原題:Stolen Summer

プロジェクト・グリーンライト第1回グランプリ受賞作品

2001年/アメリカ/カラー/ビスタ/ドルビーSRD/94分/35mm/全5巻2,567.5mm 日本語字幕:松浦美奈 小説:ソニー・マガジンズ 協力:アーノルドパーマー(ロゴ)/サック(ロゴ) 提供:メディア・スーツ+バップ 配給:メディア・スーツ

2004年01月21日よりビデオリリース 2003年6月28日よりシネスイッチ銀座にてロードショー

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公開初日 2003/06/28

配給会社名 0066

解説


ぼくらの“天国への道”大作戦!
 時は1976年、シカゴ。8歳の少年ピート・オマリーは、アイルランド系カトリックの大家族の中でのびのび育っている。いつも人の心配ばかりして何事にもひたむきな彼は、そのぶん失敗も多く、学校のシスターにしょっちゅう叱られては「地獄行きになりますよ」と脅かされる毎日。夏休みのある日、ユダヤ教徒の少年ダニーと友だちになるが、ダニーは白血病に冒されているという。ダニーをキリスト教徒にさせれば、ぼくは聖人になって天国に行けるし、ダニーも天国に行ける! かくしてピートとダニーの「“天国への道”大作戦」が始まるのだ。
 自分とは異なる考えや生き方をする他者への不寛容が世界を覆っている今だからこそ、ピートの単純ゆえに真実を突く発想が、笑いのうちに私たち大人の目を見開かせてくれる。信じることの原点を素直に見つめるその姿の前では建前や形式はひとたまりもない。ともすると深刻になりがちな問題を8歳の視点から物語ることでユーモアに転換する、みずみずしくて温かみのある脚本が、まず素晴らしい。

注目のオンライン脚本コンテスト“プロジェクト・グリーンライト”が選んだ1本!
プロジェクト・グリーンライトとは、ミラマックス・フィルムズ、HBO、ライブ・プラネットの3社協賛によるオンライン脚本コンテストで、2000年秋にスタート。そもそもの始まりは、本作のプロデューサーでもあるマット・デイモンとベン・アフレックの発案だ。『グッド*ウィル*ハンティング 旅立ち』で自分たちが経験した、なんのコネがなくても脚本の力で映画化を実現する道をより多くの人たちに開きたい、第2の自分たちを発掘したいという2人の熱意が実現したもの。このプロジェクトは大きな注目を集め、オンラインで集まった脚本総数は1万2千本。その中から幾度もの審査を経て晴れて選ばれたのが、シカゴ出身のピート・ジョーンズによる本作の脚本だ。
愛されたことがない天才青年と最愛の人をうしなったセラピストが、たがいに刺激しあって旅立ちの時を迎える『グッド*ウィル*ハンティング 旅立ち』と本作には、多くの共通点がある。一方が他方を手助けする関係でありつつも、両者がともに成長するところ。2人が関わりあう時間は限られているが、それが両者にとってかけがえのない時間になるところ。そして、最後に、その友情にささえられて「旅立ち」を迎えるところ。ベンとマットは、何よりも、友情による成長が描かれている点で本作に惹かれたのかもしれない。

新人監督を支える絶妙のキャスティング
 プロジェクト・グリーンライトが最終選考に10人の脚本家を選出した時点で、HBOは13話からなるドキュメンタリー番組の製作を開始し、その撮影は本作の撮影が終了するまで続行された。ピート・ジョーンズは、初監督作品というプレッシャーのみならず、その体験をつぶさにカメラに撮られるというプレッシャーも乗り越えなくてはならなかったのだ。だが、ジョーンズのそうしたプレッシャーは経験豊富な俳優たちの温かさによっておおいに軽減された。
 大家族の家長ジョーを演じるアイダン・クインは、自身、シカゴ出身である上にアイルランド系カトリック教徒の大家族出身でもある。そして少々単細胞なところのあるジョーを支え、家族の世話を一手に引き受けている妻マーガレットを演じたボニー・ハントもまたシカゴ出身のアイルランド系カトリック教徒であり、7人兄弟で育っている。クインもハントもともにシカゴの住民について、土地柄について、ひいては作品世界について、監督と同じぐらい熟知していたのだ。ラビ・ジェイコブセンを演じたケビン・ポラックは、ボルチモアに住む東欧移民の家族を描いたバリー・レヴィンソン監督作品『わが心のボルチモア』(90年)でアイダン・クインと共演済みだ。スタンダップ・コメディアンでもあるポラックは、持ち前のユーモアで監督を救った。「ケビンは活気のある湿り気とユーモアの混ざった即興をラビの役に持ち込んで、私の監督経験を支えてくれた。彼はまた子どもたちからユーモアを引き出すのが上手だった」。こうしたくつろいだ雰囲気の中、2人の子役少年たちもすんなりと役に溶けこんで、時に大人顔負けの表情を見せ、笑わせ、泣かせてくれるのだ。

