原題:TAPE

ヤクの売人、映画監督、検事補。 10年ぶりに再会した3人は、 テープによってまわり続ける。

2001年/アメリカ/カラー/87分/ビスタサイズ/ドルビーSR/ 配給:メディア・スーツ

2003年12月26日よりビデオリリース 2003年12月26日よりDVD発売開始 2003年7月5日より恵比寿ガーデンシネマにてロードショー

公開初日 2003/07/05

配給会社名 0066

公開日メモ 高校時代の友人3人が再会し当時の「事件」の真相を探っていくと、そこには意外な真実があった。テープは、何に使われるのか・・・。一瞬一秒たりとも目が離せない『テープ』は、気になるからおもしろい。

解説


『テープ』の世界は一瞬の先も予測できない。
翻弄される快感に充ち充ちた映像が繰り広げられていく。

突出した個性を持つ映画作家が演出している?イエス。
センチメンタルな青春の回顧?イエス。
愛と葛藤のミステリー?イエス。
ラブストーリー?イエス。
人間という生物の業をみすえた内省的な考察?イエス。
記憶と事実を核にした哲学的実証?イエス。
若手人気俳優の演技カを堪能できる?イエス。
エンターテインメント?イエス。
デジタル?イエス。
スタイリッシュ?イエス。
サバイバル?イエス。

『テープ』はあらゆるみかたを許容しながらも、卓抜した構成によってみるものが作家の意図する迷宮的小宇宙にいざなわれる、究極の心理サバイバル映画である。

仕掛けたのは、常に斬新で刺激的な作品を生み出し、若手映画人・俳優たちから絶大な尊敬を集める映画監督リチャード・リンクレイター。日本では『恋人までの距離<ディスタンス>』(95)が高く評価されているが、一作ごとにリアルさを求めてジャンルの枠を広げ、革新的な映像表現で映画の世界をリードし続ける姿勢において、アメリカ映画界のカリスマ的存在となっている。前作『ウェイキング・ライフ』(02)では実写にデジタル・ペインティングを施した画期的なアニメーションで勝負し、ローリング・ストーン誌をして“『2001年宇宙の旅』以来のトリップ映画”といわしめたリンクレイターが、本作品でSONY PD-100PAL による撮影と Mac Final Cut Proでの100%の編集によってデジタル表現の粋をみせつけ、新たなる物語の可能性をみせてくれる。

描かれる命題は
“人間の想いは記憶によってものごとを再構築しているとすると、記憶が事実を変容することはないのか?”。

虚飾を剥ぎ取った最小限の設定のもと、ある体験を共有したはずの男女3人の心理が次から次へと浮き彫りにされ、そこから人間のあらゆる感情が露わになる。怒り、恐れ、悲しみと喜び。たった3人が繰り広げる密室での87分間の出来事。果して、この部屋から誰が最初に抜け出すのか?
緊張感に溢れた映像と交わされる会話はまるで刃のように鋭く、深く、それでいながらユーモアを内在する。知的な視点から紡ぎ出される奥行きのある世界はリンクレイターならではのものである。原作はステファン・ベルバーの同名戯曲。この戯曲を読んだ盟友イーサン・ホークがリンクレイターに薦めたことが契機になって、今回の映画化となった。映画化用脚本もベルバー自身が行っているが、リンクレイターの映画的表現を駆使した演出によって、原作をはるかに越える仕上がりとなっている。

出演者も話題である。近年は小説家、映画監督としての顔を有するイーサン・ホークが今までのイメージをくつがえす精神的汚れ役で『ガタカ』(97)を凌ぐ好演をみせれば、私生活でもホークのパートナーである『金色の嘘』(2000)のユマ・サーマンがキャリアウーマンのプライドを具現化。ホークとは『いまを生きる』(89)以来のつきあいである『チェルシーホテル』(02)のロバート・ショーン・レナードが、イノセントこして無神経な男性像を浮き彫りにするに及び、まさに完壁なアンサンブルが形成されていく。私生活でも気心のしれた3人が丁々発止、リンクレイターの手綱のもとで思いの丈、演技を、ぶつけあう—映画の魅力はここに極まっている。
リンクレイターのデジタル・マジックをみごとにサポートした撮影監督は、トッド・ヘインズの『ポイズン』(91)やトッド・ソロンズの『ハピネス』(98)などで、実力をみせるマリーズ・アルベルティ。ミニマムな舞台ながら周到に設定されたプロダクション・デザインは『ガールファイト』(2000)のスティーブン・ベアトリス。『ニュートン・ボーイズ』(98)や『ウェイキング・ライフ』まで、すべてのリンクレイター作品を体験したサンドラ・アダーが編集を担当するなど、アメリカ・インディペンデント映画で活躍する才能が結集している。

リンクレイターが2002年という世界のリアリティを映像に焼きつけた寓話にしてドキュメンタリー。これは究極のおもしろ映画である。

ストーリー



ヤクの売人、映画監督、検事補。
3人は、テープによってまわりはじめる。

ヴィンセント
オークランドで消防士をしているが、本業はドラッグディーラー。とはいえクライアントは若者ではなく50代が多く、消防署長も客のひとりだ。高校時代は学校いちばんのクールな男といわれて、人気もあった。同級生のエイミー・ランダルと恋に落ちたものの破局。その傷も癒えないうちに、イノセントにして無神経な友人のジョン・ソルターがあることを引き起こして以来、人生転落の一途をたどっている。ジョンがしでかした出来事の真実さえ確認できれば、彼はやり直すことができると信じている。

ジョン・ソルター
映画監督。最新作は制作に2年かかったものの一般公開は予定なし。業界の大物に認められて大出世したいと願っている。カリフォルニアの大学院で映画を学び、故郷で開かれる映画祭に最新作出品のため、高校卒業以来十数年ぶりにミシガン州ランシングの地を踏む。高校時代の友人ヴィンセントに呼び出され、彼が指定したモーテルを訪れた。失敗続きのヴィンセントとはいわば腐れ縁。生活環境のギャップを嘆く彼に、ことあるごとに、ジョンが忘れたい高校時代の起きた出来事を持ち出され困惑している。

エイミー・ランダル
地元ランシングの大学を卒業して、現在地方検事補。地方検事と付き合っている。街を離れていた初恋の相手ヴィンセントから5年ぶりに電話をもらう。高校時代の思い出などに浸る暇もなく、ひたすらキャリアを磨いてきた。現在に生き、明日に備える彼女がヴィンセントとの誘いに応じたのは、記憶をさかのぼる余裕ができたから?それとも現在の成功を誇りたい気持ちがあるから?彼女はヴィンセントの指定したモーテルを訪れる。

スタッフ

監督:リチャード・リンクレイター
原作・脚本:ステファン・ベルバー
制作:デイリー・ウィニック、アレクシス・アレクサニアン、アン・ウォーカー=マクベイ
製作:キャロライン・キャブラン、ジョナサン・シーリング
撮影:マリーズ・アルベルティ
編集:サンドラ・アダー
プロダクション・デザイン:スティーブン・ベアトリス
衣装:キャサリン・トーマス

キャスト

イーサン・ホーク
ユマ・サーマン
ロバート・ショーン・レナード

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