スコルピオンの恋まじない

「催眠術というのは、神秘的で、うさんくさくてそしてなによりもロマンチックなんだ。話を広げるきっかけとしてはこれ以上のものはないと思ったね」。今年度アカデミー賞受賞式では熱狂的なスタンディングオヘーションで迎えられ、カンヌ映画祭ではオープニングで登場するなど業界の熱い注目を集めたウディアレン..常に「次の1本」が注目の的となるアレンの最新作は彼が永年温めてきた企画の映画化だった。絶好の着想を得て製作された本作は、rおいしい生活旧(oo)でみせた洗練されたスラップスティックな笑い、『ギター弾きの恋』(99)のロマンチックなラブストーリー、さらにはrカイロの紫のハラ』(85）でみせたファンタジックな魅力をあわせもつ、まさにアレンの集大成的な快作となった。
舞台は1940年、ニューヨーク。一流保険会社に勤務するCWフリッグスは、自称腕利き保険調査鼻口最近入社してきた同僚のベティ・アン・フィッツジェラルドとは顔を見るたひ皮肉を言い合う犬猿の仲だ。ある日、二人は同僚の誕生パーティでインチキ魔術師に催眠術をかけられ、呪文を耳にするたびにお互い惹かれていくことに。一方、その日を境に謎の宝石泥棒が世間を騒がせる。ブリッグスはなんとか犯人を捕まえるため奔走するのだが。
魅惑のキャストは藁華ハリウッド女優とアレン組常連の名優たち。ウディの天敵、保険会社の新進リストラ担当重役ベティ=アンフィッツジェラルド役には、『恋愛小説家』(97)でアカデミー主演女優賞を受賞したヘレン・ハントが迎えられ、受賞以来、知的なイメージをほしいままにしてきたハントが、本作では、合理主義者でアレンの天敵でもあるバリバリのキャリアウーマンを演じる一方、アレンと丁々発止のトークバトルを繰広げ、意外なコメディセンスを見せている。ブリッグスを誘惑する謎めいたブロンド美女に扮するのは、『セレブリティ』(98)以来アレンと組むのはこれで2作目、この作品のオファーが来たときは迷わず飛ひついたというシャーリズ・セロン。二人が勤める保険会社社長には『ゴーストバスターズ』(84)シリーズなとでお馴染みの名コメディアン、ダン・エイクロイド。一方で、アレン作品の常連組も顔をそろえる。ブリッグスの同僚役を好演した名優ウォーレス・ショーン、そしてアレン作品への出演本数となると数えきれないデヴィッド・オグデン・スティアーズといったべテラン勢がしっかりと脇を固めているのも、アレンーファンには見逃せない。
ウディの映画つくりを支えるのはアレン組常連の美術のサント・ロカスト、キャスティングのジュリエット・テイラー、製作を担当するのは、ウディの姉妹でもあるレッティ・アロンソンとヘレン・ロビン。撮影は『ギター弾きの恋』以降これで3本目のアレン作品となる中国出身の名撮影監督チャオ・フェイが担当、華やかな仕掛けをちりばめながら、暖色系のしっとりとした映像を作り上げた。編集も同じ<これが3本目となるアリサ・レプセルター。そして衣装では『おいしい生活』のスザンヌ・マッケイフが、この前作のド派手な服装から一転して1940年代風の酒落たコスチュームを見事に再現している。