ストーリー


 ぼくはピート・オマリー。8歳。家族は消防士のパパと、子どもたちの世話でいそがしいママと、4人のおにいちゃんにおねえちゃんが1人と妹が2人。シカゴに住んでいる。
2年生の終わり、夏休みに入る前、ぼくはシスター・レオノラにいわれた。「悪魔の道を選ぶか神の道を行くかは今年の夏の行ないで決まります」って。地獄行きになったらどうしよう。そうしたら、おにいちゃんのシェイマスがいいことを教えてくれた。〈探求〉のために異教徒をカトリックにさせれば、聖人になれて天国に行けるって。
 ぼくはさっそくユダヤ教の教会堂に行った。そこで出会ったラビ・ジェイコブセンに、教会堂の前で“天国へのレモネード”を無料で配らせてって頼んだ。ラビはぼくをミスター・オマリーって呼んでくれて、こころよく許可してくれた。
 だけどレモネードをもらいに来る人はさっぱりいない。シェイマスおにいちゃんと教会堂の前で暇つぶしをしていると、消防車の音が鳴りひびいた。燃えているのはラビ・ジェイコブセンの家だった! ぼくたちの勇敢なパパが燃えさかる家の中に入って、ラビの息子ダニーを救出。だけどダニーの子守りをしていたエスターという女性は死んじゃったらしい。
ダニーは7歳で、白血病なんだって。ぼくはダニーに、天国に行けるようにしてあげるって約束した。これがぼくの〈探求〉だ! ぼくはぼくらの教会の神父さんにいろいろ質問した。天国へ行ったことがある人はいる? なぜ聖体拝領は3年生になるまでできないの? 
テストみたいなものに受かれば3年生になる前でも聖体拝領を受けられる?
 ぼくとダニーでそのテストを考えた。きっと“10個の課題”みたいなものを全部クリアすればいいはずだ。それで、ミシガン湖でダニーに「洗礼」をほどこして、砂浜を走ったり、石投げをしたり、ハードルをした。ダニーはどれもとても上手にこなした。最後に残ったのは遠泳だ。湖のブイのところまで泳いで帰ってくればテストは完了だけど、ダニーはなかなかできない。途中で目を上げてブイが見えなくなると急に怖くなっちゃうんだって。目をつぶったままでも泳げるように、ぼくは泳ぎながらストロークを数えてみた。行きは50回で帰りは55回だ。ダニーはぼくより小さいから、60回数えて戻ってくればいい。
 ある晩、ラビがうちを訪ねてくる。一番上のおにいちゃんのパトリックは医大に行きたがっているけれど、うちにはそんな余裕がないから市役所に勤めろってパパはいう。そのことを前にぼくがラビに話したんだ。ラビは、教会堂で毎年出している奨学金をパトリックに与えることが決まったって教えにきてくれた。だけどパパはすぐに断っちゃった。貧しいアイルランド系カトリックの家族をユダヤ人が助けてあげるっていう宣伝行為だって。ほどこしなんか受けないって。
 よけいな話をラビにしたって、ぼくはまたもやパパに叱られちゃった。部屋から一歩も外に出ちゃいけないって。部屋にこもっていると、ダニーがそっと入ってきた。また病気がぶりかえしたんだって。だから早くテストを終わらせようっていいに来たんだけど、ぼくは追い返しちゃった。だってダニーのせいでパパに叱られて、地獄行きになりそうなんだもん。 パトリックの奨学金のことは、ママがパパを説得したみたいだ。それから、パパが素敵なニュースを教えてくれた。ダニーは“10個の課題”をやり遂げた! 行きが71回で帰りは86回だったって。すごいぞ! だったら早くダニーにメダルを持っていってあげなくちゃ! ぼくは教会の棚から聖体をとる。神父さんにみつかっちゃったけど、ダニーは“10個の課題”に全部クリアしたから資格があるんだっていって、病院に駆けつけた。だけど、おそかった…。
ダニーは死んじゃった。「天国で会おう」ってぼくに伝言を残して。
 ぼくは考えた。こう思うんだ。大人たちはいろいろなことをいうけれど、天国に行く道はひとつなんかじゃない。神様はものすごく心が広いんだから。誰の名前で祈ったっていいんだ。だから、ダニーにしばらく会えないのはさびしいけれど、ママがいうとおり良心の声に耳を傾けていれば、いつかきっとまた天国でダニーに会える。そうしたらまた2人で一緒に湖のブイまで泳ごう。また一緒に石投げをしよう。そうだ、新しい遊びも覚えてダニーに教えてあげよう。また会える日まで、ぼくはダニーのぶんも、いっぱい生きるんだ。

スタッフ

エグゼクティブ・プロデューサー:パトリック・ピーチ+ミッシェル・シー
プロデューサー:マット・デイモン+ベン・アフレック+クリス・ムーア
監督+脚本:ピート・ジョーンズ
撮影:ピーター・ビアギ
編集:グレッグ・フィーザーマン
音楽:ダニー・ラックス
美術:マーサ・リング
衣装:ステイシー・エレン・リッチ

キャスト

ジョー・オマリー:エイダン・クイン
マーガレット・オマリー:ボニー・ハント
ラビ・ジャコブソン:ケヴィン・ポラック
ケリー牧師:ブライアン・デネヒー
パトリック・オマリー:エディー・ケイ・トーマス
ピート・オマリー:アディ・スタイン
ダニー・ジャコブソン:マイク・ワインバーグ

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