスを盗むが、そのせいでペンは刑務所送りになってしまう。
2年が過ぎた。つらい刑務所生活を終えたペンは、懐かしい故郷の村へやっと帰ってきた。寂しさから心を許してしまったギアットサックはサダウを捨て、いつも守ってくれた父親もすでに亡く、サダウは子供を独りぼっちで育てていた。戻らせて欲しいというペンの言葉に、「ペンはずっと前に死んだわ」と突き放すサダウ。しかし「すまなかった…」というペンの言葉を聞いた時、まだ彼のことを愛していることに気づいたサダウは涙でくしゃくしゃの顔をペンにうずめるのだった。

スタッフ

監督・脚本:ペンエーグ・ラッタナルアーン
製作:ノンスィー・ニミブット&ドゥアンガモン・リムジャルーン
撮影:チャーンキット・チャムニウィガイボン
編集:パタマナッダー・ユコン
音楽:チャーチャーイ・ポンプラパーパン
衣装デザイン:ソムバット・ティラサーロート
キャスティング:スックマポーン・シリラックサー

ファイブスター提供
シネマジア作品

キャスト

ペン:スパコン・ギッスワーン
サダウ:シリヤゴーン・プッカウェート
サダウの父:プラシット・ウォンラックタイ
ダーオ:ポーンティップ・バーバナイ
スワット:ソムレック・サックディクソン
シアオ:アンポン・ラッタウォン
ヨート:プラッタク・ポムトーン
ギアットサック:アマラッド・ニッティポン

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